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6/15開催レポート「私たちの知らない世界。~教育機会を十分に受けられなかった人たちのこと~」

6月の「私たちの知らない世界。」のテーマは「教育機会を十分に受けられなかった人たちのこと」
教育機会を十分に受けられなかったおとなの人たちの現状やその状況に至った理由、支援と取組みの現状について、学習支援を行っているお二人に話題提供いただき、私たちができることについて考える機会となりました。

話題提供者
・園田淳子さん(
仙台自主夜間中学
・畠山明さん (
個別教室のアップル代表)

話題提供者の園田さんは仙台自主夜間中学の運営をされています。昨年4月に仙台市では公立夜間中学(南小泉中学校夜間学級)が開設されニュースなどでも夜間中学が話題となりました。
仙台市立南小泉中学校夜間学級(夜間中学)|仙台市 (city.sendai.jp)

公立夜間中学と自主夜間中学の違いについて簡単にまとめましたので先に紹介します。


仙台自主夜間中学の園田淳子さんから、仙台自主夜間中学の特徴やどのようなきっかけで自主夜間中学に通うようになったか、どのような人が学習しているかなど、学習者の方の背景や取り組みの現状について話題提供していただきました。

仙台自主夜間中学・園田さんの資料より

まずは、冒頭にも簡単に表でご紹介しましたが、公立夜間中学と自主夜間中学の違いを見ていきます。

「公立夜間中学」とは
公立中学校の夜間学級。中学校卒業資格が取得できます。
戦後の混乱期の中に家庭の事情などで昼間の中学校に通学できない子どものために開設されたのが始まりです。
現在は、戦後の混乱期に学校に通えなかった人、残留孤児の人、親の都合や結婚などで来日したが日本の学齢期を経過した人、昼間の中学校で不登校になり中学校を卒業した人などさまざまです。

【令和5年4月時点】
・既設夜間中学校17都道府県に44校
・開校に向けて検討を進めていることを公表している地域3県
・東北では仙台市に1校、令和6年4月に福島市にも開校予定

「自主夜間中学」とは
民間ボランティアの協力で実施。中学校卒業資格は取得できません。
文部科学省「平成29年度夜間中学に関する実態調査」によると161市町村、識字講座を含め1,533件の取組みが行われています。

夜間中学にはいくつかの団体の形があります。公立夜間中学創設運動の一環として開設、運営している団体や学びを求めている人たちへの教育保障に専念している団体などがあります。
仙台自主夜間中学では積極的に公立増設を目指す運動をしていなかったので、教育保障に専念している団体になります。

夜間中学に詳しくない人は、公立夜間中学と自主夜間中学の違いを初めて知ったという人もいるかもしれません。
「仙台自主夜間中学」は名前にも入っているとおり自主夜間中学です。

「仙台自主夜間中学」について
仙台自主夜間中学は、学びたいと意欲を持っている方、それに応えようとするボランティアの方とのゆるやかな学び合いの場で、組織的、計画的に行う学校ではなく、学習者ごとに寄り添う楽しい学び舎を目指しています。

・開校:2014年11月(当初は学習者4名でスタート)
・授業料、入学金:無料
・入学:いつでも可能/進学などによる修了はあるが、卒業はない。

<授業>
・昼間部・夜間部の二部制:高齢者や仙台市街から通う方には夜間に通うことは難しいと考え、開校当初から授業は昼間部と夜間部で運営しています。
・科目:小・中学校の基礎科目(国語、算数、数学、社会、理科、英語)
・毎回2コマ50分ずつ/グループまたは個別で学習
・教材:教科書以外にもスタッフ手作りの教材や市販の教材を使用
・場所:仙台市教育局生涯学習支援センター(仙台駅東口)

仙台自主夜間中学の学習の特徴として、「言葉の時間」があります。
まず授業に入る前に、言葉に興味を持ってもらうため、15分間「言葉の時間」を設けて、学習者・スタッフが共に一斉に学習します。

学習科目は学習者の希望に沿っており、希望科目は英語が多く、次に多いのが算数、数学。英語については、ABCの書き方から始まる方もいます。

学習者とスタッフの特徴
今年4月時点の在籍者は学習者47名でスタッフは44名います。

<学習者>
昼間部の学習者の多くは60代以上で、夜間部の学習者の多くは昼間に仕事をしています。
他県の自主夜間中学には外国籍の方も多くいるようだが、仙台自主夜間中学の外国籍の方は1人。仙台では外国籍の方を対象としているボランティア団体もあるため、外国籍の方からの問い合わせもないようです。

<スタッフ>
スタッフは50代以上が多く、現役の教員の方も含め、ほぼ教員経験者で、現役の大学生や高校生もいます。

学習者のうち、若い年代はネットで検索しての問い合わせが多く、スタッフは仙台市政だより、各所に配架をお願いしているパンフレットを見ての問い合わせが多いです。昨年4月の仙台市公立夜間中学校開設に伴う影響で問い合わせが増えていると感じています。

学習者の紹介(勉強しようと思ったきっかけ)
・戦時中、国民学校修了。英語を学ぶ機会がなかったので英語を学びたかった。
・家庭の事情で学校に通わせてもらえなかった。勉強が分からないまま小学校を卒業したので中学でも分からないままだった。
・学校という環境になじめず不登校になり、自宅学習などで中学校を卒業したが、基礎学力の不足を痛感していた。学校という場で学んでいないので対面で勉強するのが楽しい。
・不登校ではないが、勉強に学校は必要ないと思っていた。勉強ばかりしていて、周りとコミュニケーションがあまりとれなかった。算数数学が苦手だったので納得するまで学びたかった。コミュニケーション能力をつけるために対面で勉強し始めた。

