8/22開催レポート「自治会活動は無理ゲー?あすと長町から新たな地域運営を考える」
毎月第3木曜日に、地域課題や、課題だと思う種を持ち寄り、課題解決へ向けた連携が生まれる場として開催しているセッション。
今回のテーマは、「防災と自治 自治会活動は無理ゲー?あすと長町から新たな地域運営を考える」。
ゲストに、あすと長町を拠点に「新たな地域運営」を推進する認定NPO法人つながりデザインセンター副代表理事の新井信幸さんをお招きし、多種多様なコミュニティづくりについて話題提供していただきました。
それでは、当日のセッションの内容についてレポートしていきます。
1.自治会活動は無理ゲー?
「無理ゲー」とはインターネットやSNSの世界でよく使われる言葉で、攻略がほぼ不可能なゲームのことを指し、ゲーム以外の実生活でも、解決が難しく、実行が困難な場合に使われます。私自身、災害公営住宅や仮設住宅のコミュニティ支援に携わる中で自治会活動は継続がとても難しいと感じることが多いため、今回このお題をつけました。
自治会活動は過剰に煩雑な役割を担っている場合も多く、まさしく「無理ゲー」状態です。でも、もう少し整理して「新たな地域運営」としてコミュニティを運営すればそこまで難しくはならないのではと考えています。
私たちのケースは災害公営住宅なので少し特殊な部分もあるかもしれませんが、皆さんの実態に置き換えて考えてもらえればと思います。
2.つなセンの取り組み
被災地のコミュニティの現状や災害公営住宅のコミュニティを生むポテンシャルを踏まえて、つなセンでは「自治組織の役割のスリム化」と「孤立を防ぐ居場所づくり」に取り組んでいます。
3.自治組織の役割のスリム化と孤立を防ぐ居場所づくり
それでは、具体的に「自治組織の役割のスリム化」と「孤立を防ぐ居場所づくり」の事例を紹介していきます。
①塩竈市の清水沢東住宅(2016年6月入居開始/計170戸)の事例
公営住宅は特殊で住民にも義務が定められていて、共用部の清掃、電気料金の支払い、電球類の交換や集会所の管理などを住民が行います。
清水沢東住宅では、公営住宅の運営の義務的なことだけを請け負う管理組合のような組織にスリム化したところ、加入率がほぼ100%になりました。
集会所で住民や外部の団体が様々なサークル活動を開くようになり、高齢者も一人暮らしの方もそこに参加すれば知り合いができるという環境ができました。外部の団体にも開放したことで、平日はほぼ毎日集会所が利用される環境をつくりました。
最低限、孤立をしないようにつながっておけば、多様な活動や機能が生まれて解決できることが増えると考えています。
孤立を防ぐ居場所づくりのエッセンスとして、多様な団体がサークル活動を行うことで毎日違う活動があり、参加者が自分で活動を選べることが多様なつながり作りを可能にすることが分かりました。一つの主体がサークル活動を行うとそこに相性が合わない人は孤立を選択するしかなくなるからです。
集会所(空間)+多様な主体による活動=みんなの居場所となります。
清水沢東会は、基本的に清掃と共益費の徴収などの義務的な管理をする活動のみを実施していて、義務の果たし方に選択肢を設けることでほぼ全世帯の参加を達成しています。(例:清掃活動に不参加の場合は1000円の徴収)
このように、一般的な自治会も、義務を設定してそこだけを運営する、というように自治会機能をスリム化すれば全員が納得して全世帯参加が叶うと思います。
②あすと長町地区の災害公営住宅(2015年4月入居開始/計327戸)の事例
あすと長町地区の災害公営住宅には「あすと食堂」という食堂があります。
ガラス張りになっていて、土足で入れるため、ふらっと入りやすく、カウンター席あるため、ひとりでも入りやすい食堂にしました。みんなで一緒に「いただきます」を言うなど、ひとりで食べていてもみんなと一緒に時間を共有できる食堂を目指して運営しています。
集会所の利用料を自治会費から出すと、自治会費が逼迫するため、利用者が利用料の負担をすることで自治会費を逼迫せず、利用の有無で不公平が出ないようにしたり、集会所を借りやすくするためにweb予約をできるようにするなど借りる人を増やす工夫をしてきました。
あすと長町第二市営住宅では、つながリッキーと題して、より多くの住民との緩やかなつながりをつくるため、表向きは交流を目的としないスマホ相談会を開催し、今まで集会所に来たことがなかった住民の参加もありました。
