月刊「まなぶ」連載 経済を知ろう!第5回 経済の測り方(2)

「まなぶ」(労働大学出版センター)2023年5月号所収

経済活動を、その性格によって分類してみると、生産、支出、所得という3つの面があると考えることができます。前回取り上げた経済の担い手である家計、企業、政府の経済活動もそれぞれ生産、支出、所得という面を持っています。

生産

生活が経済的に豊かになるというのは、ただ、お金があるということではなく、その背景に生産が増えて消費できるものが豊かにあるということを意味します。私たち人間は、富となるものを作り、使っているわけですが、この富となるものを作ることを生産という言葉で表しています。
現代では、物理的な生産物(物財)だけでなく、サービスの提供も生産と呼ぶべきでしょう。サービスには非常に様々な分野があります。例えば、運輸、電力、通信もサービスですし、医療や弁護士や会計士の仕事もサービスです。
生産の過程では、人間が働くこと=労働過程によって価値が付け加えられます。ただし、現在の国民経済計算では、住宅賃貸料(持ち家の場合に想定される家賃も含め)など実際にはその時点で労働によって提供されるわけではにないサービスも生産に含めています。
G D P(国内総生産)とは国内の生産で生まれた粗付加価値の合計額を指しますが、企業会計でいう減価償却費にあたる固定資本減耗を差し引いていないので注意が必要です。

支出

支出と呼んでいる経済の側面は、生産されたモノやサービスを実際に使うことを意味しています。
家計の主な支出は家計消費です。生産された消費財や個人向けのサービスへの支出が柱をなしています。また消費ではなく投資として扱われる住宅の購入も家計にとっては大きな支出になりますね。
企業の場合は、原材料や部品の購入や建物の建設、機械の購入などが主な支出項目になりますが、原材料や部品の購入(中間投入と呼びます)は企業同士で行われるものが多く、企業全体で見ると相殺して考えることも可能です。これを中間投入と言っています。
政府の場合は、公務員の報酬、公共投資、公共サービスの維持のための製品やサービスの購入が主な支出項目となります。

所得

貨幣経済である資本主義経済では、支出をするためには、財やサービスを購入する資金がなければなりません。家計は雇用者報酬などの所得を得て、支出をしていますし、企業は利潤を得て新たな投資を行います。政府は税収などがあってそれを支出する事ができます。
所得というのは単にお金が手に入るということではありません。お金が手に入るということであれば、借り入れでもお金は手に入りますが、これは所得とは呼びません。
企業の所得は生産した製品・サービスの総額から費用を差し引いたものと考えられます。つまり企業の利益です。個人の場合は、労働力を提供した対価としての賃金や財産を運用して得た収入が所得といえます。
もちろん各部門とも常に所得=支出というわけにはいきません。部門ごとに見れば所得が余る場合も不足する場合もあります。

三面等価

経済全体を捉える視点として大事なのが、「三面等価」の原則です。これは生産、所得、支出という3つの面が、経済全体の金額で見ると一致することを言います。一つの国だけ見た場合には貿易や投資収益のやりとりがあるので一致しませんが、他と取引のない経済、例えば世界経済全体では必ず成立する原則です。
生産活動によって所得が生まれ、全部門を足すと同額になります。その所得を用いて支出がされますので3者が同額になります。

第1回 経済ってどんな意味?
第2回 おカネの正体(1)
第3回 おカネの正体(2)
第4回 経済の測り方(1)
第6回 経済成長とはなんだろう?(1)
第7回 経済成長とはなんだろう(2)

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