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吹き替え ①【連載台本・世にもになるまで書いてみた・81作目】

これまでの話はこちら!

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〇 事務所・廊下

 秋から冬に変わりつつある頃。
 とある声優事務所。廊下の壁には人気アニメのポスターが掲示されている。

〇 事務所・会議室

 会議室には男女2人。テーブルを挟み、向かい合わせでソファーに座っている。
 男は50代前半でグラサン&あごひげ姿のワイルド系。声優事務所社長。
 女は20代前半でショートボブ&小柄。売れない声優。

男 オーディションの結果、君が吹き替えを担当することになった! 
  おめでとう!!
女 (複雑そうに)・・・・・・ありがとうございます。
男 なんだいその反応? 嬉しくないの??
女 そりゃそうですよ! 

 主人公 オーディションに不満があるようで怒っている。

〇 オーディション会場・廊下

 オーディション当日。
 入口に貼られているポスター。
 ポスターには「吹き替えオーディション プロ・アマ問わず!」と告知。

〇 事務所・会議室

女 だいたい何を吹き替えするんですか!! 
  それすらも知らないんですけど!?
男 そりゃ関係者以外には極秘の案件だったんだし仕方ないじゃん。
  ま、今から説明するからカリカリしないでよ。
女 ・・・わかりましたよ。
男 んで、君が吹き替える人物ってのがこの子なんだけど・・・

 男 茶封筒から1枚の写真を取り出す。
 写真には一人の女性アイドル。かわいい系。

女 ・・・? 実写映画の吹き替えってことですか?
男 違う違う! この子の吹き替えをしてもらうの!
女 ・・・・・・はい?
男 要はこの子の声を君が代わりに出してあげるって訳! 
  Do you understand?
女 ・・・・・・そんなことできるんですか?
男 そういうと思ってさ! ちょっとこれ見てよ!
女 今度はなんですか・・・

 男がポケットから取り出したのは「ピップエレキバン」のようなシール。

女 ・・・健康器具、ですか?
男 そう見えるでしょ? これすごくてさ・・・ 

 男 のど元にシールを貼る。

男 (女性声優の声で)ね?すごいでしょ? 貼るだけで声が変わる・・・
女 は!? 【先輩声優の名前】さんの声・・・ですよね? 何かキモイ・・・
男 ちょっと~ キモいって言わないでよ~
  とりあえずこういう感じで吹き替えることになったからよろしくね!
女 (ため息)というかどうしてもやらなきゃダメですか?
男 ・・・この声聞いてもそう思う?

 男 女性アイドルの声をイヤホンで主人公に聞かせる。
 女 「女性アイドルの肉声」に驚き、すぐにイヤホンを外す。

女 ・・・・・・・・・私にやらせてください。
男 OK! じゃあ台本も届いてるから練習してきてね! 収録は来週の・・・

 男 主人公に収録日を伝える。
 机の上に置かれた台本のアップ。
 タイトルテロップ『吹き替え』


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