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”何もしない”子育て。娘は塾なしで東大に現役合格。正義感の強すぎる娘に「自分と人は違う」と言い続けた桃子さんの「育て方」(おたまさんお母様)

お受験を経て早くから恵まれた環境の中で東大を目指す子どもも多い中、「塾は無し」を貫く子育てをした桃子さん。正義感が強く、相手が誰であっても注意をしたり行動を起こしたりすることを厭わない娘の個性とどう付き合い、支えてきたのか。「この人はどうやって育ってきたのだろう」と思う相手とその養育者にインタビューを行う”育ち方プロジェクト”。おたまさんのお母様である桃子さんにお話を伺った。

桃子さん(おたまさんお母様)
山形県生まれ。高校卒業後、アートギャラリー等で勤務。結婚して出産を機に退職し、専業主婦として家族を支える。子育てが落ち着いてからは近所でパート勤務。勤続18年が経ち地域でも知られた存在に。趣味は読書と絵画鑑賞。

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自分の意見を主張し、行動できる子だった

ーおたまさんは「ただ勉強ができるだけの子」ではなく、授業中に居眠り防止活動をしたり「社会に貢献したい」と発言したりと、学生時代から存在感のある眩しい存在でした。自分の意見が主張できる子に育てたいとお考えだったのですか?

いいえ、全然。それよりも「自分と同じ人間はいないのよ」と言い続けていましたね。真面目で、何事もきちんとする分、他の子が授業中に居眠りしているのが気になったみたい。「自分はできるのに他の子は…」という傾向は小学校の頃からあったので、しょっちゅう「自分と同じ人はいないんだから」と言い続けてきました。高校も希望のところに行ったんだけど入ってみたら「想像よりもレベルが低かった」そうで、一時期はあまり楽しくなかったみたい。だから「やめちゃえばいいじゃない」って言いました。

ー「頑張って行きなさい」とは言わなかったのですね。

嫌々行ってもねえ…。だったら他の行きたいところに転入でもすればいいかなって。で、結局、自分で教頭先生に相談したみたい。そしたら「そんなちっちゃなこと考えてないで他のことに目を向けてみたら」ということで国連大学の中の機関を紹介されて、国連機関のボランティアスタッフとして働いていましたよ。それで知らない世界が開けたみたい。

ーこのあたりのエピソードを聞くだけでおたまさんの人柄と行動力を改めて再確認できたような気がします。幼少期はどのようなお子さんでしたか?

釣り禁止の池で釣りをしている人がいたら注意するような小学生でしたね。今も歩きタバコをしている人がいたら声をかけていますね。さすがに大人になったのでソフトに優しく注意していますが。

ーご本人に話を聞く限り、行動力や自己主張の強さはお母様譲りだということですが…。

そうねえ。私も気になったら黙っていられないタイプだから。でも、私以上に娘は自分の意思を人に主張できる方だと思う。小学生の時、友達が家に遊びに誘いにきてくれた時も「今日は本を読みたいから遊ばない」って断っていて。「そこまで自分の意思があるなんてすごいな」って。そういうところは尊重してあげたいなと思いましたね。

あと、そういえば携帯電話もずっと持たせていなくて、高校生の時にそれが理由で娘にだけ連絡が回ってこなかったことがありました。でもその時にも「うちには(固定)電話があるから、連絡は電話でください」ってはっきり主張していて、「偉いな」って思いました。「だから携帯を買って」とは言わなかったですね。

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「ダメなものはダメ」という子育て

ー意志の強さを尊重する一方で、塾や携帯電話、ゲームなど、認めないものがけっこうあったのですね。

そうね、「みんな携帯電話を持ってるんだよ」とは言われたけど「まだいらないわよ」で通しました。便利なのはわかるんだけど、世の中に流されるのは好きじゃないのよね。私は今も携帯電話は持っていません。娘からも「連絡が取りにくい!」とは言われるけど、事前にちゃんと約束や準備をしておけば済むのだから。なくてもやっていける生活がしたいです。今はあの子も大人だから放任しているけど、未成年の頃は「ダメなものはダメ」でやってきました。

ーちなみに塾通いを認めなかったのは何か意図があったのでしょうか?

