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勝つことを知り尽くしたユンジョンファン監督との仕事【CB基準の守備分析講座講師 清水智士インタビューVol.2】

元J1コーチの2倍早く守備の穴を見抜く『CB基準の守備分析講座』【動画解説】」の講師をしていただいている清水智士さん(サガン鳥栖、ベガルタ仙台でコーチを歴任。育成年代の指導もしたい!と考え現在は大同大学大同高校サッカー部コーチ)のインタビュー第2弾です。
Vol.1は、つくばで肌で感じた学ぶ姿勢の重要性

サッカーアナライザー:正式にサガン鳥栖に入る前に、当時監督だったユンジョンファン監督と話したりしたんですか?

清水さん:もちろんしました。強化の方や監督など、お話しさせていただきました。

サッカーアナライザー:ふむふむ。どんなこと話すんですか?

清水さん:どんなこと話したかな…もう緊張しすぎて覚えてないですけど(笑)。練習見た後に面談があって、「今日の練習見てどうだったか?」とか。
その前に鳥栖の試合を見てたりしてたんで、その時の印象を話したり、そんな内容だったのではないかと。

サッカーアナライザー:なるほど。実際一緒に働いてみて、どんなことを学びましたか?

清水さん:ユンさんからは、「勝つってこういうことだな」ってのを学びました。

サッカーアナライザー:うんうん。

清水さん:つくばFCでやってた時、「良いサッカー」をできるようになる、選手たちも育つ、なんだけど、大事な試合で勝ちきれないなって思ってたんですよ。

サッカーアナライザー:うんうん。

清水さん:そう思ってた時に、ユンさんと出会って、「あっ勝つってこういうことだな」って。
前のFIゼミ主催のセミナーでも話したと思うんですけど、『勝ちながらチームを作る、勝ちながら育成していく』というイメージが、ユンさんと一緒に仕事をする中でできてきました。

サッカーアナライザー:大きい経験ですね。

清水さん:そうなんですよ。僕はだから悩んだり壁にぶつかった時、「ここまではできるようになった」っていう時に、すごい適した人たちと出会ってきてるんです。本当に僕は周りの人に恵まれてきたと、心から思っています。ユンさんと出会ったのも、まさに、という感じです。

サッカーアナライザー:清水さんがそういう課題を持てていて、サポートしたいと思ってくれるような状況に、自ら持っていってたというのも前提なんでしょうね。

ちなみにサガン鳥栖の後は、ユンジョンファン監督と一緒に韓国のKリーグ(蔚山現代)でも仕事したじゃないですか。どちらの時の話でも良いですけど、印象に残ってるエピソードとかありますか。

清水さん:なんでしょうね。一緒に次の対戦相手の試合を見てた時に、ポロッと

「この相手には◯◯だけ押さえておけば勝てるね」

ってユンさんが言ったことがありまして。僕は「えっ?」と思いました、その時は。だってユンさんはその時あまり集中して映像を見ていなかったんですよ。確か何か別のことをしながらで。

で、僕はそこから1週間近くそのチームの分析をしました。
そこで導き出した結論は、「その◯◯を押さえれば勝てる」という、全く同じ結論でした。

サッカーアナライザー:一緒だったんですね(笑)

清水さん:本当だ、って(笑)

サッカーアナライザー:まさに勝つってどういうことか、わかってる感じですね。

もう1つ聞きたいのが、ユンジョンファン監督と一緒にやる上で、これだけは絶対ちゃんとやってくれ、など厳しく要求されたことってあるんですか?

清水さん:んーーーー。そう言われてみたら、あんまり厳しく言われた記憶ってないんですよね。

サッカーアナライザー:へぇー!意外!

清水さん:もちろん最初、監督のことを理解するまでは鋭い指摘は受けました。でもそれは仕事をする上では当たり前のことだと思いますし、本当にすごいかわいがってもらっていた感じがします。
僕も監督が求めていたものを察知しようというのは考えていましたが。

サッカーアナライザー:なるほどなるほど、それは大事ですね。

清水さん:監督がこういうのを求めていて、こういうのは好んでないんだなっていうのを、周りの人に聞いたり、察知しようとしていました。最初は本当に必死なので、とにかく。右も左も何もわからないですからね。

必死にやっていく中で、ユンさんから「もうちょっとこういう風にミーティングした方が良かったんじゃないか」とか、「これだけは外さないで」とか、打ち合わせは繰り返しました。でもなんかこう、失敗して怒られたりとか、そういうのは記憶にないですね。僕が都合よく記憶してるだけかもしれませんが。笑

サッカーアナライザー:なるほど。では韓国で仕事をした時の苦労って何かありました?

