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Wiiは僕の母を動かした ”コンセプトのつくりかた”

僕の母は厳しい。

どれくらい厳しいかというと、僕が小学生の頃ならだれでも持っていた、ニンテンドーDSを買ってもらえなかったくらいです。

友達と遊んだとき、他のみんながDSを取り出してニュースーパーマリオブラザーズをプレイし始めた時の僕の気持ちは、国語の試験で80字の記述問題にして出してほしいくらいです。

「ねえ次マリオが死んだら俺の番ね」と横から僕に言われ続けた友人にも同情します。

僕の母は(父も)ゲームにあまりいい印象は持っておらず、彼らにとってゲームとは「楽しいもの」ではなく、「与えたら子どもが離さなくなる悪魔の機械」だったようです。「買ったらずっとやるでしょ」と言う母に、僕は何も言い返すことができなかったのです。

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なぜかたまごっちは買ってくれた

友人の家

僕が小学2年生の冬、両親の友人家族の家に遊びに行きました。その友人は「みんなでウィーやろうよ」と私たち家族に提案してきました。

ウィーって変な名前だなと思いつつ、白くて細長いリモコンのようなものを渡され、私たちは「Wii Sports」のボーリングをプレイしました。

リモコン

白くて細長いリモコンのようなもの

僕は、初体験だったにもかかわらずストライクを9回くらい連続で出すという強烈なビギナーズラックを発揮し、友人宅のリビングを沸かせたのでした。母もボーリングは久しぶりだったようで、めちゃくちゃ楽しそうな表情をしていたのだけ覚えています。「これは買ってもらえるかも」と思った瞬間です。

帰りの車の中で、僕は「ウィー」なるものを買ってもらおうと両親にねだり続けました。僕だけじゃなくて両親もすごく楽しそうだったので、今がチャンスだと感じたのです。

母は「いいんじゃない」と言い、「ウィー」が我が家初のゲーム機として迎えられることになったのです。

「Wii Sports」はもちろん、「Wii Fit」や「マリオカート」のような家族だんらんの時間にピッタリのゲームから、「大乱闘スマッシュブラザーズ」や「スーパーマリオブラザーズ」のような一人でも、友達とも盛り上がれるようなゲームまで。僕の小学生、中学生時代を通して、Wiiは僕の家族の一員ともいえる存在だったのです。

それから10年以上が経ち

先日、こんな本を読みました。

任天堂でWiiの企画を担当した、玉樹真一郎さんという方の本です。

内容をまとめれば、「僕の母は任天堂の戦略にまんまとひっかかった」ということをこの本は僕に教えてくれました。

つまり、玉樹さんはじめWiiの企画チームは、まさに僕の家族のような「ゲームをやらない人・家族」をターゲットにしていたのでした。

彼らが着目したのは「母」でした。『今までのゲーム機は、「母」に嫌われてきた。「ゲーム脳」「視力低下」といったゲームと子供の関係をめぐるネガティブな話題が、ゲーム人口の拡大を妨げてきた。ならば、「母」が楽しめるようなゲーム機を作れば、家族みんながゲームを楽しむようになるのではないか』と。

そんな仮説を立てた彼らは、「お母さんに嫌われないゲーム機」というコンセプトを作り、Wiiを開発したのでした。

お母さんに嫌われないためにはどうすればいいのか。例えば、本体をリビングにおいても邪魔にならないデザインにする。例えば、「コントローラー」ではなく「リモコン」と呼ぶ。例えば、一人で黙々とプレイするゲームより、みんなでワイワイ体を動かして遊べるゲームを意識する。などなど。

こうした工夫が実を結び、Wiiの世帯当たりプレイ人口は3.5人(2007年)、つまり1台のWiiで3.5人の家族がゲームを楽しんでいたという記録を作り上げたのでした。

Wiiがいかに家族に溶け込んでいるのかを示す重要な数字です。Wiiは、世の中の「母」のハートをがっちり掴んだのです。

この本は、こうしたコンセプトがどのようにして生まれたのか、コンセプトを作るにはどんな考え方が必要なのか、がすっごく分かりやすく説明されています。今「新しい何かを作り出す」「新しい活動を始める」という場所に立っている方には超オススメできる本だと思います。

大佐の初めての読書感想文、いかがでしたでしょうか。こんな感じで、ただただ興味に従って書いていこうと思っています。

著:大佐









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