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Doseの散文・エッセイ

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2022年2月の記事一覧

【散文】斫り

【散文】斫り

 工事の音がうるさいが、俺は薄暗い路地を歩く。だらしなく歩く。両耳に挿した線のないイヤホンからは、流行りのJ-Popが流れている。映画のエンドロールに果てがあるように、退屈な俺の人生にもいつか終わりが来る。そのことを噛み締めてニヤリと笑い、俺はまだこの暗くてうるさい路地をのろりと歩き続ける。

 俺は何も為せず、二十一歳を持て余していた。そして同時に、健康に憧れながら不健康を謳歌していた。俺は過度

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【エッセイ】僕は今戦っていない

 小学二年生の秋、僕は地元のサッカー少年団に所属した。今ではLINEで話すこともなくなった当時の近所の友達が、僕を誘ったのがきっかけだった。

 僕の両親は、やや肥満気味だった僕を若干心配していたようで、その誘いに対して積極的だった。特に母親の提案を断ることが当時はできず、サッカーなんてなんとも思ったことがなかったが、とりあえず見学に行った。
 見学だけのつもりだったので、トレーナーにデニムに俊足

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