清水さん:もう計り知れないぐらいありました(笑)
まず映像が日本みたいにきちんとKリーグ管轄でなかったりとか。

サッカーアナライザー:えっそういうレベル感での苦労からあるんですか!?(笑)

清水さん:まあまず分析っていうものに対しての捉え方が日本と違っていたように思います。分析担当コーチっていう存在がいなかったんですよ。多少映像を切って、監督に渡したりとか、便利屋さんみたいな人はいたんですけど。

基本的にビデオを撮りに行って渡すところまでだったりとか、それプラス雑務をこなして、とか。
ましてや分析担当がミーティングをしたり、コーチングスタッフとして機能するということは無かったと聞いています。

サッカーアナライザー:そうだったんだ。

清水さん:だから選手たちも最初びっくりしてました。他の韓国人スタッフもびっくりしてましたし。
会社にこういう風にしたい、ってなった時もお互いどういう仕事をするかがわからないので、映像に予算が取られてなかったりとか。。。

ユンさんと僕がイメージしてる分析をするために必要なものを揃えるということに、すごい時間がかかりました。

サッカーアナライザー:おおー…大変ですね。

清水さん:それから、選手もJリーグと比べて、誰が出てくるかわかりにくかったです。

サッカーアナライザー:スタメンにってことですよね。

清水さん:メンバーのローテーションとか、Jリーグとは違いました。あと軍隊チームがあったりして、そこから戻ってきた選手とか、軍隊に行くからあまり出場しない選手がシーズン途中で出てきたりとか、文化的な背景も絡んできて、特に最初はわからないことが多くて。

サッカーアナライザー:それは分析官としては、めっちゃ大変ですね。。。

清水さん:ましてやカップ戦とかになると、本当にわからないんですよ。なので、その時の状況状況で最善を尽くしながら対応していってましたね。

サッカーアナライザー:大変ですけど、それはそれですごく良い経験になりそうですね。

清水さん:そうですね、かなり鍛えられました。ある状況の中で、最善を尽くす。
その他、韓国で開催されるACLや代表戦、育成年代の試合なども余裕ができてからは見に行って学ぶこともできたり、そういうことも含め、本当に良い経験をしたなと思っています。

サッカーアナライザー:すごい良いですね。

清水さん:日本ではこうやるのが当たり前、みたいなことと全く違ったりしたので、客観的に日本を見ることもできた。Jリーグってこんなところが恵まれてるんだなとか、逆にこういうところがKリーグの強さなんだなとか。

サッカーアナライザー:例えばそのJリーグの良さと、Kリーグの良さってそれぞれどう感じましたか?

清水さん:まず運営面とか集客とか、環境に関してはJリーグはすごいです。

サッカーアナライザー:韓国はどうでしたか?

清水さん:お客さんが入ってなかったりとか。

サッカーアナライザー:えっ、そうなんだ。サッカーあまり人気ないんですか?

清水さん:はい。集客にはどのクラブも苦労していましたね。あとはスタジアムの管理とか、まあお客さんが少ないからかもしれないですけど。Jリーグは恵まれてるんだなって。

サッカーアナライザー:逆に韓国の強いところは?

清水さん:やはり、Kリーグのファイティングスピリットですかね。勝つために色んなことが行われてたりとか、寮で全員が寝泊まりできる環境とか。
なんというか、大事にしている優先順位がJリーグと違うのかなと。
どちらが良い悪いではなくて。

サッカーアナライザー:なるほど。優先度が違うんですね。でもKリーグって人気があるとは言えないのに、ACLなんか強いじゃないですか。どうして強いんだと思います?

清水さん:育成の仕方が日本と違うのかなと思っていました。日本は広く普及のところから入ってるというか、サッカー人口をまず増やして、底辺を広くして上に積み上げていく。

韓国はエリート教育という色が強いのかなと。色々仕組みが違うと思いました。全部見れたわけじゃないので、あまり無責任には言えないですけど…

サッカーアナライザー:ふむふむ。で、そこからユンジョンファン監督がセレッソに行って、清水さんはベガルタに行きますよね。監督もJで初めて違う方で、Kリーグを経験してからのJリーグ。どう感じましたか?

Vol.3 指導する上で最も大切にしている「寄り添う」姿勢
に続く
FIゼミ特別講座「元J1コーチの2倍早く守備の穴を見抜く『CB基準の守備分析講座』【動画解説】」講師、清水智士インタビュー
Vol.1 つくばで肌で感じた学ぶ姿勢の重要性
Vol.2 勝つことを知り尽くしたユンジョンファン監督との仕事(本記事)
Vol.3 指導する上で最も大切にしている「寄り添う」姿勢
Vol.4 CB基準に守備を見た時のピッチの景色

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サッカーアナライザー
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