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小説 僕とあの人

空想ケモノ🎈



ーーこれは、ある森に住む僕とあの人のとても短い物語。



兎の僕は狼のような鋭い牙、鳥のように飛び回る翼、
それを持たないことを、とても悲しんでいました。

「僕には何もない…」


僕が泣いていると、いつもあの人は側に来て微笑んでくれた。



「私は君が大好きだよ」





そう言うあの人の笑顔は、たまらなく優しかった。




ある日、あの人は森から突然いなくなった。

どうしていなくなってしまったのか。

あの日の僕には分からなかった。


どうして1人にするの?
なぜ何も言ってくれないの?
怒りにも似た悲しみを感じたんだ。




あの人に会いたい。





僕は、強さの象徴である仮面を着ける事にした。

こんな物で本当に強くなれるのかなんてどうでも良かった。


とにかく、あの人に会いに行く勇気が欲しかったんだ。



だから強くならなければいけなかった。



僕は森を出て世界中を探し回った。

今度は僕があの人に声をかけたくて、気づくと走り出していたんだ。



そして、その日がやってきた。


なのに、あの人は泣いていた。




僕は弱いから。



なんて声をかけて良いのか分からない。




あの人は周りに優しくすることで、みんなから求められていた。
そのことに傷ついていたらしい。
応えきれずに、泣いていたらしい。


全く気づいてあげられなかった。


僕は、いつも甘えてしまっていたのかもしれない。






僕は本当に弱い。





それでも、ずっとずっとあの人に会いたかった。







「僕はあなたが大好きだ」






そんな声をかけるのが正解かなんて分からなかった。






ただ伝えたかったんだ。

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空想ケモノ🎈

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