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ファッションD2Cブランドが、ポップアップストアではなくアートイベントを実施した理由

コンセプトに「ラグジュアリー」を掲げるD2Cブランドだからこそ考えたこと

SOÉJUは、ブランドコンセプトに「ファンクショナルラグジュアリー」を掲げ、着回しが楽しくなるような上質なベーシックアイテムを展開しています。「ラグジュアリー」を掲げているのは、機能性だけを追求するのではなく、上質な生地や丁寧な縫製の洋服を纏うことで湧く自信や、ものづくりの背景も含めた文化としてのファッションも楽しむという「余白」を持たせたかったからです。

ラグジュアリーブランドは、商品を点で作って売るだけではなく、線で文化を作っていることで、時代を超えて受け継がれる固有の価値を創造していると思います。ルイヴィトンの写真家ジャン・ラリヴィエールとの「THE SPIRIT OF TRAVEL」シリーズしかり、グッチの「A Culture of Purpose」しかり。私たちも、まだ生まれたてではありますが、提供するプロダクトやサービスの根幹に連綿と続くSOÉJUの哲学こそがSOÉJUブランド、と認知されるような在り方を目指しています。

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「美術館」という場所から始まったPRイベント企画

昨年、ブランドの立ち上げから約一年を迎え、D2Cでのプロダクト展開も軌道に乗り始めた頃、銀座のポーラミュージアム アネックスの展示イベントスペースをお借りできるというお話をいただきました。この貴重な機会をぜひ「線で文化を作る」というチャレンジへの第一歩にさせていただきたいと思い、初めてのPRイベント開催に踏み切りました。

企画段階では、D2Cブランド展開のセオリーに則して、ポップアップストアを開くという意見も出ました。しかし、あえて百貨店やモールなどの商業施設ではなく、「美術館」という文化を発信し継承する場所で開催する意味としっくりいきません。場所の意味とブランドイメージを結ぶ印象的なPRを行った例として、米国の眼鏡D2Cブランド、ワービーパーカーが、立ち上げ初期からニューヨーク市立図書館をハイジャックしたような、思想のあるPRイベントを開催したいと考えました。

そこで、SOÉJUの哲学である「I like the way I am」というメッセージを中心に据えた、ダイバーシティーに寄せた発信をしようと方法を模索しました。そもそも世間にまだSOÉJUが知られていませんので、共鳴いただける複数のブランドを募って一緒に発信することを考えました。一方で、今まで哲学の発信に繋がる活動実績もないSOÉJUが、急に旗を振る正当性があるのかと自問自答もしました。色々なアドバイスをいただく中で、このような活動には一貫性が必要であること、同様のメッセージを先行・継続して発している先達の存在についてきちんと勉強することが必要と痛感し、社会的なメッセージを声高に提唱するような発信の仕方は見送ることにしました。

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そこで再び「美術館」という場所の意味に立ち戻りました。また、自分たちにしかできない事業をしようと、SOÉJUのパーソナルスタイリングサービスを立ち上げた時の初心に戻りました。そして、「SOÉJUの哲学を、私たちにしかできないアートに振り切った形で表現しよう」と決めました。

アートであれば、人それぞれの感じ方で自由にメッセージを受け止めてもらえることができ、多様な在り方を讃えたいというSOÉJUの哲学にも相容れます。一方向的に押し付けるようなメッセージとはならないため、誰かを否定することにもならないし、逆に強いカウンターを受けることにもならないと考えました。

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アートイベント 「BLESS THE DIFFERENCE.」

そして実現したアートイベント「BLESS THE DIFFERENCE.」は、2019年9月銀座のポーラミュージアム アネックスで5日間開催されました。映像作品は、SOÉJUのアートディレクターである土田あゆみさんと、気鋭の映像作家で星野源さんのミュージックビデオなども手がける林響太朗さんが制作してくださいました。(イベントのオフィシャルホームページはこちらです。イベントレポートも、SOÉJUのホームページで公開しています)。

イベントの中心となるインスタレーションアートは、約10分間のムービーが壁に写し出される室内のプロジェクションマッピングです。「コツ・コツ・コツ・・」とランウェイを歩くファッションモデルたちが、白塗りの顔と全身に、同じ真っ白の服を身に付け、同じ歩幅で歩き、こちらへ向かって来る映像からが始まります。

