終わりに〜レイラインツアー2024
飛行機から眺める旅路
旅を終えた帰路の手段に選んだ飛行機の窓から、2023年3月と2024年9月に往復したレイラインツアーを辿りながら、旅路の街を見下ろしていた。
日本海を眺めて中国山地を横断する。今日は雲が多い。間から覗く地形を頼りに、散々眺めた地図を頭に浮かべて比べる。たぶん福井辺りで進路を変え、岐阜や愛知の山中を抜けた。天竜川の鹿島橋の上を飛んで、航路は太平洋上へと出て清水の美保の松原の上。向こうには富士山が浮かぶ。ああ、この道を走ったんだ。
郷里の伊豆半島を横切って、やがて東京湾が見えてくると、機体は大きく旋回して房総半島の上空を行く。あそこをスタートしたのは、もう一週間も前のこと。
7日間・47時間をかけて走った1080kmの距離を、僅か1時間半で反芻する。速ぇなぁ〜飛行機。
そんな風に【7.出雲大社】から【1.玉前神社】へと、巻き戻されるビデオのように、その瞬間の映像や想いが浮かんでは消える。
もう着陸は近い。ふと見やると、下に浮かぶ雲に飛行機の影が映り、その周りをシャボン玉のように虹が取り囲んでいる。今回の旅は、あちこちで虹や彩雲を見た。単なる偶然で片付けるには、あまりに頻度が多すぎる。旅の応援や歓迎そして祝福といった、これもきっと何かのサイン。神や視えない存在からのメッセージだと思っている。
羽田・品川、芭蕉の句
無事、羽田空港へと着陸。同席した愛守花さんとはここでお別れ。出雲のユウコさんと共に、沢山のスピリチュアルメッセージを繋いでくれた。ありがとうございました。
僕と手塚は品川駅へ向かう。飛行機用の輪行バックの肩紐がずしりと肩に重い。脚はもちろん、全身はそれ以上にさらに重い。
新幹線の改札へ着くと、外国人客が券売機に列をなしていた。パッと見でも40分待ち。あり得ない。どうせ時間はあるからと、東海道線に乗り、2時間以上掛かるのでグリーン車に座る。さすがに手塚は疲れたのか、飛行機内も電車でも別の席で眠りこけていた。彼にとってどんな旅だったのか?、2回のレイラインツアーをどんな意味に捉えたのか?いずれゆっくりと聞いてみようと思っている。
2023年は矢部君も含めた3人旅で、助さん角さんお供を連れた水戸黄門だ!なんて冗談めかしていたけれど、今回は2人旅。松尾芭蕉と弟子の曾良みたいだな、と思った。その芭蕉の句に
とある。今回のレイライツアー2024はまさにそんな心境でこの旅路を楽しみ、その喜びを五感で味わうことが出来た。都市部の渋滞&信号地獄や連日の熱中症のリスクも含め、目に見える風景も、山や海の匂いも、身体にほとばしる熱も、チェーンの音も、そして心に浮かぶ想いも…全てが風となって走る、自転車の爽快感そのものだった。
以前【自転車クロニカル】に書いた、幼き少年が手に入れた《自由の翼》は、まるで飛行機のように飛び立って、人生の折り返しを過ぎた大人をも新たな地平へと連れていってくれた。
おかえり三島駅
さあ、三島駅。ああ、帰ってきた。
到着早々、記念撮影を手塚に頼む。撮って欲しいのは後ろ姿と、Tシャツの文字。実は5日目の夜、洗濯を干していた時にサーヴェロのロゴとは別に、右腰にも英語があったことに気がついた。
『Never look back 』
この日は【5.元伊勢皇大神社】の区間で、旅のハイライトだったと言っていい。参拝の時にユウコさん=ヒカリからのメッセージに
とあった。だから『振り向くな!前向きに生きろ!』というメッセージはなんだか愉快だった。きっとこの旅で、過去を精算し《区切り》を付ける。ここから先はただ前を向いて進めば良い、そういうことだ!と物干し竿の前で一人頷いていた。
旅を終えてからの日々
起き上がれないくらいの疲労感に、3日ほど付き合った。出来るだけ記憶の鮮度が良いうちにこの旅のnote記事を書こうと、スマホに向かう。僕は脳内でもう一度走りながらその瞬間を描くので、1日分を書き終えると、まるで走り終えたかのようにグッタリとなる。なんとか書き終えた今、改めてこのレイラインツアーとはなんだったんだろう?と思い馳せている。
おそらくだけど、玉前神社にて《レイライン》という言葉に出会った時、人生を《区切る》線引き作業を始めた。2023年のツアーは決意を固めて、立ち寄る神社からエネルギーを頂いた旅。2024年は、それを返礼する事で循環を守り、区切りをつけた旅。
去り行く人。動けずにいた悲しみ。ここまで引きずってきた、己を自縄自縛する過去に別れを告げ、新たな人生をリスタートさせるための精算。こんな仰々しい大変な事をしなければ、それが出来ないだなんてなんとも面倒臭いヤツだ。潔い断捨離をせざるを得ないのは、抱えた亡霊が大き過ぎるからだろう。
そんな自分に対して呆れつつも、一方では尊敬を抱く。往復2200kmの自転車旅。簡単な事じゃないし、それは沢山の人達の支援や応援をも連れて来た。こんなにありがたいことはないし、素直に嬉しい。
人や物や色んな事を整理し、20年続けた《蕎麦宗》までも手放した。正直言って新しい人生の舞台は未知。これから出会う人、起こる事、はて?!どうなるのか。全く想像すらつかないけれど、ワクワクするのは確か。冒険みたいに愉しんだレイラインツアーの様に、これからの人生は、きっと楽しい。
…あれから3週間が経った。すっかりと黄金色に染まった稲穂を、ようやく涼しくなった秋の風が揺らす。長旅の追憶は、芭蕉のあの句をもじって運んできた。
おもしろや 今年の秋も 旅の空
終
ご支援や応援
多くの方々がご支援や応援を下さいました。名前を上げきれていないのが心苦しいですが、この場を借りてお礼申し上げます。
A クラウドファンディング(お札セット)
①尾池善彦(株式会社舞花・代表取締役社長)
②織田哲司(株式会社デイトナ・代表取締役社長)
③神戸さえ(ヴァイツェン サエ店主・株式会社エーワ代表取締役社長)
④栗原歩(株式会社栗原商店『伊豆河童』取締役)
⑤寺井 剛(株式会社東商会代表取締役社長)
⑥三浦尋一(株式会社ウェイサス代表取締役社長)
⑦橋村吾郎(医療法人ODC理事長)
B 全区間参加
①手塚博文
C 一区間参加
①安田在人(1日目・玉前神社)
②高崎芳文(同上)
③石井俊也(2日目・寒川神社)
④大岳誠(3日目・富士山浅間大社)*クルマサポート
⑤苣木麟太郎(同上)
⑥矢部周作(5日目・元伊勢皇大神社)
⑦藤原優子(同上)*クルマサポート
D ご支援
①神尾梁ニ 金一封
②鈴木小夜子 金一封
③蕎麦宗ご来店やnote購入にて、応援基金して下さった皆様方
④御園井智三郎(ミソノイサイクル代表取締役社長) マビックホイール・シマノクランク等の提供(無償貸与)
⑤成瀬ゆうこ リアルタイムセッション
⑥愛守花 リアルタイムセッション
E 応援
①小中秀子 沿道応援
②佐久間基成 沿道応援
③成瀬朗 沿道応援
その他、多くの方々が様々な形でご支援・応援・ご協力下さいました。
皆様、ありがとうございました。
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