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身体を触るだけで感じ取るエネルギーとそのコミュニケーション

僕が良く行くマッサージ屋は都内にいくつか店舗を構えるチェーン店だ。

その日は表参道にいたのだが、近くの店舗は予約で埋まっていたため少し離れた店舗を抑えてもらった。

マッサージの良いところは身体がほぐれること以外に、気持ちを整えられるところにあると思う。
凝り固まった頭、身体の血流を滑らかにするだけではなく、精神的な靄を取り除いてくれるような感覚だ。

僕は身体が凝っている時より、なんとなく生活の調子が悪い時に行くようにしている。心がざわざわしている時だ。

その日、僕の担当だったセラピスト(ようはマッサージ師なのだが、お店ではこう呼ばれているため、それに則る)は初対面の人だった。

マッサージされていた時に、セラピストがこんな事を言ってきた。

『良い感じですね。良いエネルギーです。』

これをきっかけに面白いやりとりが続いた。

「どういう意味ですか?」
『そのままの意味です。良いエネルギーが身体の中で循環していますね』
「自分ではピンとこないですね…」
穏やか、でもアクティブなエネルギーを感じます
何か個人で仕事されてたり将来独立するご予定ありますか?
「えぇ!なんでそんな事まで分かるんですか?」

僕はセラピストに仕事の事はほとんど話していなかったし、お店に伝えた事もない。

『色んな人を揉んでいるからなのかもしれないんですけど、身体の中のエネルギーが手から伝わってくるんですよね。その人の状態が良く分かります。』
「凄いですね。マイナスのエネルギーも感じ取れるんですか?」
『もちろんです。そういう時ってこっちまでエネルギー持ってかれちゃうんですよね』
「あー分かるかもしれないです。一緒にいるだけで元気になる人もいれば、逆に削がれる人もいますよね」
『そうです。だからお客さんのエネルギーは良い感じです。こっちまで元気になる』
「初めて言われたなぁ。」

確かに人の中に流れる気というか、運が良い人や上手くいっている人の周りには何か流れている感覚は分かる。その雰囲気によって、周りの人にも影響を及ぼす事がある。

不思議な体験だったが、僕はセラピストと言葉を使ったコミュニケーション以上に濃いコミュニケーションを取った気がしている。
そして、エネルギーは交換されるものであり、相互理解の深さはエネルギー交換の量に比例するんじゃないかとも思った。

マッサージの時間なんて数時間でたかが知れているが、確かに僕たちは言葉以上のやりとりをしていた。
面白いことに、「愛」「仕事」「人生」「お金」こういったテーマについて話が合うのだ。
セラピストが僕のエネルギーを感じ取っている時、僕もまた相手からエネルギーをもらっていたと言うことなのだろう。
コーチなので、相手の全てに焦点を当てることに慣れているが、マッサージ中は耳が特に敏感だ。
相手の声の抑揚、使う単語、主語の使用頻度、疑問符の回数…全ての情報を統合して、直感で相手のことを聞いてみる。
僕はコーチング的な関わりで、その場にいた。

セラピストが手からエネルギーを受けていたとすれば、
僕は耳でそれを受けていたのだ。

そして、お互いにエネルギーを交換しているからこそ、いや交換できたこと自体が会話の深化を促したのだろう。
会話が深くなるということは価値観が焦点に当たると言うことだ。だから僕たちはお互いの価値観に共感をした。
セラピストの仕事に対する姿勢は尊敬に値するものであったし、僕にも通じる部分があった。ここでは詳しく書かないが。

今思うと、これはコーチングを学んできたからこその体験だったのかも知れない。
じゃないと僕はあの浮遊感のある空間で非言語コミュニケーションを出来なかった。相手の全てに焦点を当てるという在り方でなければ、相手を引き出すことも出来なかった。つまり、相手のエネルギーはもらえなかった
もちろん、セラピストがマッサージを通してエネルギーを感じ取れるような技術者であったことも大事な要因だったはずだ。
お互いが別々の道で人からエネルギーを感じ取る仕事をしていたからこそ起きた時間だったのかもしれない。


あっという間の時間だった。身体以上に心がすっきりしたのを良く覚えている。
帰り道、いつもと同じ道の景色はまるで違うものに見えた。

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