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【1.玉前神社(千葉県一宮町) …レイラインツアー2024】

走行ログ

スタート地点・釣ヶ崎海岸

 三島駅から始発の新幹線に乗って品川駅へと向かう。千葉行きの横須賀線に乗り換えたのは7:30頃。その際にハタと気がついた。

『今日が祝日で良かった。』

というのも、輪行(=自転車を分解した状態で袋詰め)した大荷物は、東京近郊の朝のラッシュでは大ひんしゅくで、そもそも仕事に行く他の乗客達は、スシ詰め状態の車内に乗せてくれなかっただろう。
 が、祝日だったその日は千葉駅から外房線に乗り換えた時も人影まばらで、安心して自転車を運んだ。その日の朝は曇り空で気温が低い。にも関わらず、車内の温度設定は満員電車のままのよう。レーサージャージしか着ていない、肉襦袢も薄い僕らは冷え切ってしまった。それなりに鍛えて準備してきたので体脂肪は一般人より低い。

『寒いわぁ、あの5日目に比べたらマシだけどな』

5日目とは【5. 富士山・富士浅間大社(静岡県富士宮市) レイラインツアー2023〜祈りのご来光道】区間のことで、雪まで降ったうえに気温2℃の冷たい雨に12時間打たれ続けて260kmを走り抜いた過酷な一日だ。 
 一年半前のそんな記憶も前回の旅のゴールだった【玉前神社(千葉県一宮町)レイラインツアー2023〜祈りのご来光道】のある上総一宮が近づくにつれ、より鮮明になってゆく。そんな風に、同行する手塚博文と想い出話をするうちに東浪見とらみ駅へと着いた。

 驚いたのは急な雨で、無人の駅に降り立ったと同時に、ポツポツリと冷房で冷え切った身体を雨粒が叩いた。慌てて駅舎の屋根下に潜り込むと更に雨足は強く、いわゆるゲリラ豪雨。

『いやマジか!嫌だなぁスタートがこの雨の中だなんて』

やむを得ず、出発は遅れるけれど少々待つことにすると、15分ほどで止んだ。輪行袋から自転車を取り出して組み立てる。数百メートル走って曲がり角を抜け田んぼ道になると、路面は全く濡れていなかった。あの超局所的な雨は龍の歓迎なのか。不思議に思いつつも、今回のレイラインツアー2024のスタート地点・釣ヶ崎海岸へと到着。東京2020オリンピックのサーフィン会場で、砂浜に鳥居が立っている。
 前回は、集めて背負って運んだ8体×8セットのお札達を朝日に掲げる儀式を、ここでやった。あの日も曇り空だった。けれど、奇跡的に御来光の瞬間だけ晴れ間が覗いたのだった。オマケに鳥居の上には虹まで浮かんだ。 
 今回のゴール地点・出雲の稲佐の浜は、この時点で雨予報。一週間後だ、まだ変わる。きっとまた晴れる。1000km先のまばゆい夕陽の中でのフィニッシュを想像した。

『よし、行くか!』

砂浜を自転車を押して鳥居をくぐる。脳内にドラゴンクエストのテーマが流れる。今日の予定は神奈川県大和市。さて、どんな旅路になるのだろう

始発の新幹線で輪行
スタートは2023のゴール地点

玉前神社から船橋へ

 釣ヶ崎海岸から玉前神社はすぐそこだ。数年前に【チャリ鉄千葉編】にて訪れたこの神社でレイラインという言葉に初めて触れ、それらを辿るツアーを着想したのだった。ここから西の出雲大社までの七つのパワースポットが、春分と秋分の御来光を浴びて一直線上に並ぶという奇跡。世相はまだまだコロナ禍の制限の中で、自由な往来は敬遠されていた。社会に漂う閉塞感を打ち壊したい思いで、その冒険への挑戦をした。
 今回の旅にはそんな背負った想いはない。自身の娯楽が主だ。伊勢神宮で触れた陰陽思想を再現すべく、全てを《対》にしたいと言う考えはあった。だから、東の端にある玉前神社を初日に選び、秋分の日のゴール・出雲大社へと向かう。お札も、前回はお伊勢さんの内宮・天照大神を外宮・豊受大神宮に替えた。これを選んだことが、5日目のスピリチュアル体験に繋がったのだと思う。勿論、この時は想像すらしていなかったが。

 玉前神社の参道へと曲がると赤い鳥居が見え、懐かしいゴールシーンが再現された。前回は矢部周作を加えた3人で全てを走破した。だから今回は1人で走るつもりでいた。しかし手塚のたっての希望で同行を許し、2人旅となる。きっと彼にとっても意味深い復路となるのだろう。
 一年半前の参拝は賑やかだった。この区間を共に走った橋村吾郎氏、小中秀子氏と応援に駆けつけてくれた川野和義氏も一緒だった。人数が少ない方が機動性は高い。一方であの賑やかさもまた、捨て難い愉しさ。ありがたいこと。