必ずしも交流を目的にしなくても、集会所を広く貸し出して、まずは利用してもらうことを目的にすると多様な活動が生まれると思います。
他にも、大学生二人がフィギュアを並べて写真撮影するための場所として集会所を借りたこともあります。
どのような活動も公開して、誰が来てもいいよということにしています。住民が何に興味を持つかは分からないため、どのような活動が住民にとって良いかを考えるより、どんどん集会所を貸し出すことが大事だと思います。
*つなセンでは、これまでの取り組みから得られたノウハウや、実践例をブックレットにまとめ、発行しています。
発行物 | 認定NPO法人つながりデザインセンター (tsuna-cen.com)
集会所の集まりは「文化的で正しい人たちの集まり」といった雰囲気が漂っている場合が多いですが、孤立気味の住民にとってそれが必ずしも居心地が良いとは限りません。
中には、「参加者が少ないから参加した」という方もいて、多種多様な集まりを創出することで孤立を防ぐことにつながると思っています。実際、スナックや立ち飲み屋やパチンコの方がふらっと立ち寄りやすいという意見もあり、孤立を防ぐにはそういった視点も踏まえる必要があると思います。
また、活動を通じて仲良くなっていくと仲間意識が芽生えますが、同時にグループのメンバー以外に対しては排他的にもなるので、コミュニティを形成する際には「共同性」と共に「排他性」も生み出すことにも目を向けないといけないと思います。
常連しかいないスナックにはなかなか新規のお客さんが入りにくいことを考えてもらうとイメージしやすいと思います。
4.新たな地域運営に向けて
地域コミュニティは性質の異なる2つの縁(つながり)から成り立っています。地縁と選択縁(*)が適度に整備されることで、孤立を防いで住民一人ひとりのQOL(Quality Of Life/生活の質)が高まると考えています。
これを目指す取り組みを私たちは「新たな地域運営」と呼んでいます。
自治組織の役割をスリム化(義務に特化)することで全世帯参加が可能となり、担い手の高齢化の解消につながります。
まずは全世帯が参加して、顔と名前が分かる程度のつながりを作ることを目指すと良いと思います。全世帯が参加していれば、自治組織が地域を代表していると言っても問題がないと言えます。
地縁の役割をスリム化(義務に特化)することによって、全世帯参加を目指していきたいですが、現状の担い手は過剰で煩雑な役割よりも、関与しない住民のモラルを問題視する傾向にあり、その根強い価値観こそ課題と言えると思います。また、一般市街地には共用部が少ないことから、何を義務の活動とするか設定に工夫が必要です。
選択縁の充実には小さなグループが気軽に利用できる場が必要となるため、公営住宅の集会所や空き家などの地域利用が求められると思います。
また、多様な主体の利用を促進する運営を誰が担うかが課題です。
「地域自治」とよく言いますが、「自治」という言葉の通りに自分たちで治めなくても、外部のNPOなどが入ってその地域を運営しても良いと思います。住民同士のつながりが深められて苦労のない形でそのつながりが継続できるなら「自治」にこだわる必要はないのかなと思っています。
5.質疑応答
ハブのセッションは毎月第3木曜日に開催しておりますが、9月は定期セッションの他に「トークイベント:多様化する時代に、地域はどう変わる?」を開催します!
せんだい・みやぎソーシャルハブ 公開トークイベント
『多様化する時代に、地域はどう変わる? 〜今の時代に沿う地域自治・地縁コミュニティを考える〜』
日 時:2024年9月5日(木)18:00〜19:30
場 所:仙台市市民活動サポートセンター 市民活動シアター(地下1階)
ゲスト:奥河洋介さん
(HITOTOWA INC. 執行役員/防災士/神戸市地域活動推進委員会委員)
主 催:せんだい・みやぎソーシャルハブ(企画:都市デザインワークス)
共 催:仙台市市民活動サポートセンター
参 加:無料、申込優先 (リンクからお申込ください)https://forms.gle/4YXHwrDsTmqDGdjH9
「トークイベント:多様化する時代に、地域はどう変わる?」の詳細はこちらをご覧ください。
皆様のご参加お待ちしております!