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9点【感想】人を助けて仕事を創る 社会起業家の教科書(山本繁)

オススメ度 9/10 (ソーシャルビジネスに限らずビジネスをする際の道しるべに使えそうな本だから。ちなみに3章(約3分の1)まで無料公開中。)

本書を手にとっていただいた方の多くは、
「ソーシャルビジネスって何だろう?」
「ソーシャルビジネスを始めるにはどうしたらいいのだろう?」
「社会問題を解決することを仕事にしたい」
「ソーシャルビジネスの現状をもっと理解したい」

そう考えているのではないだろうか。

この本は、そのような方のために書かれたソーシャルビジネスの教科書であり、社会問題解決を目指す実践の書である。

教科書や実践というと堅苦しく思うかもしれないが、心配は無用だ。
この本は「ソーシャルビジネスとは何か」といったごく基本的なことからスタートしている。
また、「どんなことから始めるか」「どのように資金を集めるか」
「実際に事業を立ち上げるにはどうすればいいか」
「組織をまとめ、広げていくにはどうしたらいいか」など、
段階を順に追って平易な言葉でわかりやすく説明するよう努めた。

・これからソーシャルビジネスに挑戦したい人
・現在、NPOなどの非営利組織で働いている人
・ソーシャルビジネスを支援、振興、研究する人
・地方公務員や官僚の方
・社会の問題に関心を持つ市民や学生

上記のような方に少しでも役立つ本になれば嬉しい。

出版社HPより)

▷基本データ

(ひとをたすけてしごとをつくる しゃかいきぎょうかのきょうかしょ)

【著者等】
 山本 繁
(やまもと しげる)

【出版社・レーベル】
 TOブックス

【読む前の独断と偏見によるジャンル】
 ソーシャルビジネスの基本がわかる本

【その本を選んだ理由】
 人助けを主目的とする事業をしたいから

【貸出日・購入日】
 2020/12/9

▷この本から学べたこと

 ソーシャルビジネスの起業からの流れをわかりやすく解説しているねんけど、ソーシャルビジネスに限らず、あらゆるビジネスに応用できそうで、全てのページが参考になったさかい、ダイジェストで紹介するわ。

1.ソーシャルビジネスとは

 サービスや商品、情報を提供して、営利企業が社会に貢献するのに対し、ソーシャルビジネスとは、サービスや商品、情報を提供して、ある社会問題を「解決する」ために行うビジネスのこと。あくまでもビジネスなので利益を出してもいいし、従業員には相当する給与を支給しても良いが、基本的な利益の再投資先は株主等ではなく更なる社会問題の解決。
 しかし、基本的には市場性が低いものを扱うため、普通のビジネスよりも難しいものの、継続することで力がつき、社会問題と戦えるようになる。
 また、年収は一般的に同年代よりは少ないものの、心から価値を感じられる仕事であり、社会にとっても重要な仕事である。

2.ソーシャルビジネスの起業の流れ

 以下の①~⑧の順になる。

【ソーシャル面】
①「問題発見」→②「問題分析」→③「課題発見」→④「対策立案」

【ビジネス面】
⑤「ビジネスモデル構築」→⑥「資金調達」→⑦「創業準備」→⑧「創業」

 この本においては、①~③が第2章、④が第3章、⑤が第4章、⑥が第5章、⑦が第6・7章、⑧が第8章で詳細に解説されており、第9・10章はそれぞれ、「リーダーシップ」と「組織を固める」というマネジメントについて書かれている。

3.失敗するパターンと失敗する人の特徴

 【失敗するパターン】
  ①対策が対策になっていない
  ②ビジネスとして成り立たない
  ③実務やマネジメントにおける実力不足

 【失敗する人の特徴】
  ①計画性が無い人(見切り発車の人)
  ②当事者意識に欠ける人(他人のせいにする人)
  ③柔軟性に欠ける人(変化しない人)

  特に重要なのは③で変化し続ける柔軟性が大事とされる。

4.社会問題の分析

 社会問題の発見
→問題に関する情報収集(本、新聞、テレビ、ネット、現場)
→疑問に思ったことを調査(何度もいくつも積み重ねる)
 このときに、社会問題を因数分解して細かくしていくと理解が深まり課題を発見しやすい

 例えば「ニート」であれば、「離職」、「学校中退」、「進路未決定」に分ける。
 さらに「学校中退」を、「経済的理由」、「妊娠・結婚」、「疾患・障害」、「生活面での不適応」、「学習面での不適応」に分ける。
 そして、さらに「学習面での不適応」を「教員の実力不足」、「不適切なカリキュラム」、「入学段階でのミスマッチング」、「目的・目標があやふや」、「学力不足」に分ける。

 また、統計データを見たり、実際の現場に飛び込んで当事者に尋ねて、問題を肌で感じるという方法も有効
 ただし、思い込みでデータを都合よく解釈せず、現実をありのままに受け止める

5.社会問題への対策立案

 「代替」、「補完」、「強化」がNPOやソーシャルビジネスの機能。これらを過去、現在、未来の時系列で考える。
 つまり、3×3で9通りのアプローチを考えると対策を立案しやすい。
 また、対策と同時に「成果」(=「受益者の変化」×「受益者の数」)もセットで考える。
 そして、成果を挙げるために必要な「価値」とは何かを考えて、商品・サービスを考える。この際に、顧客にとって必要な条件と「もっと欲しい」となる十分条件も吟味する。これらを誤ると商品のコストが無駄に高くなり、売れない商品になってしまうので独りよがりにならないよう注意が必要。

