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病と生きる

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ネフローゼという病気で、入院したときなどに書いたエッセイです。
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入院日誌|病と。未来へのエール

入院日誌|病と。未来へのエール

入院するたびに、人生をつかみなおす。

自分を支えてくれる人たち、必要なこと、好きなもの。
そのたびにシンプルになっていく。

こんな機会が定期的に与えられるなんて、なんと恵まれた人生だろう。

入院生活を助けてくれた夫、両親、義両親にも、心から感謝を。

***

1カ月の入院と言われていたけれど、予想以上に体調は早く回復し、2週間ほどで退院できることになった。

仕事は結局、ほとんどしなかった

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入院日誌|病と。ふたたび

入院日誌|病と。ふたたび

n度目の、ネフローゼ再発。再び一か月ほど、入院することになった。

この2年ほど調子がよかったので、油断していた。結婚記念日の5月15日、ちょっと贅沢な食事をした後、どうもお腹が張るなぁと思っていたら、翌週末、尿に泡立ちあり。ネフローゼの兆候だった。次の日、あわてて病院へ。数日間は投薬で様子を見たけれど、良くはならなかった。

家族に知らせ、職場に連絡し、入院の手続きを進める。またしばらく、この世

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それは突然差し込んだ光のようだった

それは突然差し込んだ光のようだった

難病を持つ自分が、障害者メディアに関わるということは、なんというか、突然思いがけず差し込んできた光だった。

それまで、病気があることは、社会人として生きていく上での障害でしかなかった。再発を繰り返しても、普段は元気だし大丈夫だ、と言い聞かせてやってきたけれど、働きだしてから初めての再発(昨年12月)がきっかけになって「もうこれは、病気を受け入れざるを得ないな」という良い意味でのあきらめが出てきた

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ひきつづき、弱さについて

ひきつづき、弱さについて

「弱いのは悪いことじゃない」と本気で最近そう思うんだけど、親しい人にそれを話したら「でも、弱いままでいいと思ったらだめだよね」と言われて、そうなのか?うーん、となった。

「弱いのは悪いことじゃない」というのと「弱いままでいい」というのは、私の中ではまったく別のことだからだ。

何かが人よりできなかったり、人と違ったりすることが、社会の中で不利に働くとき、それは「弱さ」として機能しはじめる。ただの

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やめること

やめること

前回noteを書いた頃から色々と具体的に動いて、そのときに書いたようなことが、少しずつ実現できるかも知れない。

会社をやめる、と、それにともなうモロモロ6月に転職することが決まった。

障害者福祉に関する雑誌をつくる仕事をします。

私は難病と呼ばれる病を抱えていて、そのために何度もままならないことに直面してきた。認めたくなかったけど、その弱さとか生きづらさを受け入れたら少し楽になった。今度は

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弱さから始める仕事

弱さから始める仕事

新年度が始まった。

体調を崩したりはしたけれど、ひとまず、この一年間頑張った自分をほめたい。こんな私を柔軟に受け入れてくれた職場には本当に感謝している。その上で、やっぱり無視できない感覚を書き留めておきたいと思う。

自分事にできませんうすうす気づいてはいたけれど、今の仕事に対してモチベーションを保つことが難しくなってきている。

会社のやっていることには価値を感じるし、考え方にもある程度共感し

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小さな決心

小さな決心

昨年末の入院に始まって、色々と身体の不調が続き、気持ちもなんとなく沈みがちになっていた。今でも決して本調子とは言えない。私らしくもなく、つい後ろ向きなことを考えてしまう。大好きな人たちから少しずつ力をもらって、ようやく立ち直ってきたところだ。

そんなことがきっかけになって、今日、小さな決心をした。

それは、病気との向き合い方を変えるということ。

私は「難病」と呼ばれる、原因や治療法がよく分か

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踏んだり蹴ったり

踏んだり蹴ったり

2月から職場復帰したものの、週末には見事に風邪を引いて寝込んだ。インフルではないらしいけど、熱は39℃まで上がって、全身が痛み、昨日はうんうん言いながらひたすら寝ていた。風邪ってこんなに辛かったっけ。

