創元社note部

1892年創業。大阪は御堂筋の近く、本町と淀屋橋の間にある出版社です。東京支店は神保町…

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1892年創業。大阪は御堂筋の近く、本町と淀屋橋の間にある出版社です。東京支店は神保町。新刊情報や、著者インタビューなどをアップします。公式HP→https://www.sogensha.co.jp/ ヘッダー画像©nakaban

マガジン

  • 星の味 │ 徳井いつこ

    日常のふとした隙間、 ほっとため息をつくとき、 眠る前のぼんやりするひととき。 ひと粒、ふた粒、 コンペイトウみたいにいただく。 それは、星の味。 惑星的な視座、 宇宙感覚を秘めた人びと、 そのコトバを、 日々のつれづれに味わう 徳井いつこのエッセイ。 銅版画/オバタクミ *2024年1月より、毎月第2・第4金曜日更新

  • 働く日々の歌|澤村斉美

    会社勤めをしながら、日常を短歌に詠む歌人である澤村斉美さんによるエッセイ。この連載では、仕事・労働にまつわる様々な短歌を読み解きながら、私たち一人一人の日々の労働と日常について考えていきます。 短歌が好きな人だけではなく、いまを生活しているすべての人に読んでもらいたいエッセイです。 *月1回更新。

  • 大河ドラマに推しが出たので。|実咲

    テレビでは一生取り上げられることはないだろうと思っていた「推し」が、NHK大河ドラマに出る。その衝撃を、平安時代オタクの著者がリアルタイムでつづります。

  • 山本粧子の Hola!ジャガイモ人間

    縁もゆかりもなかった国・南米ペルーに青年海外協力隊として派遣されることになった山本粧子が、3000種以上も存在するというジャガイモ原産国で、ジャガイモを育て、食し、愛するジャガイモ人間たちと出会うソウルフル・エッセー。月2回を目指して更新中。

  • 特攻文学としての《ゴジラ-1.0》

    太平洋戦争末期、小笠原諸島に位置する大戸島の守備隊基地に不時着した特攻隊員・敷島浩一(演:神木隆之介)が偶然、ゴジラに遭遇したところから始まる映画《ゴジラ-1.0》。『特攻文学論』の著者である教育社会学者・井上義和と、ライター・坂元希美が対話しながら、《ゴジラ-1.0》を創作特攻文学として読み解きます。

最近の記事

星の味 ☆8 “闇から始まる”|徳井いつこ

 夜、部屋を真っ暗にして眠ると、いいことがある。  窓近くの床に、光の線がひとすじ落ちている。  カーテンの隙間からさしこむ月の光は、満月に近づいてくると、いよいよくっきり輝いて、こんなに白かったかと驚かされる。  光の線を、素足で触る。右から左、左から右に。  指先で拭う。拭ったところで落ちるわけではない。  落ちない光の、なんとたのもしい……。  ずっと昔から好きだった詩に、ハンス・カロッサの「古い泉」がある。暗闇から始まる十数行の文章が、果てしない生命の旅を続けている

    • 推し、繋がる。✿第15回|実咲

      「光る君へ」第16話では、疱瘡(天然痘)の流行が始まった都が描かれていました。 遠き日に行成の父、義孝の若い命を奪ったのもこの疱瘡の流行でした。 連載の第11回でもお話しましたが、この疱瘡は日本の歴史の中で何度も大流行が起こっています。 安倍晴明は作中でも流行の兆しを感じ、「屋敷の門を閉める」というここ数年でも聞いたことのあるような対策を取っています。 この段階では、貴族たちには感染の波は押し寄せていませんが、確実に近い所まで来ているのです。 しかし最高権力者である関白道隆は

      • 山本粧子の Hola! ジャガイモ人間~ペルーからコンニチワ~┃ 第12回

        ブエノスディアス! 山本粧子です。 しばらくクリスマスと年末年始のお話が続きましたが、今回はミュージアムで食べるお昼ご飯(通称:ミュージアム飯)をレポートしたいと思います。 第8回で少し触れましたが、私が働いているパラカスミュージアムでは、まわりに店が何もない砂漠のど真ん中にあることもあって、事務所にあるキッチンでみんなで食事をつくり、みんなで一緒に食べるのが日課です。しかも、割とキッチリ作って、ガッツリ食べます。 ペルーのザ・家庭的な料理はほとんどここで把握できるんじゃ

        • 特攻文学としての《ゴジラ-1.0》|第11回|井上義和・坂元希美

          (構成:坂元希美) ⑪まだまだある特攻文学映画 《インデペンデンス・デイ》《アルマゲドン》 Brave Storyが祖国を立ち上げる ★ネタバレ注意★ 映画《ゴジラ-1.0》《インデペンデンス・デイ》《アルマゲドン》のネタバレが含まれていますので、知りたくないという方はこの先、ご遠慮ください。そして、ぜひ作品鑑賞後にまた読みにいらしてください。 《インデペンデンス・デイ》 人類絶滅の危機に命のタスキはどうなる? 坂元 今回はハリウッド映画から有名な2作品を「特攻文学の要

