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取引通貨ペアの選択に関する考察

私が参加させていただいているFXのコミュニティでも、使っているFXブローカーと並んで頻出の質問が、「どの通貨ペアを監視していますか?何を選択すればよいでしょうか?」というものです。
もちろん、私も同じ質問をしたことがありますし、儲かっていそうなトレーダーが何の通貨ペアを取引しているのかは、他人の職業が気になるのと同じ感覚で関心の対象です。

今回は、取引すべき通貨ペアについて考察してみたいと思います。


1. 取引通貨ペアとは?


まずは基本的なところですが、通貨ペアとはなんでしょうか。

通貨ペアとは、読んで字の如く、取引を行う二つの通貨の組み合わせのことです。

当たり前すぎてわざわざ確認する必要もありませんでしたね。
たとえば、USDJPYといったように、米ドルと日本円の組み合わせのことです。ドル円などと言ったりします。

そしてこのUSDJPYの場合のUSDを基軸通貨、JPYを決済通貨と呼び、1ドルを基準として、取引をする際に1ドルを買うのに2023年8月29日現在の為替レートでは、約145円支払う必要がある、ということをドル円レート=145円と表すことができます。

FXの取引を行う際には、株式の銘柄選択と同じように、どの通貨ペアを取引するかということを選ばなくてはなりません。

ですが、何でもよいというわけではなく、取引通貨ペアの選択はトレーダーに与えられた数少ない選択肢なのですから、慎重に検討しなければなりません。

2. 取引すべき通貨ペアの考え方


では、我々FXトレーダーが取引すべき通貨ペアはどういう観点で選べばよいのでしょうか。

答えは単純に、儲かる可能性が高い通貨です。
儲けたいがために、訳わからんチャート分析やトレード練習を寝る間も惜しんで行っているわけですから、なるべく儲かりやすい通貨ペアを選択すべきなのは当然のことです。

では、儲かる可能性が高い通貨とはいったい何なのでしょうか?

私の結論は、、、

テクニカル分析が有効に機能して、なおかつ、取引コストが安い通貨ペア

というものです。

2-1. テクニカル分析が機能する通貨ペアとは?

別記事になりますが、以下の記事でテクニカル分析の正体というテーマで考察をしておりますので、よろしければご覧いただければと思いますが、私はテクニカル分析とは、資金的多数派の絶対防衛ラインを見つけ出すことであると結論付けています。

別の言い方をすれば、特定のラインで踏みとどまった場合には反発し、それを割った際には一気にレートが進むような注文が集中するポイントを探し出すのがテクニカル分析だと考えています。

では、注文が集中するためには、何が必要でしょうか?

答えは単純です。

多くの取引参加者(注文を入れているトレーダー)が必要、ですよね。

これが、テクニカル分析が機能する通貨ペアという考え方の肝だと思っています。

2-2. 取引通貨ペアのシェア

こちらのパイチャートをご覧ください。
若干古いですが、オアンダジャパンのウェブサイトに掲載されている日本の店頭FX取引(日本のFX業者)の取引通貨ペアのシェアが掲載されています。
おそらくこの傾向は現在も変わっていないでしょう。

出典:オアンダジャパン

これによれば、
1位: USDJPY
2位: GBPJPY
3位: AUDJPY
4位: EURJPY
5位: EURUSD・・・
と続いています。

日本の店頭FXの統計データだからでしょうか?
ポンド円や豪ドル円など、クロス円通貨が上位に出てきています。
高金利円キャリートレードを実践している影響か、EURJPYが豪ドル円に比べてシェアが低いという点も興味深い点です。
そして何より、注目すべきはドル円が一位なのはさておき、EURUSDのシェアが5位に甘んじているという事実です。


とある漫画から拝借

この通貨ペアの選択を見るだけで、日本のFXトレーダーが勝ててない臭いがプンプン致します。

何故か?