塾に行くと夜寝るのが遅くなるから生活が乱れるでしょ? それが良くないと思ったのと、お金に余裕がなかったのが理由ですね。「学校の勉強でわからないことがあれば先生に聞きなさい」といつも言っていました。

ーそのような教育方針はもともとお持ちのものだったのですか?

そういえばもともと若い頃から教育問題には関心が強かったです。『どぶ川学級』(労働旬報社/須長茂夫著)(※)を読んだりして。私自身が学生だった頃から点数主義みたいなものも嫌いでした。私は学校の勉強が良くできる方だったのだけど、「テストの点が良いだけで褒められるのはおかしい」と思っていました。ナポレオンについて語らせたら右に出る者がいないようなすごい子もいたのに、勉強ができなければ評価されない。「もっと人間的な内面を見てほしい」という反発心みたいなものはすごくありました。

ーそのようなお考えをもとに、子育てで大事にされていたことは何でしょうか。

あえて言えば、生活の基盤をきちんとすること。早寝早起き、規則正しい生活。幼稚園もお勉強を教えないところを探して通わせていました。

ーなぜ、あまり早くから勉強をさせたくなかったのでしょう?

英語とか、公文とか、そういうのを早くからさせる人もいると思うし、子どもは吸収力があるからなんでもすぐ覚えちゃうけど、なんとなく「それでいいのか」って思うのよね。ほら、いくら計算ができても読解力がなくて文章題が解けない子どもが増えているっていうのが昔からよく言われていますよね。そういうのも、勉強させるんじゃなくて本を読ませればいいんじゃないのかなって思います。一人ひとりを活かす教育が大事なのであって、早くから勉強をさせる事が大事だとは思っていませんでした。あ、でも読書をさせるのは大切だと思ったし私と夫も本は好きだったから、親が本を読む姿は見せるようにしていました。

(※)労働組合の若者が労働者階級の子どもたちの家庭教師となり、学校以外で主体的な学びの場を得て学力を伸ばしていく話。1969年に出版され、映像化もされている。

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「元気ならそれでいい」と思う気持ちを大切に

ー習い事などは何かさせていらっしゃいましたか。

夫の仕事の都合で何度か引越しをしているけど、その地その地でピアノやスイミング、あとは幼稚園の課外授業で音楽教室も行ったかな。中国に赴任していた時は水墨画の先生におうちに来てもらって、私も一緒に習いました。スイミングは、夫が子どもと一緒にプールに行きたいって言っていたんです。…こう考えると、お勉強は全然させていなかったけど、習い事はいろいろやっていましたね。私が絵が好きだから、子どもも絵を好きになってくれたらいいなとか、ピアノが弾けて歌が歌えたら楽しいだろうななんて思っていたんですよね。

ー勉強面は、本人にお任せという感じだったのですか?

そうね。宿題くらいは「ちゃんとやりなさいよ」と言ったかもしれないけど、学校の先生にお任せでした。だけどそういえば、テストで100点じゃなかったときに「習っていないことが出たの?」と聞いて、そうじゃないと答えたから「なんで間違えたの?」「先生の話をちゃんと聞いていればわかるでしょ」って言ったことがあったと弟の方から言われたわね。「お母さんひどい」って思ったって。私は授業を聞いていればいつも100点が取れたから、ついそう言っちゃったんでしょうね。

ー「自分と人は違う」ということですね。ちなみにごきょうだいの間で子育ての方針は変わりませんでしたか?