『帰って来ました。また、旅が始まります。道中の無事を見守り下さい』

そう、神前に告げるとサッと参拝を済ませ、お札を受ける。雨のせいもあってすでに予定より30分押している。早々に自転車に跨り若い仲間と約束している船橋へと向かおう。

 国道128号。茂原駅を過ぎて左に折れ、県道14号を行く。少し行くと房総丘陵特有の緩い斜面が始まる。満身創痍だった最終日の前回とは打って変わって坂とは感じない。実際、前回6時間かかった日本橋までの80kmは3時間足らずだった。市原から国道357号へ入ると、片側三車線の快適な道は追い風で、さらにスピードが上がる。加えて追い抜かれた地元ローディに声を掛け、彼の後ろに着かせてもらった。おかげでとても楽チンな40km/h巡行。あっという間に千葉を過ぎ、遅れを取り戻して船橋へと着いた。
 今回はエアタグのアプリを活用して、僕が走っている地点を皆が分かるようにしてある。ここで合流予定の安田アルトもすんなりと落ち合うことが出来た。
 【ふなっしーが届いた】に書いた頃は高校生だった彼も、デザイン専門学校の卒業制作に忙しい年齢になった。シクロクロスバイクで興奮気味に現れた姿にあどけなさは残るものの、随分と大人になっていた。時間にして僅か30分ほどだが、東京へと向かう細道を道案内してくれた。去り際の言葉が僕らにはくすぐったくて、でもとても嬉しかった。

『ご一緒出来て光栄です。』

そんな彼に見送られて東京・五反田を目指す。次に合流予定の高崎芳文からLINEが入っていた。彼もまたエアタグで僕らの動きを把握してくれている。便利な時代だ。

https://note.com/sobaso/n/n4db97177b51b

船橋でアルト君がお出迎え

果たせた約束〜五反田駅から大和

 船橋から荒川を越えて東京都へと入るまでの国道14号線は、道が狭いうえに渋滞が酷く、せっかく取り戻した遅れを更に増やす格好だ。龜井戸辺りからは道幅も広く走り易くはなった。しかしながら、信号地獄が始まる。どうやってもスピードが上がらない。まだ初日。無駄な脚は使いたくないからのんびりと行くことにして、日本橋付近から皇居前に抜け国道1号で五反田駅を目指す。
 やがて、駅が近づいてくると赤いジャージ姿の男が手を振っている。高崎だ。

 高崎芳文。彼は僕が最も尊敬していた大学時代の同級生で、ハワイのアイアンマンなどにも出場したホンモノのアスリート。今は山男(登山)になっていて自転車からは遠ざかっている。レイラインツアー2023の時は予定が合わずに不参加だったが、今回は20年ぶりにサーヴェロを引っ張り出して一緒に走れることになった。
 学生時代は1992年。彼の背中に着いて走った自転車での鎌倉トレーニングが懐かしい。

『いつかまた一緒に走ろう』

そう言ってから果たせぬままに32年の歳月が流れた。走り始めてすぐに、彼の背中を追い抜いて先頭へ出た僕の目は潤んでいた。約束を果たせぬままに別れた人もいる。亡き妻のように死んでしまった人もいる。彼等の顔も浮かんだ。

『忘れかけている小さな約束も、思い出して果たしたい。宗さんに出会ってそう思いました』

と語ってくれたのは、今回もクラファンしてくれた尾池善彦氏だ。人生に、やり残した後悔は、少ない方が良い。そんなことを切々と想うよわいに僕らはなった。

『やっと果たせたよ!』

そう、高崎も喜ぶ。感慨深くようやく約束と思いを叶えた僕等は信号待ちの度に語らった。親しき同級生というのはつくづく良いものだな、と思う。

 丸子橋の袂では、前回の参加者・小中秀子氏が親子で応援に駆けつけてくれた。エアタグは本当に便利。前回は3時間ほど待った場所で今回はすんなりと来れた模様。
 前回この辺りはクラファンメンバーの橋村吾郎・新川敦子氏が応援に来てくれた時、急に追い風が吹いた地点。なんだかついこないだな気がする。その時に先頭を引いてくれた早野昌史は都合で急遽不参加となった。誰かが来るともう1人の誰かが来れなくなる。よくあることだが致し方なく、中々大勢の仲間が勢揃いとはいかないようだ。

 学生時代、僕も高崎も横浜に住んでいたので、今走っている中原街道こと県道45号に出てくる地名がいちいち懐かしい。横浜は坂の街。都筑区や青葉区はあの頃より開発が進み、畑や森だった丘は過密した住宅街に移ろう。だから、道は広けれど都市部並みに信号が多い。
 そのスタートダッシュが加わるので地味に脚が削れていることに気がついた。更に下り坂の先に信号が必ずあるのでブレーキを握る手まで疲れてくる。僅か30kmの道のりなのに、大和駅が遥か遠くに感じた。道路上に時折現れる案内板の距離表示はまやかしで、一向に辿り着かない気がした。
 ようやく国道467号を横切って、大和駅到着の目処が立ったので、応援に駆けつけてくれる予定のサイキックヒーラー愛守花あすかさんに連絡を入れた。彼女が、今回のレイラインツアーを完全なるスピリチュアルな旅にしてくれたことはいずれ語る。読者にはもう3日ほど待って頂こう。

 こうして無事到着した第一日目のゴール・大和駅前に、明日同行する石井俊也としなりも合流。高崎とはここでお別れ。お疲れさん。
 初日の区間は、沢山の人達が入れ替わり立ち替わる、ゲストの多い楽しい一日だった。

※【2.寒川神社…レイラインツアー2024】につづく 

32年ぶりの約束を果たす
中原街道の手塚と高崎
合流した石井と、サイキックヒーラー愛守花

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