テクニカル分析の正体
FXトレードのテクニカル分析とは何なのでしょうか。
一般的には、チャートから過去の値動きをチャートで表して、そこからトレンドやパターンなどを把握し、今後の株価、為替動向を分析するものとされています。
今回は、このテクニカル分析の正体について考察してみたいと思います。
1. そもそもチャートとは何か?
FXのテクニカル分析を主軸としてトレードを行っている方で、チャートを使用していない方はいらっしゃらないでしょう。
チャートとは、単純に図表・グラフという意味にすぎませんが、ここでは株価や為替通貨ペアの過去の取引価格の推移を表すものと定義することにします。
1-1. チャートの表示形式
FXトレードの世界では、実は国によってさまざまなチャートが使用されており、同じ価格推移であっても表示形式やその形態も様々です。
以下は日本人が考案されたとされる、ローソク足チャートという名前のチャートですが、日本のFX界隈ではこちらのローソク足を使ったテクニカル分析が99%を占めていそうです。(一部では平均足を使った分析をされている方もいらっしゃるようですが。)
ちなみに英語ではCandlestick Chart(キャンドルスティックチャート)と呼ばれています。
海外では鍵足チャートが主流という説もありますが、海外トレーダーのYoutubeチャンネルを複数見てみましたが、全員ローソク足チャートを使用していましたので、日本以外のトレーダーでも、見やすさの観点から主にローソク足チャートを使用していると思われます。
ちなみに、サンプルが少なくて恐縮ですが、私が適当にみた海外FXトレーダーのYoutubeチャンネルでは全員がTradingviewのチャートを使用していました。
1-2. チャートの表示の違い
チャートは過去の取引価格の推移を表したものという定義をしましたが、過去の取引価格は当然使用するブローカーによって異なります。
これは、どういうことかというと、FXブローカーA社とB社では、カバー先や約定判断が当然異なりますから、1ドル100.00円で約定する会社もあれば、1ドル100.02円で約定する会社もあるということです。
そして、これはチャートの形状の違いとなって現れることになります。
大抵の場合、FXブローカーは複数のカバー先がありますので、チャートの大まかな形は同じようになりますが、指標発表時などのシビアな場面であったり、年末年始や日本の早朝帯のようなカバー先の金融機関が閉まっているような時間帯の場合には、個々のブローカーによって約定価格が全く異なるということが起こり得ます。
したがって、1ドル100.00円という絶対防衛ラインがあったとして、これをA社を使っているトレーダーは死守した、と思っていたところ、B社を使っていたトレーダーは、微妙に抜けた!と判断が分かれる可能性があるということです。
1-3. タイムゾーンによるローソク足表示の違い
Tradingviewではそのようなことは確認されていませんが、MT4を使用されている方については日足が6本存在するという話を聞いたことがあるかもしません。
これは、海外のタイムゾーンと日本のタイムゾーンを無理やり合わせたときに発生する特有の問題です。
すなわち、世界標準では当然日足は5本なわけですが、日本の金曜の深夜を回ってもニューヨークはまだ動いているので、それを取り込むために日足が6本になるという現象が起こっていたことがあります。
現在は大半のブローカーで改善されて5本表示なっているようですが、ローソク足の本数が異なるということで、ローソク足の本数を数えたり、インジケーターを使用している方にとっては大きな問題です。
自分の使用しているチャートがどういう設定になっているのかということは、使用されているブローカーごとに異なると思いますので、個別にチェックが必要でしょう。
2. テクニカル分析を行うためのチャート
2-1. どんなチャートを使うべきなのか?
さて、チャートの表示が人によって異なるということが、なんとなくわかったところで、次はトレードをするために、そのチャートを分析する必要性が出てきます。
その際に、我々個人FXトレーダーが使用するべきチャートは一体どういったものでしょうか?
