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夢から覚めた夏、

 地球に帰れる。この五日間一滴のお酒も飲んでいないのにずっとフワフワして居心地が悪い。この旅行は人生最悪の旅行だ。

「飲みなよ」

 彼は蓋のついたコップを持ってきた。

「ありがとう」

 トイレに行きたくない私は水を飲まずに浮かべて眺めた。こうすると丸くなって綺麗だ。

「窓を見て。もうすぐ月が夜になるよ」

 彼が窓を指差した。眼下に広がる緑色の月が徐々に暗くなっていく。

「月の裏側は砂漠が広がっててボゴボコしてるのね」

「緑化が進んでないからね。ウサギがもっと増れば暖まって月も住みやすくなるよ」

「あなたは月に住みたいの?私は地球がいいわ」

「僕は火星に行ってみたいなぁ。あ!見て!あの基地で火星に行く船を作るんだ!」

 彼が指差した小さな明かりが基地らしい。火星が好きな彼は何でも知っている。地球が好きな私は綺麗な水をつついて遊ぶ。すると彼がとんでもない事を口にした。

「この船の水はオシッコをろ過してるんだよ。すごい技術じゃない?」

 トイレもゴテゴテして不愉快なのにオシッコまで飲ませるなんて彼は私を愛していないんだわ。地球に帰ったら別れよう。

 そして、彼だけ火星に行って好きなだけすごいオシッコを飲めばいいんだわ。

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