        星の味 ☆8 “闇から始まる”|徳井いつこ

        マガジン

        • 星の味 │ 徳井いつこ
          8本
        • 働く日々の歌|澤村斉美
          1本
        • 大河ドラマに推しが出たので。|実咲
          16本
        • 山本粧子の Hola!ジャガイモ人間
          12本
        • 特攻文学としての《ゴジラ-1.0》
          11本
        • シリーズ「あいだで考える」
          11本

        記事

          【シリーズ「あいだで考える」】栗田隆子『ハマれないまま、生きてます――こどもとおとなのあいだ』の「はじめに」を公開します

          * はじめに 「あいだ」という言葉を聞いてどんなイメージが浮かぶだろうか。  この本はこどもとおとなの「あいだ」がテーマだ。  その場合、幼児期を過ぎ、成人に至る手前の年代を想像する人が多いだろう。  そこでいう「あいだ」とは、おそらく下の図のように、こどもとおとなを両端にした時間軸の「真ん中」に存在しているイメージとなるだろう。この★あたりに位置しているのがティーンエイジ・思春期となる。 「あいだ」という言葉はもうひとつの意味合いを持つ。漢字の「間」はもとは「閒」と書

          【シリーズ「あいだで考える」】栗田隆子『ハマれないまま、生きてます――こどもとおとなのあいだ』の「はじめに」を公開します

          推し、失職す。✿第14回|実咲

          いよいよ道隆の専横があからさまになって来た「光る君へ」第15話。 残念ながら行成の登場は、どこに目を凝らしてもありませんでした。 いや、オープニングの時点でもお名前がないので分かってはいたのです。 あとは何より、時代が仕方ない。 今回は登場していない行成が、どこで何をしていたのかのお話です。 作中では、正暦4年(993年)夏の出来事である、道長の妻倫子の父、源雅信の死が描かれていました。 この出来事は行成の日記『権記』に記事があり、そこには雅信が周囲の人から慕われる好人物で

          推し、失職す。✿第14回|実咲

          特攻文学としての《ゴジラ-1.0》|第10回|井上義和・坂元希美

          (構成:坂元希美) ⑩まだまだある特攻文学映画 《Fukushima 50》 ★ネタバレ注意★ 映画《ゴジラ-1.0》《Fukushima 50》のネタバレが含まれていますので、知りたくないという方はこの先、ご遠慮ください。そして、ぜひ作品鑑賞後にまた読みにいらしてください。 特攻隊が出てこない「特攻文学」作品もあるはず 坂元 本連載の第4回で《ゴジラ-1.0》における特攻文学的な要素は、特に「未来」「死」「父」「自発的な行動」であるとしました。そうすると、実際に太平洋戦

          特攻文学としての《ゴジラ-1.0》|第10回|井上義和・坂元希美

          4|桜-sakura-の大川と、「ひま」な人たち

          如翺から寿さんへ ◇ 大川沿いの桜並木で  京都から南西へおよそ60キロ。  小さな旅を続けてきた淀川の流れは、大阪市都島区毛馬のあたりで新淀川と旧淀川とに分岐して、旧淀川(現大川)は真南へと向きを変えます。遥か大阪城を正面に望みながらも、流れはお城の手前でぐいと曲がって今度は西に。ほぼ直角に流れが折れるその角には、帝国ホテル大阪があったり、一般的な桜の時期に少し遅れて満開になる、造幣局の桜並木があったりして、今も人々が往来します。  私もこの辺りを散歩しながら、外国人

          4|桜-sakura-の大川と、「ひま」な人たち

          星の味 ☆7 “夕暮れをめぐる”|徳井いつこ

           本に没頭しているうち、すっかり暗くなってしまった。  明かりをつけようとして、思いなおす。  外の世界が青く染まりはじめ、部屋に薄闇がしのび込んでくる夕暮れどきは、いつもためらわれる。  読み続けるには、いささか暗いが……明かりを点けてしまうと、何かを閉めだしてしまう気がする。  ハンス・カロッサの『指導と信従』を読んでいた。  風変わりな題のこの本をときどき開きたくなるのは、リルケとの最初の出会いが書かれているからだった。  カロッサが「嘆きの調子を含んでいる頌歌」と呼

