法人営業がお客さんから「で、いくらなの?」って聞かれたら
こんにちは。株式会社マイノリティ 代表の柳澤です。B2B企業のPMFやグロースを専門としています。
今回はこんな「営業あるある」について考えてみたいと思います。
商談の最初に「で、いくらなの?」って聞かれたら
営業の現場でよくあるのが、お客さんからいきなり「で、いくらなの?」って聞かれること。みなさんも一度は経験したことあるでしょう。
お客さんからすればまあ当然で、値段がわからないと不安ですよね。あと、せっかちなお客さんほど最初にこれを聞いてくるんです。
でも、営業側としては困ってしまいます。正直、金額はすぐに言いたくないんです。営業の鉄則としては、「金額は商談の最後に出すのがベスト」だから。
なぜかというと、最初に金額を言ってしまうと、商品やサービスの価値をちゃんと理解してもらう前に、金額だけで判断されてしまいます。話を聞いてもらう前に「高っ!」って思われるのは避けたいものです。
もちろん、安さが売りの商品なら、最初から金額を出してもいいんですけど、最近はそういう「安かろう・悪かろう」で売ってる会社は少なくなってきています。
だから営業としては、最初に価格を聞かれるのが一番嫌なんです。繰り返しますが、営業は後出しが基本です。
一方、お客さんも予算を言いたくない
じゃあお客さんに金額を聞かれたらどうすればいいか。この場合、いくつかの返し方があります。「ところで、ご予算はおいくらくらいですか?」って逆に聞き返す人は多いと思います。
でも、お客さん側に立つと、これは答えたくないんですよ。
なんとなくわかりますよね。お客さんが予算を言いたがらない理由はいくつかありますが、まず1つ目はできるだけ安く済ませたいからです。
たとえば本当は500万円の予算があっても、それを言っちゃうと100万円のプランがあるのに、500万円ギリギリの提案をされるかもしれないじゃないですか。
もちろん営業側としては予算の上限いっぱいの提案をしたいけれど、かといって予算と提案があまりにもかけ離れてしまうと話にならない。例えば、予算100万円しかないところに500万円の提案したら、まったく話が噛み合わなくて終わりです。
これが言いたくない側と聞きたい側の思考です。
予算をはっきり言わない理由は他にもあります。そもそも予算が決まってなかったり、自分に決裁権がなかったり、さまざまです。
特に新しい領域の商品やサービスだと、お客さん側に予算の概念がないこともあります。いままで世の中になかった商品だから、いくらくらいが妥当なのかわからない、みたいなことです。
こういう状況では商品やサービスの価値を具体的に示して、どれだけメリットがあるか説明することが大事になります。
たとえば「このサービスを導入すると、年間のコストが何%削減できます」みたいな具体的な数字を示して、お客さんに予算を作り出す必要性を感じてもらうところからアプローチをする必要があります。
あとは単純に予算の情報を知らないこともあります。よくあるのが、商談相手のお客さんは決裁権がない実務担当者で、そもそも予算がいくらなのか知らないというパターン。この場合、担当者に予算を聞いても意味がないですよね。
といった理由から、営業が最初に予算を聞いてもそれほど意味はないのですが、商談の中盤くらいで軽く聞くことはよくあります。器用な営業はそのときに探った感触で予算額を想像し、それに合わせて提案を変えていきます。
普通の営業だと予算が高かろうが安かろうが、だいたい3つくらいのプランを用意してて、それをそのまま案内しがちですね。
話を戻しましょう。お客さんに最初に金額を聞かれたらどうするか。
営業は「いかに後出しをするか」
営業としては、最初に金額は言わない。一旦は受け流して、まずはお客さんの要望や課題をしっかり聞くようにします。「最後に提案させていただいて、その時に価格もお伝えしますね」って言うのがいいと思います。
そうすると「じゃあ最後に聞かせてね」ってなることも多いです。
営業の基本は後出し。営業のトレーニングでも「後出し」を重視します。後出しとはつまり金額を伝える前に、相手の予算を知ることです。
結局のところ、お客さんと営業の間での金額のやりとりって、いろんなパターンがあります。
お客さんはまず価格を知りたがるし、営業は最後まで言いたくない。お客さんは予算を聞かれるの嫌がるし、営業は知りたがる。
この駆け引きをうまくやりきって、お客さんの予算を聞き出すのも大事な営業のテクニックの1つです。
営業によっていろいろな聞き方をしていると思います。僕の経験では、「この金額を超えたら“検討のテーブルに乗らない”っていうのはどれくらいですか?」みたいな聞き方は有効だったりします。
あるいは「1000万円と2000万円、どっちが近いですか?」といった聞き方をする方もいます。これは商談の場の雰囲気によっても変わるので何が正解とも言い切れません。そのとき上手くいった方法が正解となります。
営業の理想としては60分の商談のうち、50分くらいは価値の説明に使って、最後の10分で金額の話をしたいもの。十分に価値を伝えた上で、「なるほど、この金額なら納得」って思ってもらえるようにするためです。
ただし、金額の話をするタイミングや方法は、商品やサービスの性質によっても全然違ってきます。パッケージ化された商品なら、比較的ストレートに価格提示してもいいと思いますが、コンサルティングのようにカスタマイズ性が高いサービスの場合はもっと慎重にアプローチしたいですね。
それに自社のブランディングができてなかったり、競合が多かったり、他社と差別化できてない商品だと、この予算を巡る攻防がすごく激しくなります。
適切なタイミングを常に探ること
私はこれまで、いろんな会社で営業をやってきましたが、予算を聞くと「いやいや、まず価格言ってよ」ってよく言われました。
お客さんの立場や経験によっても対応を変えないといけません。経験豊富な購買担当者だと、こちらの意図を察して予算を明かさない可能性が高いですし、逆にはじめて大きな買い物を任された担当者だと、予算について率直にに答えてくれる可能性もあります。
結局のところ、大事なのは金額や予算の話題を避けるのではなく、適切なタイミングで、適切な方法で話し合うこと。
商談を通じてお客さんとの信頼関係を築きながら、金額の話ができるような関係値を作れるよう努めることが、成功する営業の秘訣です。
※せっかくなので次回はもう少し踏み込んで、「お客さんの予算感を把握するテクニック」について書いていきます。
営業のノウハウについては、「法人営業の教科書」というマガジンにもまとめています。よかったら読んでみてください。