それは、為替取引がグローバルな取引であるという視点が、完全に抜け落ちてしまっているからです。

FXのマーケットに参戦しているのは、何も日本人だけではありません。
世界各国の金の亡者が、他人の金を奪うために日々合法的な略奪行為を繰り広げているのです。

では、世界の取引通貨のシェアを確認してみましょう。
こちらです。

出典:国際決済銀行(BIS)のデータを基にオアンダジャパン作成

さっきと全然ちゃいますねw
先ほどの日本の取引通貨ペアを再掲しますので、見比べてみてください。

出典:オアンダジャパン(再掲)

日本人に大人気で2位にランクしていたポンド円すらその他14%の中に丸められてしまっている始末です。
なおここで登場するUSDCNYですが、データ元が国際決済銀行であり、FXブローカーの取引データではないことに注意が必要です。

中国元は為替取引に制限がありますので、FXで中国元を取引できるブローカーは限られており、ほぼ実需であると推察されます。


ところで、当たり前の話で恐縮ですが、世界の決済通貨の基軸通貨はドルです。
したがって、一部の国で不穏な動きはあるものの、例えば日本がクウェートから石油を買ったりする際には、基本的にはドルで決済されることになります。

それは、ドルが世界で最も信用力のある通貨だからであり、クウェートが日本円で決済代金をもらっても、日本から買うものがなく、日本円の使い道がないからです。
また、日本としても、石油の代金をクウェートに払うのに、クウェートディナールとかいう謎のエキゾチック通貨を調達するのは非常にコストがかかりますし、何よりそんな聞いたこともない通貨を大量に抱えるのは、カントリーリスク・信用リスク・流動性リスクが大きすぎて不可能です。

ですから、実需の世界の為替市場における取引は、基本的には米ドルが絡むドルストレートの通貨ペアがメインストリームです。

そして、市場参加者が多いということは、注文の集中が発生するようなポイントが現れやすく、テクニカル分析が効きやすいということですから、多くのテクニカル分析を用いるFXトレーダーもそれに準じた通貨ペアを選択しているだろう、ということを理解する必要があります。

3. ドルストレートと合成(クロス)通貨


ここで、ドルストレートとクロス通貨という概念を説明させてください。
ドルストレートとは、基軸通貨であるドルを含む通貨ペアのことです。
これはドル円も含みます。

対して、合成(クロス)通貨とは、ドルを含まない通貨ペアのことを指しています。
たとえば、EURJPYやGBPJPYのような通貨ペアのことです。

クロス通貨の問題点は、上記パイチャートのシェアの通り、クロス通貨に注目している人が非常に少ないという点です。
これは、前述の通りテクニカル分析を重視する、我々FXトレーダーにとっては致命的な問題です。

例えばEURJPYのケースでは、EURを対USDで計算し、計算結果からUSDの対JPYでの価格を算出したものがEUR/JPYです。
計算式は以下の通りです。

EUR/JPYのレート=EUR/USDレート×USD/JPYレート

これは、実際の為替取引を忠実に再現した計算式となっており、EURから円にインターバンク市場で両替する場合には、基軸通貨を経由して、EUR→USD→JPYのように転換されるのです。

そして、我々にとってやっかいなのは、合成通貨はドルを間に挟むことによって、EURのドルに対する価格変動と、円のドルに対する価格変動の両方の影響を受けてEURJPYの価格が決まるということです。

それは、EURJPYという通貨ペアであれば、EURJPYを通貨ペアとして取引しておらず、かつEURJPYのチャートも見ていないEURUSDのトレーダーやユーロと円それぞれの通貨を実需で必要とする取引に、価格形成が影響される、ということを意味します。

大口投資家がドル円で大量のショートを行った結果、円高に振れ、それによって、ユーロ円もユーロに対して円高に振れる、ということが起こり得ます。

例えば、1ドル=1ユーロ=100円だとして、岸田総理の政策に絶望した日本人の怒りの円売りによって、ドルとユーロの相対価値が変わらない場合を考えてみましょう。
この場合、ドル円が80円に振れると、まったく関係ないユーロ円も80円になることがわかります。
なぜなら、1ドル=1ユーロですから、1ドル=80円=1ユーロです。

