サロメの断頭台(レビュー/読書感想文)
サロメの断頭台(夕木春央)を読みました。
新刊です。
夕木春央さんは、本格ミステリ界隈でいま最も注目されている作家さんのひとりでしょうが、同時に私としても最近デビューの作家さんのなかで特別お気に入りのうちのひとりです。2019年デビュー作の「絞首商会」以降、単行本はすべて読んでいます。
2022年の「方舟」が書店やメディアで話題になったのが記憶に新しいところです。
夕木さんの作品の系統としては、「方舟」「十戒」の現代を舞台にしたものと、デビュー作から続く大正時代を舞台にした作品群(登場人物が共通するのでシリーズといって良いと思います)の二系統が現状あり、「サロメの断頭台」は後者にあたります。
さて、その「サロメの断頭台」ですが、非常に感想をまとめにくい作品です。
まず、大正時代を舞台にした過去作と比べて、本作は人間の狂気の描き方という意味で毒気が強かった印象があります。このあたり「方舟」「十戒」の読後感にやや近いものがありました。
展開としては、絵画の盗作事件、贋作事件、そしてサロメになぞらえた連続見立て殺人が起こります。誰がやったのか(フーダニット)の関心は当然ありますが、一方でわかりやすい謎が中心にずっとあるというわけでもなく、奇怪な出来事の連続に「いったい何が起こっているのか」と眩惑されながら読み進めるワットダニット的な作品とも言えるかもしれません。
非常に複雑なプロットなのですが、それでいて犯人特定に至るロジックは極めて精緻で、かつ明快です。脱帽でした。
なお、以下は直接本作とは関係ない感想です。
モチーフとしてサロメが取り上げられていたので、読書中は、もう20年以上前になりますが島田荘司さんに大ハマリしていた頃に読んだ「アトポス」を思い出していました。
これもサロメでしたねぇ…。本当に懐かしい。
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