同じ方針でやったつもりだけど、実際はそうじゃなかったみたい。娘に言わせれば、弟にはなんでも先回りしてやってたって。でも思い返せば、たしかにあれこれ世話を焼いてしまったかも。進路のことなんかも、ついつい口を出してしまいました。

ーなぜごきょうだいで接し方が変わってしまったのでしょうか?

娘みたいに「自分はこうしたい」というのがハッキリある子は、親はラク。弟の方は優しくておとなしいタイプだったんです。中学校の部活動も「手芸クラブに入りたい」って言っていたから「え〜」と思って、「吹奏楽はどう?お母さん、トロンボーンとか好きだったなあ」なんて言って、結局、吹奏楽部に。楽しかったみたいで、大人になっても趣味でオケをやっているから結果的には良かったんでしょうけど…。

それにお菓子を作るのも好きで「中学を出たらパティシエになりたい」と言っていたの。でも「じゃあフランスでもどこでも行ってらっしゃい!」とは言えませんでした…。「パティシエになりたいなら英語も大事じゃない? やっぱ高校くらいは行って英語を勉強した方がいいんじゃない」って言ってしまいました。ホント嫌ね、サジェスチョンしちゃった…。

ー同じ方針で育てようと思っても、子ども本人の生まれつきの気質次第なのかもしれませんね。では、最後の質問ですが、もし今の時代に子育てをするとしたら、どんな子育てをなさりたいですか?

いちから子育てするとしても、やっぱり変わらないと思います。かといって自分がやってきたことが全部正しかったとは思わないけど。だけど子どもはやっぱり元気よく外で遊んでいてほしいなと思います。子どもが病気になった時って「元気ならそれでいい」って思うじゃないですか。その気持ちを大切にしたいですね。元気だとそれ以上のものを要求したくなってしまうから。

ー胸にグッときました。本当におっしゃる通りですね。

娘の高校で、広報の役員をしていたことがあったの。娘が東大に合格して、保護者の方達に「(どう育てたのか)話してほしい」って頼まれたことがありましたが、お断りしました。だって本当に親は何もしていないから、話すことがないんです。ご飯を作っていただけですよ。


◆桃子さんの「育て方」ポイント
・信念を持って「ダメなものはダメ」とする
・子育ての方針は「早寝早起きと規則正しい生活」
・点数主義に反対、人間的な内面が大事
◆インタビューしての感想

福富
お母様もおたまさんと同じく、明るくハキハキと淀みなくお話される方でした。「世の中に流されるのは好きじゃない」「ウチはダメだから」ときっぱりとお母様自身の意見を持たれているところが、おたまさんの自分の考えを主張し行動していく力につながっているのだと感じます。
「公園に出かけてもお昼ごはんの時間になったら帰る。他のお母さんがいつまでも遊ばせているのが不思議だった」「塾に行ったら寝るのも遅くなるのでウチでは考えられない」など、早寝早起きで規則正しい生活を大切にされていたことも印象的でした。
きっと子育て時代も今の生活も、迷いなく、ブレることなく過ごされていて、その姿がおたまさんにも大きく影響しているのだろうと感じました。

村上
「親は何もしていない」とおっしゃるお母様が、心底「自分のおかげで娘が東大に入ったわけでない」と思っていらっしゃることが伝わってきました。「どう育てれば子どもが東大に入るのか」という問い自体が親のエゴなのかなと感じると共に、賢明な子育てをすることと、子どもの気質が勉強と相性が良いことが同時に成立した時にこそ、東大が現実的な選択肢になるのだろうなと思いました。おたまさんの人柄は、まさにこのお母様あってこそ、と強く感じました。

インタビュー/福富彩子、村上杏菜 
執筆/村上杏菜
写真レタッチ協力/西原朱里

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東大卒業生を中心に「気になる人」の育ち方を聞くプロジェクト。対象は【我が子がこんな人に育ったら素敵だな】と思える人。本人とその養育者に、子ども時代・子育て時代の話をインタビューし、記事として発信していきます。たまにイベントも開催します。