          星の味 ☆7 “夕暮れをめぐる”|徳井いつこ

          山本粧子の Hola! ジャガイモ人間~ペルーからコンニチワ~┃ 第11回

          ブエノスディアス! 山本粧子です。 クリスマスが終わるとすぐに特大イベント、ニューイヤーAño Nuevo(アニョ・ヌエボ)がやってきます。 またまた私はミュージアムの館長宅にお邪魔して、クリスマスと同じく、大勢のファミリーと一緒に過ごしました。 今回はその中から、特に印象的だったことをレポートしたいと思います! *** 黄色い下着をつけて年越しだ! 大晦日の夕方頃、リビングで館長のご両親と談笑していたら、館長から突然 「ショーコ、このパンツにはきかえておいで」と黄色

          山本粧子の Hola! ジャガイモ人間~ペルーからコンニチワ~┃ 第11回

          第13回|はる Meets タナカ

           時は戻って2012年4月。はるがうちに来てからそろそろ2か月。春休みが終わり、新学期が始まって、ボクはほぼ毎日、大学へ出勤するようになっていた。  留守番の練習は完了している。7-8時間なら問題ない。webカメラで録画した動画から、留守番中はほぼずっと、お昼寝していることが確認できている。  朝、散歩に行き、昼間は大学へ行って仕事をして、夕方までに帰宅して散歩に行く。これが平日の生活パターンとして安定し、これで安心と思いきや、事件が起こった。  その日、帰宅して居間の扉を

          第13回|はる Meets タナカ

          推しの、先行き。✿第13回|実咲

          「光る君へ」第14話でついに道長の父兼家が亡くなりました。 最高の権力を手に入れてから、たった4年の出来事でした。 次に権力の頂点に立ったのは兼家の長男の道隆。 次男の道兼は次は自分がとの望みが思い通りにならなかったことから、参内をやめてしまいます。 つまり出勤をしていないということですが、それが許されるのは現代の社会人からすればなんとも羨ましい話です……。 時代がまた一つ変わる中、ドラマでは公任・斉信・行成がこれからの身の振り方を語り合います。 権力固めを推し進める道隆は

          推しの、先行き。✿第13回|実咲

          特攻文学としての《ゴジラ-1.0》|第9回|井上義和・坂元希美

          (構成:坂元希美) ⑨まだまだある特攻文学映画  《あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。》 ★ネタバレ注意★ 映画《ゴジラ-1.0》《あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。》のネタバレが含まれていますので、知りたくないという方はこの先、ご遠慮ください。そして、ぜひ映画鑑賞後にまた読みにいらしてください。 特攻文学が人を感動させるのはなぜか、改めて考える 坂元 特攻文学で人が感動するというのは、よく考えてみれば不思議なことだと思うのですよね。十死零生の特攻隊は、戦時中の

          特攻文学としての《ゴジラ-1.0》|第9回|井上義和・坂元希美

          守秘義務と報告義務の衝突をどう超えるか 『こころの秘密が脅かされるとき』「解題」を無料公開

           本書は精神分析家クリストファー・ボラスと弁護士ディヴィッド・サンデルソンによる共著 “The New Informants: The Betrayal of Confidentiality in Psychoanalysis and Psychotherapy” (1995; Northvale, NJ: Jason Aronson)の全訳である。原題は『新たな情報提供者:精神分析と精神療法における守秘義務の背信行為』となるが、わかりやすくするため『こころの秘密が脅かされる

          守秘義務と報告義務の衝突をどう超えるか 『こころの秘密が脅かされるとき』「解題」を無料公開

          推し、出ずる頃。✿第12回|実咲

          3月31日放送の「光る君へ」第13話では残念ながら、行成の出番はありませんでした。 この正暦元年(990年)の時点での行成は19歳。前年に源泰清の娘と結婚をしています。 また20歳頃から行成の日記である『権記』の写本が現存しており、そろそろ表舞台への登場の前段階といったところです。 第13話では、道長の父兼家の死期が迫っているようでした。 長男の道隆は、いよいよ自分へ権力が回ってくることを予感し、次男の道兼は自分こそ次の関白をと狙っています。 兼家の視界がぼやけるような演出

          推し、出ずる頃。✿第12回|実咲

          サラリーの語源|働く日々の歌 1|澤村斉美

           京都・出町柳駅前のベーカリー柳月堂の閉店を知ったのは3月半ばのことだった。店のウインドーに張り出された「閉店のお知らせ」の写真がSNSで流れてきて、目も手も止まった。真っ先に思い浮かんだのがくるみパン。ふわふわのパン生地に香ばしいくるみを混ぜ込んだまん丸のパンだ。そして、ぶどうパン。レーズンがほど良く甘く生地の味を引き立てる。あの素朴な粉の味。あのパンたちを食べることができなくなるのだろうか。学生の頃から四半世紀、京都に住んでいても離れていても好きでい続けたパン屋が閉じると

          サラリーの語源|働く日々の歌 1|澤村斉美