この事実から導き出される懸念点は、クロス通貨は、そのチャート上で引ける重要なラインで反発したりすることはなく、逆にラインを抜けても一気に価格が伸びないのではないか?ということです。

なぜなら、その合成通貨の価格推移に影響を及ぼすような大口市場参加者は、別にその合成通貨に影響を及ぼそうと思って取引しているのではなく、あくまで自国通貨とドルを取引したと思っているだけで、その合成通貨のチャートを見ていない可能性が高いのではないかという推察ができるためです。

残念ながら、これに関しては為替取引がその個々の取引の詳細を分析できない性質のものである以上、だれにも断言することはできません。
あくまで可能性の話です。

しかし、そういった可能性がある通貨ペアに、虎の子のマネーを投じるべきかというと、いささか疑問に感じることも事実です。

4. 取引コストについて


さて、合成通貨については、そのチャートを見ている人が少ないうえに、そもそもそのチャートを見ていない人の取引に影響される可能性がある通貨であることが推察されました。

では、私が考える取引すべき通貨ペアのもう一つの要件である、コストについて検討してみたいと思います。

FXトレーダーが儲けるためにトレードを行う以上、取引コストについては無視できるものではなく、安全性や取引の安定性と並んでブローカー選定のための最も重要な指標でもあります。

以下は海外口座を利用する方の間で大人気のXMのメジャー通貨(ここではドルストレートと同義)の取引コストです。

出典:XMトレーディング

多少例外はありますが、概ねオアンダのグローバルの取引通貨ペアのシェアの順位と比例してスプレッドが高くなっているように見えますね。

続いてマイナー通貨ペアです。

出典:XMトレーディング

上から順番に掲載してみましたが、全部は載せきれないのでよろしければご自身で確認いただければと思いますが、上からざっと見ただけでも、合成通貨の取引コストはドルストレートのそれと比べて高いのがお分かりいただけると思います。

ドルストレートが1回の取引である一方で、合成通貨はドルを挟んだ2回の取引の塊だと理解できれば、コストが高いのはある意味当然です。
マイナー通貨になればなるほど、流動性も低く、ブローカーのリスクも上がりますから、必然的にコストは高くなります。

3大通貨のうちの2つを構成する主要通貨の組み合わせであるはずのEURJPYですら、3.2pipsで、ドルストレートのどの通貨ペアよりも高いです。

あれ。たった1pipsくらいでしょ、と思いました?
ですが、3.2pipsというスプレッドは、最安値のEURUSDのスプレッドに比べてEURJPYは52.3%も高いのです。

日本の2023年6月の消費者物価指数(CPI)は生鮮食品も含む全体の指数が前年同月比3.3%です。

たったの3.3%ですが、生活が苦しくなったと日本のニュースでの報道を見ます。
まぁ、テレビの内容はオワコンなので95%割り引いて考えなければなりませんが、平均して3.3%なので、モノによっては10%程度の価格が上がっているものもあったりするはずです。

それは、例えば月30万円の支出があった人が、3.3%のインフレの影響で単純計算で前年に比べて9,900円支出が増えるのと同様に、FXトレードで年間ドル円で取引コストを30万円支払っているトレーダーがいたら、ユーロ円にすべて切り替えた場合には45.7万円、すなわち15.7万円も多く手数料を支払わなければならないことを意味しています。

たった1pips、されど1pipsです。
ちりも積もれば山となる。

我々賢人派は、トレード回数がさほど多くありませんので、スキャルパーほどの影響はないとはいえ、収益を上げるためにトレードをしているのですから、やはりコストは安いに越したことはありません。


余談ですが、仮想通貨の価値を信じ切れていないという点は別にして、私が仮想通貨をトレード対象にしていないのは、ここに理由があります。
マイナーな仮想通貨になればなるほど、とんでもない取引コストがかかります。