もちろん、絶対的な正解はありませんが、私の考えは以下の通りです。
テクニカル分析は、チャートを基にトレードの判断を行うものですから、ラインを抜けたのか・抜けていないのか、チャートを基に算出される特定のインジケーターのサインが非常に重要な判断材料となります。
そのため、より多くの人が、そのラインを抜けたと判断した場合は、抜けたということになりますし、多くのトレーダーが抜けていないと判断する局面であれば抜けていないと判断すべきだと思います。
それは、FXの価格が、プレイヤー個人のトレードによって動かせる性質のものではなく、あくまで巨額の資金の流出入によって形成される性質のもの、すなわち資金的な多数派の考えが正解な世界であるからです。
2-2. 為替取引量からの示唆
こちらのロイターの記事によると、1日あたりの為替取引量は7.5兆ドル、すなわち1ドル140円換算で1,050兆円の取引高ということです。
このうち、ドル円の取引シェアは13.2%ですから、単純に当てはめると、1日あたり139兆円の取引が行われている計算になります。
ちなみに、日本取引所(東証)の取引高と比較してみると、その違いは一目瞭然です。
ドル円単体の139兆円に対して、日本取引所のすべての株式取引量はたったの3.8兆円(それでも大変な金額ではありますが。)しかありません。
ここから読み解かれることは、意図的に為替相場を動かすことは極めて難しいということであり、一時だけでも動かせるものがいるとすれば、それは巨額資金を運用する機関投資家か、そもそも約定価格を操作できる為替ブローカーということになります。(この話は追々別記事に記載します。)
したがって、我々個人投資家がトレードで収益を上げるためには、これらの機関投資家やそれ以外の小口投資家の集合体がどのように相場を分析し、為替相場を上か下のどちらに動かしたいのかということを先読みして考える必要があります。
そのためには、独りよがりのチャートを使うのではなく、最も多くの人が使用し、意識するラインが皆と同じように引けるチャート(価格推移の記録)を自らも使用する必要があるというのが私の結論です。
3. テクニカル分析とは何なのか?
3-1. 実際に分析してみる
テクニカル分析とは、繰り返しとなりますが、チャートから過去の値動きをチャートで表して、そこからトレンドやパターンなどを把握し、今後の株価、為替動向を分析するものと定義しました。
個別にはダウ理論やグランビルの法則など、基礎となるロジックがありますが、ここでは適当なチャートパターン(チャートの形)を当てはめる形で、ざっくり分析してみたいと思います。
使用するのは、冒頭に登場した以下の日足チャートです。
こちらチャートを基に、雑で恐縮ですが、超適当に高安値を記載してみると、チャートパターン的にはWトップの形に見えてきますね。
マルチタイムフレームなどの細かい話は抜きにしていくと、ダウ理論的には高値切り下げでネックライン割れとなると、下落トレンドの開始ですので、ここはショートしていく場面です。
実際、ここでエントリーしたとすると、すんなりとは落ちてくれませんでしたが、その後は4月10日に微妙な上髭をつけつつも、下落トレンドを継続しているところです。
ほぼ建値のあたりですが、手じまいする理由は見当たりませんので、引き続き下落を期待してホールドしている状況かと思います。
今回は単純なチャートパターンを当てはめてみましたが、このように、テクニカル分析を用いれば、過去の値動きを基に、トレード戦略を立てることができるのです。
3-2. 何にでも使えるテクニカル分析
さて、超適当なテクニカル分析を行ったところですが、これがなんのチャートだったか記載するのを忘れていました。
先ほどのチャートは、実はこちらのサイトから恐縮ながら勝手にお借りたのですが、実は気温の推移です。
(実は左軸が気温で右軸は湿度なのですが左軸に数値があると不自然なので湿度のみ残しました。)
素晴らしいことに、テクニカル分析を用いれば、気温だろうが株式だろうが、為替だろうが、チャートの形自体をもってして、その後の推移を予測すること自体はできそうです。
