インサイドセールスの導入と、“営業の分業化”のベストタイミング
このnoteではBtoBマーケティングの戦略の立て方から、個別の戦術や施策について順序をたてて解説しています。
こちらのマガジンにまとめていますのでご覧ください。
今回は「営業の分業化」をテーマに、なかでもインサイドセールスを導入する正しいタイミングについて解説します。
長らく、BtoBスタートアップ界隈では「分業化」がトレンドになっていますね。
10年ほど前までは、リード獲得からナーチャリング、商談獲得まで、すべてのプロセスを”営業マン”が一手に担うのが当たり前でした。
ところが、ここ5〜6年で営業プロセスを「インサイドセールス」と「フィールドセールス」の2つに分け、前工程と後工程で役割を分担するスタイルが主流になっています。
きっかけは、SaaSの代表的企業であるSalesforce社が、この分業モデルで急成長を遂げたこと。
一時期大ブームになった『THE MODEL』という書籍でも、同社の成功要因として営業プロセスの分業化が取り上げられています。これに触発されて、多くのBtoB企業が分業化に舵を切っているのが実情だと思います。
ただし、分業すれば必ず効率が上がるわけではありません。営業が2〜3名ほどの会社では、インサイドセールスを導入してもかえって生産性が落ちるケースが多いのは注意しておきたいところです。
※過去に「THE MODELの弊害」と題して、インサイドセールスが機能しないケースについて書きました。
私もシリーズAのスタートアップ支援に入ると、「営業の分業化をすすめるべきしょうか?」といった相談をよく受けます。インサイドセールスを導入したいという会社さんでも、話を聞いてみるとまだ早すぎるケースが結構あります。
そこで今回は、「まだインサイドセールスをやらないほうがいい」「この状態になったらやったほうがいい」という営業プロセスにおける分業化の分岐点について解説します。
Webからの問い合わせが少ないなら分業化は不要
まず、「そろそろインサイドセールスを立ち上げて生産性を上げたい」と考える会社の実態を見てみましょう。
一般的に営業の方々は、問い合わせ対応とテレアポで手一杯というパターンが多いです。お客様からの問い合わせだけでは件数が足りないから、テレアポもやっているわけです。
となると、Webからの問い合わせは月に10〜20件程度ではないでしょうか。そういう状況では「帝国データバンクからリストを買って、代表者にテレアポしています」という話をよく聞きます。
このフェーズでインサイドセールスを入れても効率は上がりません。アウトバウンドのテレアポなら現状の営業でもできますし、月十数件の問い合わせなら即フォローも可能です。
むしろ、インサイドセールス1名分の人件費をマーケティング予算に回して、まずは問い合わせ数を倍増させるべきです。営業1人あたり月20〜30件の問い合わせが来るようにしてから、分業化を考えるのがベターでしょう。
インサイドセールスの効果が発揮されるタイミングとは
一方、インサイドセールスが効果を発揮するのはどんなフェーズでしょうか。
それは、すでに毎日一定数の問い合わせが入っていて、営業が触りきれていないとき。SFAのハウスリストも潤沢になっているようなタイミングです。
この頃になると、営業は目の前の商談対応で手一杯になります。どうしても新規リードへの対応や、過去に商談した見込み客へのフォローが疎かになりがちです。
本来なら、以前の商談相手から「このタイミングなら前向きに検討できる」といった情報もつかめているはずなのに、目の前の仕事に追われて過去の見込み客まで手が回らない。
そこで機会損失が発生しているのです。
この状態こそ、インサイドセールスの効果が発揮されるタイミングです。
目安としては、営業1人あたりのハウスリストが1,000件以上あり、毎月100件以上の問い合わせがコンスタントに入る状態です。
営業の人数で言えば、少なくとも5名以上のフィールドセールスがいるフェーズです。つまり営業チーム全体で5,000件以上のリストを扱えるようになってから、インサイドセールスを立ち上げて営業プロセスの効率化を図るのがよいでしょう。
展示会やWebマーケティングの前にインサイドセールスを整える
ポイントは、マーケティング施策と連動させることです。
展示会やWebマーケティングで大量のリードを獲得しても、インサイドセールスの存在なくしては活かしきれません。
例えば展示会では3日間で2,000〜3,000件のリードが取れることがあります。しかし、インサイドセールスがいない状態でそれだけの数を獲得しても、なかなか機能しません。
そもそも、インサイドセールスがいなければ、2,000〜3,000件ものリードを取ろうという発想自体が出きません。結局、ブースに来て話してくれた30人とだけ商談する、といった状況に陥いりがちです。
商談を増やせば受注も増えるはずなのに、機会損失してしまうわけです。
ここで、展示会で獲得した商談の最終的な受注件数を想像してみましょう。BtoB営業の場合、どんなに高くても受注率は30%を超えないですし、平均的に見ても10%くらいしか受注できません。
そうすると、30件のお客さんと商談をするよりも、200件のお客さんと商談したほうが、受注件数自体は当然伸びるわけですよね。
そしてたいていの場合、初回商談しても7割以上は失注してしまいますが、再度商談を重ねることで3年以内にはかなりの確率で受注にこぎつけられるはずです。
大量のリードを獲得できるチャンスを目の前にしたときは、必ず3年以内の受注プロセスまで設計しておきましょう。浅く広く接点を持ち、初回商談できちんとコンタクトを取って情報提供を繰り返していくことが、1〜2年後にまた効いてくるのです。
こうした考えから、展示会への出展を計画しているのであれば、事前にインサイドセールスを立ち上げておくべきなのです。
大きな展示会への出展をきっかけに分業化を決定する会社さんも少なくありません。いずれにしろ、営業の分業化には正しいタイミングと体制づくりが大事です。
営業の分業化に関するまとめ
まとめると、オンライン/オフラインの施策問わず、毎月安定して3桁以上のリードを取ることができており、営業1人あたりのハウスリストが1,000件以上ある状態ならば、インサイドセールスを立ち上げるのがよいと思います。
そして少なくとも5名以上のフィールドセールスがいる状態で立ち上げた方がよいでしょう。それはつまりハウスリストが合計5,000件以上ある状態です。
このタイミングで分業化をすると、効率的にリードを獲得し、商談につなげられ、営業全体の成果につなげられます。
単なるトレンドの追随ではなく、自社の状況を把握して今後の成長戦略をしっかり描くことを意識しましょう。
次回はインサイドセールスの具体的な手法・実用的なテクニックについて深堀りします。
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