月刊「まなぶ」連載 経済を知ろう!第4回 経済の測り方(1)

労働大学出版センター「まなぶ」2023年4月号所収

経済成長はG D Pの増加?

 T Vなどの経済ニュースでは3ヶ月に1回は実質G D P成長率が出てきます。日本では内閣府経済社会総合研究所が3ヶ月に1回、四半期別のG D P推計値の速報を発表しているので、それが報道されているわけです。大抵は伸び率だけが簡単紹介され、それが多くの人の経済の現状にたいする印象になってしまうことが多いようです。経済の問題を単に経済規模の拡大スピードだけで評価してしまうのは短絡的ではないでしょうか。
 G D P成長率は確かに経済の拡大の程度を表す一つの指標ではありますが、G D P統計にはそれだけではない意味があると同時に限界もあります。まずはG D P統計の基となる国民経済計算の仕組みに基づいて捉えてみましょう。
今回は、経済の担い手(経済主体)についてみていきます。大きな括りとして、家計、企業、政府、外国という4つの部門に分けることができます。

家計

 経済統計上の「家計」は、個人の生活を経済活動の主体とするものです。私達には生活するために消費するモノやサービスを買うための収入が必要です。家計の収入で、もっとも大きい割合を占めているのが、企業などで雇用されて得る賃金などの収入ですが、これを雇用者報酬と呼びます。企業は、直接労働者に払う手取りの賃金以外に、源泉徴収税や年金・健康保険など社会保険料の雇い主負担部分を支払っています。これらも最終的には従業員の利益になるので、雇用者報酬にはこれらも含めます。
 個人で事業を営んでいる人の場合は事業収入が生活資金となるわけですが、これは、家計の営業余剰と呼ばれています。
さらに家計には財産所得もあります。これは家計が所有している資産からの収入を指します。アパートを所有している大家さんが受け取る賃貸料は財産所得というわけで、主に資産家の収入です。

企業

 企業は利潤を目的に事業活動をしています。製造業を例にとれば、資本を元手に機械装置や原材料を仕入れ、労働者を雇用して、生産活動を行い、生産された製品を売ることで資金を回収します。その資金を投資や運転資金として事業を継続する資金にします。そのサイクルが繰り返されていきます。
現代ではある程度の規模以上の民間事業は「株式会社」の形をとって経営されるのが普通になりました。株式会社は株式を発行することで多くの個人や団体から資金を集める事ができるので、多額の投資が必要な事業を行うなうことができるようになります。株式保有に比例した投票権を持つ株主により株主総会で取締役(経営者)を選出し、取締役は株主に対して責任を持つという立場で会社の経営を行います。
 企業活動を捉えるのに企業会計は重要な役割を果たします。一定期間の損益を計算する損益計算書、ある時点の企業の資産と負債の状況を把握する貸借対照表、資金の動きを示すキャッシュフロー計算表があり、企業の経営状態を把握するための柱となります。

政府

 政府は経済活動における働きという点でみると、一般的には民間の経済主体にはできないこと、すべきではないことを担う組織だと言えるでしょう。経済の用語としての政府という場合は、中央政府(国)だけでなく、地方政府(自治体)、社会保障基金(年金など)も含めます。
政府は公的な機関として、公務員を雇用し、関連する費用を負担しています。一般的な事務、教育、警察、消防、自衛隊など様々な仕事があり、これを政府消費と呼んでいます。
 また道路など公的なインフラを整備する投資も行っています。国民の生活に必要な共同で使える設備、例えば道路や学校の建設で、公共投資(公的固定資本形成)と呼ばれます。公共投資によって作られた建造物は政府の資産となります。
 これらの支出は税金や国債の発行などを通じた借入れによって賄われていますが、借入れは最終的には税金で返済すべきものなので、最終的には納税者の負担になると考えるべきでしょう。

外国部門

以上の3部門に加えて、貿易や国際的な資金移動を考慮して、外国部門を設定する事ができます。
国内の3つの部門と海外部門のやり取りは、モノやサービスの貿易、投資、援助などの資金移動ということになります。


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