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性別も、年齢も、人種も判断できない人物が6人、ただ同じように歩き続ける。徐々に画面は展開し、やがて白塗りのモデルたちの素顔も明かされます。「もしかして、こういうことを伝えているのかな、、、?」と、見る人に解釈の余韻を残したまま映像は終わります。

映像では、白塗りのモデルたちの同質性が醸し出す不気味さを、アンチテーゼとして用いています。「性別も年齢も関係なく、違いを尊重すること」を逆説的に捉え、「もし全員一緒だったらこう見える」という世界を作り上げました。

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イベント実施までの舞台裏

「アートに振り切る」と覚悟を決めてからも、イベントの実施までにはハードルがありました。一番大きなハードルは予算でした。美術館という場所に引けをとらない展示をしようと思うと、アート映像の制作費に加えて、展示のためのパネルと特注のウォール設備の設営費、機材費と、それぞれが数百万円単位の予算が必要となりました。追加予算を増やすことや、協賛を募ることも検討する中で、関係者間でイベントのROIを巡り喧々諤々の議論になりました。最終的に、当初の予算を超えない範囲で収めることを条件に企画を進めることになりました。

なんとか当初の予算を超えずにイベントを実施できたのは、アートに振り切った展示内容だったからこそ、アーティストや建築家の方々にもその主旨に共感いただき、ほとんど手弁当で参画いただけたからでした。撮影に必要だった特殊なカメラも、投影に必要だった高性能のプロジェクターも映像作家さんのお陰で無償でレンタルさせていただきました。スタートアップ企業の限られた予算内でも、作品のクオリティは一切妥協することなく、本物の場所に見合うアートとして誇れる内容になりました。

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アートイベントが生んだもの

映像アートの中で、SOÉJUの名前が出て来るのはエンドロールで1回のみ。イベントに来場してくださった報道記者様の中には、コマーシャル性のあまりのなさに驚いたと記事に書いてしてくださった方もいらしたほど、徹底してアートに振り切る展示となりました。

またアートに振り切った展示がメインとなったため、イベント会場はニュートラルに意見交換ができる場所にもなりました。その主旨に共感いただき、開催前日のプレイベントとして企画したトークショーには、異なる分野でパーソナルサービス事業を手がける、錚々たる起業家の方々に登壇いただくことが叶いました。

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トークセッションでは、株式会社 gumi-gumi CEOの軍地 彩弓さんをモデレーターにお迎えし「ジェンダーバイアスを超えていく『アート x パーソナルサービス』の新潮流」をテーマにディスカッションを行いました。女性を応援する目的で始めたパーソナルサービスが、蓋を開けてみると男性にも同じようにニーズがあると分かり、これからは男性向け・女性向けという括りを超えた「パーソナル」なサービスを提供する時代になっていくという視座を得ることができました。

ディスカッションの結論として、「強いイデオロギーを発すると、必ず二項対立で議論を戦わせることに向かってしまうから、まずは多様な在り方を知る・対話する場を継続的に持てることが理想ですね」という考え方を、ご参加いただいた皆さまと共有することができました。

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この「多様な在り方を知る・対話する場」を継続的に設けるための方法をずっと模索しておりましたが、今回、それをnoteで続けようと決めました。昨秋のイベントが発火点になり、時間をかけてようやくこのnoteの形に繋がりましたが、まだまだ手探りの旅が始まったばかりです。

アートという手段を取ったこのイベントが果たして成功だったのかどうかということも、このイベントを点で見て評価するのではなく、これからSOÉJUが思想を発信し続けて、点と点を繋げた結果の線で、インパクトをみていきたいと思っています。

アートイベントをご覧になり、或いはもしかしたら、SOÉJUのスタイリングの体験や、洋服を通じて、ステレオタイプを手放した全ての方々が、堂々と 「I like the way I am」と歌い、自分自身であることを謳歌できる世界を目指しています。

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noteでもこうしたコンセプトのもと継続的な発信を行っていきますので、ぜひフォローしていただけたら嬉しいです。

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