6.ビジネスモデル構築

 「誰に」、「何を」、「いくらで」売るのかを考えなければならない。しかし、ソーシャルビジネスでは、受益者に支払い能力がないケースが多いという悩みの種もあり、やりたくても行政に任せざるを得ないものもある。
 そして、事業の成果に加え、成功させるためのポイントを最大で3つ絞り、それの解決策もあらかじめ考えておく
 また、ソーシャルビジネスの場合、B2B事業(対企業事業)であってもその先にいるC(消費者)を本当の顧客と捉え、その人の幸福に繋がるビジネスを構築せねばならない。
 「同じ人に同じものを何度も買ってもらう」を意識すると成功しやすい。
 損益を左右する値段の決定については、概ね3通りあり、①対象となる人にヒアリング、②対象となる人の収入と支出構成の分析、③相手にとっての経済インパクトを算出し、いくらまでなら支払ってもらえるかを調査がある。

7.創業資金の調達

 調達方法は大きく分けて5つ。①自己資金、②借金、③ビジネスプランコンペへの応募、④助成金(ただし、これに継続依存してはダメ)、⑤理念や社会性に共感してくれる出資者からの出資
 なお、④の助成金は、募集する団体のポリシーや方向性を理解してから応募するのが良いが、落ちてもクヨクヨせずに、見直す点を見直したら他の団体へと次々と応募した方が良い。
 その他、寄付や協賛金もあるが、実績が無い段階から集めるのが難しく、また、これらを当てにした運営だと、事業の上限が決まってしまうので、好ましくない。

8.創業準備

 ネーミングは自分たちの潜在意識や周囲に働きかけていくものなので、未来を見据えたネーミングが大事
 チーム作りは、事業の内容により必要な人員バランスを考え、自分とは異なる強みを持った人間を選ぶと良い。リーダーがフォローすればよいので、弱みは基本的に無視しても良い。
 チームができたらビジョンを共有し、事業計画をみんなで作る。そうすることで、全員に当事者意識が生まれる。
 できた事業計画は信頼できる人10人くらいに見せて良いと思った意見を取り入れてバージョンアップさせる。できれば10周(合計100回)ぐらいしたい。そうすると誰でも良い事業計画書が書ける。
 必ず数値目標を立てる。そうすると組織はその数値を良くするために動き出す。小目標を複数設定していくのも良い。
 ソーシャルビジネスの真っ当な状態というのは、常に供給が追い付かない状態。ただし、「創業初期の認知不足」や、「顧客の危機意識、自覚症状のなさ」があるので、営業が必要な場合もある。また、問題分析の際にヒアリングしていた相手(協力者)が顧客になってくれることもあるので、創業準備中に関係を作っておくことは大事。
 NPOと株式会社の違いはそれぞれのイメージが、社会貢献(ボランティア)か利益優先(プロフェッショナル)なので、事業内容に合わせて選べばよい。
 経営者は孤独なのでメンターとなる先輩経営者がいると心強い。そのようなメンターに会う際は1対1なら、親身になって相談に乗ってくれやすい。他にも人材を紹介してくれたりといったメリットもある。

9.ソーシャルプロモーション

 社会問題について解決の必要性を広く知ってもらうことがソーシャルプロモーション。商品開発と同時にこれを行っていき、プロモーションにより需要が高まったタイミングで商品を世に出すと良い
 地上戦はIT(WEB、Twitter、ブログ)、イベント(セミナー、シンポジウム、デモ)、配布物(パンフレット、白書)、空中戦は新聞・雑誌、テレビ・ラジオ、ロビイングとあるが、地上戦の盛り上がりを空中戦で伝えていく。マスコミも社会問題をともに解決していくパートナーと捉える。

10.創業

 会議と実行を繰り返し、PDCAサイクルを回していく。会議では、ビジョンやミッションを組織の行動基準として、検討や判断を行う。また、失敗や変化を恐れずに撤退するときはまだ余力があるうちにやるべき。

11.リーダーシップ

 リーダーの仕事は、①10年後の仕事を考える、②外交(トップ外交)、③人材育成
 仲間を大切にすることも大事。
 活動をしていくうちに、知恵を出してもらうアドバイザリーボードを作るのも手。
 年に一度はドラッガーの「5つの質問」をして、社会の変化にキャッチアップしていくのがオススメ。
①我々のミッションは何か?
②我々の顧客は誰か?
③顧客にとっての価値は何か?
④我々にとっての成果は何か?
⑤我々の計画は何か?

12.組織を広げる

 業界内外にネットワークを広げる。①人を紹介してもらえる。②新しいアイディアが生まれる。③様々な情報が得られる。④感覚がずれても軌道修正してもらえる。といったメリットがある。
 ただし、協力者に対し、下心を利用したり、相手に過度な期待を持たせないことが重要。
 行政も批判するのではなく、ともに地域や社会の問題を解決するパートナーと捉える
 政治家に対しても陳情をしてしまうと見返りを求められるので政策のブレーンになるつもりで付き合うと良い。

▷感想

 資本主義社会への反逆として物々交換屋をやりたいと夢見てるけど、起業に関する本をちゃんと読んだことが無いから、めっちゃ勉強になったわ。
 と言うことで、ブックオフオンラインで中古で200円で見つけたから、近所のブックオフに届くのんを待ってる状態やねん。
 読む前は知らんかってんけど、著者はあの「トキワ荘プロジェクト」っていう漫画家志望者支援事業やったり、大学中退者を出さんような事業をしているそうで、立派な人やと思った。
 10年前の本やから当時32歳やけど、やっぱり経営者は人生経験豊かやねんなと感じた。
 自分自身も夢として貧困を無くしたいってのがあるけど、これもこのプロセスに従って、もっと煮詰めていかんとあかんと思いました。

 ほなまた!

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