BtoBのコンテンツマーケティングには“オウンドメディア未満”の小規模な専門サイトが有効
これまで4回にわたって、BtoBマーケティングの戦略の立て方から、人員配置のコツ、そして施策の手始めとして「名刺」の重要性について書いてきました。
前回は個別施策の第一弾として「ウェブサイト改善」について解説しています。
今回はBtoBマーケティング施策の本丸とも言える「コンテンツマーケティング」についてです。
小規模な専門サイトを商品ごとにつくる
前回がウェブサイトの主にトップページの構成について解説しましたが、肝心のコンテンツの中身はどうやってつくればいいでしょうか。
たとえばオムロンの場合、商品の問い合わせを得るためのコンテンツはどういうものになっているのかというと、こんなふうに商品の説明が載っています。
もちろんこれは最低限必要なもので、競合のキーエンスもほぼ同じです。
要は基本情報は同じようなことを載せています。
どちらも「問い合わせにつなげる」ことが目的ですが、商品説明だけでは、見込み客にそこまで訴求できないわけです。
そこで重要になってくるものが、コンテンツマーケティングという考え方です。
たとえば、キーエンスのコンテンツマーケティングの一例を挙げてみます。キーエンスは製品ごとにいくつもの事業部があるんですけれども、その中に「外観検査」の問い合わせをとるための「外観検査.com」という、外観検査について徹底的に解説しているサイトがあります。
外観検査で検索すると上位に表示されていますし、必要な情報がコンパクトかつ詳細ににまとめられています。
オウンドメディアを立ち上げるほどの労力をかけずに情報を集約しているのが特徴です。
ここからかなりの数の問い合わせにつなげていると考えられます。
実はキーエンスはその他に、「安全知識.com」や「流量知識.com」などのサイトも展開しています。要は商品カテゴリーごとにSEO対策を兼ねた小規模サイトを量産しているのです。
さらに注目したいの各サイトのドメインです。
小規模サイトを立ち上げる際はドメインに注意
それぞれドメインを見てみましょう。
・外観検査.com
https://www.keyence.co.jp/ss/products/vision/visual-inspection/
・安全知識.com
https://www.keyence.co.jp/ss/products/safety/knowledge/
流量知識.com
https://www.keyence.co.jp/ss/products/process/flowmeter/
すべて「keyence.co.jp」の配下につくられていますね。これが大きなポイントになっています。
たとえばこちらの「ゴム加工.com」というサイトは、さきほど同じ小規模サイト戦略を他社が展開している例です。
サイトのつくりはほぼ同じ。小規模な専門サイトをつくって問い合わせを取りに行くという目的も同じだと考えられます。運営会社を調べたところ、株式会社第一という会社のようです。
ただ、ドメインを見ると、会社のドメインとゴム加工.comのドメインが別々になっています。
・株式会社第一
https://www.d-1.co.jp/
・ゴム加工.com
https://daiichi-gomukakou.com/
僕はこれは少々もったいないと思っています。
キーエンスの場合、傘下の小規模サイトはすべて「keyence.co.jp」のドメインの配下につくっているので、ドメインのSEO的な評価を引き継げます。
そういった事情から、「gaikankensa.com.co.jp」のようなドメインをあえて取らずに、自社サイト配下に作っていると考えられます。
ドメインを新しく取得してゼロからつくると、SEOの資産もまっさらな状態からはじまることになります。
実は僕もそういうふうにつくったサイトがあります。弊社マイノリティでは、いわゆる「ソーシャルセリング」の手法を広めるために、「ソーシャルセリング.com」というサイトを立ち上げました。
このサイトのドメインは、
https://minority.works/socialselling/
と、マイノリティのドメイン配下に置いています。
コンテンツマーケティングの観点でいうと、小規模な専門サイトをつくって、見込み客が購入にあたり気にするであろうナレッジをきちんと紹介することは非常に有効です。
そして、それに加えてSEO的な観点から、小規模サイトのドメインもぜひコーポレートサイトの配下に置いておくことをおすすめします。
コンテンツが良いのに問い合わせが来ないケース
小規模な専門サイトを製品カテゴリーごとに量産するのはBtoBマーケティングにおける最近のトレンドです。流入自体はかなり多くなると思います。
ただ、これが問い合わせにつながるかどうかはまた別の話です。そこにはもう1つ工夫すべき点があります。
たとえば昨年、とある企業が素晴らしいコンテンツマーケティングを展開していました。良いコンテンツが並んでいたので僕もとても注目していました。
おそらくトラフィックは相当な量あったと思いますが、残念ながらその会社はその事業をたたんでしまいました。
資金調達をして、良質なコンテンツを投下して、トラフィックを増やしていたことは分析で見えてきました。ただ、そこから売上につなげられなかったようです。
その要因は「コンバージョンポインがなかったから」だと推測されます。
要は問い合わせや購入につなげる導線が不十分だったため、たくさんの見込み客が記事を見に来るけれど、一向にコンバージョンに繋がらないという事態になってしまったわけです。
このようにトラフィックはすごく伸びたけれど、マネタイズにはつながらないという例はよく見られます。
そこで重要になってくるのが、さきほどのキーエンスでも、ソーシャルセリングも同じなんですけれども、ウェブサイトのどこを見ていても常に視界に入ってくる「コール・トゥ・アクション」(CTA)というものです。
サイトの上下に見える「メルマガ登録」「お問い合わせ」「資料ダウンロード」などがCTAです。これらを適切に配置しないと、いくら良いコンテンツをつくっても無駄になってしまいます。
特にBtoBの場合、いわゆる「リード」と呼ばれる名刺情報がなければ営業は動き出せません。
たとえば、小規模な専門サイトには、「まだ購入は考えていないから、問い合わせはしなくてもいいかな」というお客様が基本的な知識を仕入れにくるので、「資料をダウンロードしてもらう」というCTAを常に視界に入る様に設置するのが有効です。
たとえばキーエンスの場合、コンバージョンにつなげるためのアクションボタンを鬱陶しくない程度にきちんと入れていて、ページのどこを見ていても視界に入るようにしています。
こういうことって、地味に重要なんです。
BtoBにおけるコンテンツマーケティングの近年のトレンドとして、製品カテゴリーごとに小規模な専門サイトをつくり、良質なコンテンツをコンパクトにまとめておくことを挙げました。
そしてそれらサイトの効果を高めるために、ドメインをコーポレートサイト配下に置くこと、問い合わせにつながるCTAをしっかりと設置することが重要です。
次回も引き続き「コンテンツマーケティング」がテーマです。事例記事とプレスリリースの効果的な使い方について解説します。
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