こういうとき、一人暮らしだったら冗談抜きで「死ぬ」って思うんだろうなぁ。とは言いつつ、実家に甘えている私は温かいごはんにもありつき、こうして生きながらえている。

話は変わるけれど、職場に復帰して

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入院日誌|病と。⑨バカンスの終わりに

入院日誌|病と。⑨バカンスの終わりに

いよいよ退院が明日に迫った。
退院したらやりたいことを書いてみる。
完全に自分のためのメモ。

体力づくり
・毎日歩く
・家事をする
・人に会いに出かける

自己メンテナンス
・メガネの調整に行く
・髪を切る
・化粧の仕方を思い出す

料理
・つくりたいものから、つくってみる
・基本的なことを丁寧にやる
・レシピノートをつくる

書く・編む
・編集中のゲラを入稿する
・自分のエッセイを書く
・ライ

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入院日誌|病と。⑧本能のままに

入院日誌|病と。⑧本能のままに

入院27日目。あと3日で退院!

今日は友達に付き合ってもらって、新宿御苑を散歩した。

ひんやりした空気に、真っ青な空。太陽の下で、花々は光るように咲いている。スイセン、ロウバイ、寒桜、ジャノメエリカ。知っている花も知らない花も、ひとつひとつ見て回る。冬ってこんなに鮮やかだったのね。

***

その友人と会うのは2回目だったけれど、すぐに何かが通じ合った。彼女のことは全然知らないのに、出会った

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入院日誌|病と。⑦美しい人

入院日誌|病と。⑦美しい人

入院20日目。
退院の日が26日に決まった。あと10日。

職場に連絡したら「キリがいいので復帰は2月から」と言われ、ありがたいやら拍子抜けするやらである。

今日は大学の同期が会いに来てくれたので、友達についての話。

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同世代の友人と話していると、どうしても結婚や仕事の話になる。

そろそろ結婚しそうな人もいるし、転職を考えている人もいる。

26歳。みんなどこかの分岐点。

人生は容

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入院日誌|病と。⑥息を吐く必要

入院日誌|病と。⑥息を吐く必要

入院16日目。
薬がよく効いてくれたらしく、ようやく寛解(症状がほぼなくなって正常な状態になること)に達した。誕生日までには退院できそうだ。

でも、4人部屋の他のベッドには、もっと大変な人もいて、素直に喜べない。みんな色々あるのだ。色々。

そんな中でも、私はワクワクしている。

人生の動き出す音が、遠くかすかに聞こえる。

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初めて公の媒体に、文章を書いた。

ひっそり(?)ライター

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入院日誌|病と。⑤私は強くなんかない

入院日誌|病と。⑤私は強くなんかない

遅ればせながら、明けましておめでとうございます。

お仕事始まった皆さん、おつかれさまです。



入院11日目。
経過は順調。筋肉が落ちるのを防ぐため、歯磨きしながらスクワットしたり、電話しながら爪先立ちしたりしている。今日は「関係者以外立ち入り禁止」と書かれた扉の奥に非常階段を見つけた。病院内の床はバリアフリーのスーパーフラットなので、階段は貴重な運動源なのだ。「はたして、入院患者は『関係者

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入院日誌|病と。④一緒にいる意思

入院日誌|病と。④一緒にいる意思

入院6日目。
大晦日は日付が変わるまで紅白歌合戦を楽しみ、そのせいで昨日は見事に寝正月となった。今日は思いがけず外出許可をもらい、新宿の花園神社へ行ってきた。おみくじは大吉。なんだかんだ、しっかり年越しを満喫している。

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今日は、ずっと書いてみたかった「恋愛」の話をする。

恋愛について真面目に話そうとすると、「はあ、惚気ですか」と思われるんじゃないか……という自意識で妙に歯切れが悪くな

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