仙台自主夜間中学では学習を個別で対応しているので、勉強が「難しい」だけだったのが「楽しい」につながっています。

学びたい意欲を持っている人を一人でも掘り起こし、学習の機会を提供して、さまざまな事情を抱えている学習者一人ひとりに寄り添い、楽しい学びを行っていきます。公立夜間中学校とは今後も補完、共存しながら連携をしていこうと思っています。


続いて、個別教室のアップル代表の畠山明さんから自己肯定感の醸成や大人の女性の学び直しなど、本業の塾以外の取り組みについて話題提供をしていただきました。

畠山明さん
個別教室のアップル代表 / 一財)学習能力開発財団理事長
宮城県出身の元教員
1996年に個別教室のアップルを創業
講師は仙台市内で460名在籍/プロ講師・国立大・医学部生限定で宮城県内に15校開校しています。

本業以外で学習支援を行うようになったきっかけは東日本大震災。
気仙沼にある実家が6mの津波の被害を受けて、商売をやめてしまいました。親戚が亡くなったり、いろいろなことがありましたが、私たちの会社も3教室壊れてしまったので、自分の会社を直すだけで精一杯。地元や沿岸部に何もサポートできなくて、そこから無料学習支援を始めたり、講演活動を行うようになりました。

大人になって学び直しが必要な人は15歳までに何かしら家庭、特に小学生までは親との関係、中学生以降は親だけではなく友人や大人との関係性の中で何らかのトラブルがあった方が多くいます。
自己肯定感または自尊感情が低いとやる気が出ず、他の人を大切にできなくなることもあり、不登校やいじめとの関係も考えられるため、信頼できる人との共有体験が大切です。

そのような課題のある大人の人たちと共有体験をするために、学習者の女性と女性の教師を460人の中から人柄的にも安心できる人を選んでマンツーマンで学習支援を行っています。

自尊感情は2つあります。

個別教室のアップル・畠山明さん資料より

失敗したり、叱られると社会的自尊感情が低くなり、自暴自棄になってしまい、次の一歩を踏み出すことが難しくなります。
基本的自尊感情は勉強や運動ができるなどとは直接的な関係はないため、周りの信頼できる大人たちとの共有体験によって、ありのままの自分を受け入れてもらえると、自己肯定感が醸成されて、それが厚ければ、たくさん叱られても、乗り越えていける「心の体力」になります。

だいたい毎年15名~20名の人に無料学習支援を行っています。
スタッフは勉強を教えるだけでなく、安全な学習環境を整えるべく学習カウンセリングを行うなど大変なことも多いですがやりがいがあるため活動を継続しています。

まなキャリを実施した方のアンケートを見ると、自己肯定感や就労意欲が上がっているのは、ほとんどの学習者が学ぶ機会がなかっただけだったことが分かります。また集団で学ぶのではなく、1対1でサポートすることで、「自分もやればできるかも」「私は大丈夫かも」と思えるようになることが見えてきました。

「まなキャリ」とは
自立を目指す女性のための学び直しを通したキャリア支援事業
(2020年実施)
(公財)せんだい男女共同参画財団主催で、個別指導学習アップルは「学び直しの時間」をサポートしました。


参加者からの質問をいくつか紹介します。

畠山さんに質問です。
学び直しといった時の「学び」を具体的に教えてください。

>畠山さん 学びは多様だと思います。
一人ひとりよくカウンセリングして深く聞いていくと、本当は人の話を全く聞きとれていなかった、本当は引き算ができていなかったということもがあるかもしれないが、そこをケアできれば自信を取り戻せるかもしれません。少し欠けているところに、少しだけ後押しをすることが私たちにとっての学びなのかなと思います。

お二人に質問です。
子どもの時にこういう教育だったり、こういう機会を受けられたらもっと良かったのになと思うことがあったら教えてください。

>園田さん もう一回学びたいと思ってくれてよかった、よくぞここに来てくれたと思います。今の出会いができてよかったです。

>畠山さん 学習以外の行事などで基本的自尊感情が厚くなるため、斜めの関係(例えば縦の関係は親と子、横の関係は友だち、斜めの関係はちょっと年上のおねえさん、おにいさんなど)と行事があるといいのかなと思います。


次回のご案内です。7月のセッションは休み、次回は8月になります。

8月は『市民活動』と『副業』の可能性と題して、宮城県内のNPOでのプロボノ(ボランティア・副業)を募集するイベントを行います!

せんだい・みやぎソーシャルハブのプロボノに参加した、三瓶悦孝さんから実際にプロボノで活動してみて感じたこと、本業との両立の工夫、得られた経験などをお聞きします!

『市民活動』と『副業』の可能性~自分のキャリア活かしたい人大募集!~
日 時:2023年8月17日(木)19時~20時30分
ゲスト:三瓶悦孝さん(せんだい・みやぎソーシャルハブのプロボノ参加者)/他、プロボノ受け入れ予定のNPOの方を予定しております
会 場:仙台市市民活動サポートセンター6階セミナーホール、オンライン会場(Zoom)
定 員:30名(Zoom会場は定員制限なし)
申込み:フォームからお申込み下さい
https://forms.gle/arr9y1ejfs4EX6HX7

みなさんのご参加をお待ちしています!


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