気温であっても、数値の推移であることには変わりありませんから、ローソク足の形へ置き換えることができれば、分析自体は可能だということです。
しかし、4月の気温が17~18度で、今後5月6月となると、チャートはどう推移するでしょうか。
日足レベルのトレードですから、スイングか長期のトレードスタイルでしょうから、夏が近づくにつれて損切トレードになりそうな予感しかしませんね。
3-3. テクニカル分析の正体
しかし、株式や為替でテクニカル分析が多用される一方で、気象予報士がテクニカル分析で明日の気温を予想していない(ですよね?)のは何故でしょうか。
本当にテクニカル分析が有用なのであれば、気温もチャートを基に分析されても良いはずです。
その答えとして、気象予報士が気温をテクニカル分析で予想しないのは、そもそもテクニカル分析とは、解釈は色々あるのでしょうが、人間の心理を分析するための手法だからではないでしょうか?(実際には各地の観測データを基に過去の事例との比較・計算が行われているようです。)
すなわち、テクニカル分析は気温のような人間の感情とは関係なしに推移するようなデータを分析するための手法ではない、ということです。
チャートに表される取引価格の推移は、あくまで人間(や人間に作られた取引ツール)の思惑によって形成されたデータであり、そこには人間の意思があります。
損したいと思うトレーダーはいないでしょうから、きっとそのトレーダーは、「ここで売買すれば儲かる」と思っているはずです。
実需筋であれば、今後円安がますます進む見込みなので、石油の元売り企業は中東から石油を買うために、早めに円をドルに100億円分換えたいと考えるかもしれません。(実際にはオプションなどを組み合わせるため、そう単純ではないのですが。)
そうした個々の考えに基づく一つ一つの取引の記録がチャート上に現れてきます。
そういった思惑による価格変動があると、それに追随した売買差益を狙うトレーダーの新規注文や、決済注文が新たに入り、価格が上下に増幅されることになります。
そして、そういった売買差益を狙うトレーダーは、実需筋と異なり、チャート上に必ず一定の損切ラインを設定します。
そして、そのトレーダーはそれぞれ見ている時間軸が異なります。1分足や5分足のスキャルピングだったり、1時間足だったり、4時間足だったりするわけです。
ここを割れたら、トレンド転換が起こるというポイントを絶対防衛ラインとして、損切ラインを設定するのですが、実需による取引や機関投資家の意図的な大口注文により、そのラインを割ると、そういった損切注文を巻き込んで、一気に逆に価格が動くということが起こります。
そして、その絶対防衛ラインは各トレーダーによって異なりますが、ごく稀に、そういったポイントが重なるところがあるように思います。
テクニカル分析の正体とは、こういった長期・中期・短期それぞれの自分の取引スパンに応じた絶対防衛ラインの集合体、すなわち多くの市場参加者が意識するポイントを見つけ出すための分析、といえるのではないでしょうか。
4. まとめ
多くの人が意識するポイントを死守できれば、当然反発しますし、そのポイントを割ってしまった場合には、損切注文を巻き込んで、さらに値が動く。そういったポイントを、過去のチャートを分析することで見つけ出し、自身のトレードに生かしていく。
それがテクニカル分析を身に着けることの意義だと思います。
一言でテクニカル分析といっても、その種類は多岐にわたりますが、どういった種類のテクニカル分析を採用するかという観点では、その趣旨に立ち返れば、「多くの人が意識し、有用であると判断され、実践している理論・トレード手法」を自身も採用すべき、ということは明らかであります。
なぜならFXというゲームは、資金量の多い多数派に賭けるゲームであるからです。(大切なのは資金量であって、人数ではありません。)
資金量の多い多数派は、どう行動するのか?ということを読み取るための手法がテクニカル分析であり、それこそがテクニカル分析の正体であると考えています。
次回は、取引通貨ペアの選択というタイトルでお送りいたします。
皆様の参考になれば幸いです。
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