仮想通貨は、現時点で決済通貨としての価値が認められない以上、その価値を信じられる人が死ぬまでホールドする性質の金融商品であって、トレードで儲けるために売買を繰り返す性質のものではないと思います。
(旧コインチェックが顧客資産を流出させた際に、普通であれば一撃倒産するような事案であるところ、460億円もの手元キャッシュを活用して顧客に損失補償を行えたのは、それだけ取引コストが高く、短期トレードを繰り返せば繰り返すほど業者が儲かるからであり、仮想通貨のボラティリティに惑わされた顧客の資産が高額な手数料で棄損していたことの証左です。)

5. 結論


では、最終的に「通貨ペアは何を選択したらよろしいでしょうか?」という問いに対してはどのように答えるべきでしょうか。

私の結論は以下の通りです。

ドルストレートの通貨ペアを、シェアが高い順に監視できる分だけ監視すればよい。

です。

候補としては上から順番に

  • EUR/USD

  • USD/JPY

  • GBP/USD

  • USD/CAD

  • USD/AUD

  • USD/CHF

  • (USD/NZD)

あたりだと思います。
NZDは一応メジャー通貨にカウントされるので、一応最後に付け足しております。

USD/CHYはそもそも、取引できないでしょうし、USD/HKDについては、香港ドルは米ドルとのペッグ制が敷かれていますので、両者の間では、ほぼ為替レートの変動がありません。
いずれの通貨ペアも、FXでの取引というよりも実需での取引の存在感が大きいということかと思いますので、監視通貨ペアにはなり得ないでしょう。

監視できる通貨数に関しては、どの程度丁寧に相場を見るスキルセットがあるかにもよるので、何とも言えません。

賢人さんですら、何通貨も見れないとおっしゃっておりましたので、どんなに頑張っても、上記の通貨ペアあたりが限界だろうと思います。

私自身は上記の7通貨ペアをウォッチリストに載せていますが、やはり基本はポンドドルまでの主要3通貨ペアです。
ですが、残念なことに見逃しトレードも多いので、本来であればそんなにたくさんの通貨ペアを監視できるレベルには至っていないのだと自覚はしています。

ですが、トレードチャンスを増やしたいという想いと、そんなに監視できるわけないのだから、減らしたほうが良いという葛藤に常に苛まれているところです。

ただ、一つ個人的な体験で言えることは、勝てるトレード技術が身についていないうちは、監視通貨ペアが3通貨ペアでも7通貨ペアでも、30通貨ペアでも勝てない、という悲しい現実です。
自分のことを棚に上げて書いていますが、下手糞なうちはトレード回数が増えたところで資金は減る一方ですし、うまくなれば監視通貨ペアが少なくとも賢人手法であれば十分な利益を上げることができると信じています。

おそらく練度が高まれば高まるほど、一枚のチャートを分析するために要する時間が増えるので、たくさんの通貨ペアを監視するなんて不可能!というのが稼げるトレーダーの感覚なのだと推察します。
上手いトレーダーほど、頻繁にラインを引き直したり、分析も緻密でしょうから。

そういう意味では、7通貨ペアを一応見ている私は、その程度のレベルなのだとご理解いただけるところと存じます。

6. 最後に


最後に、パイチャートの出所であるオアンダジャパンの結論部分を転記してこの記事を締めたいと思います。

このように日本と世界のFX取引のシェアを見ると、日本人のFXトレーダーと世界のトレーダーの取引している通貨ペアには偏りがあるのが確認できます。

具体的には、日本人のFXトレーダーは自国の通貨であり、一番親しみやすい通貨である円の取引が多いのに対し、世界では、ドルを中心にした取引が主流となっています。

どちらが一概に利益を出しやすいというのはありませんが、円絡みのチャートばかり見ているのと、世界中のトレーダーが見ているドルストレートのチャートを見て分析するのでは、為替相場の見え方が変わってくるかもしれません。

OANDAのお客様の場合はユーロドルやポンドドルといったドルストレートを見ながら取引をしている方が比較的多いようですが、これまで、円絡みの通貨の動きばかりを見てうまくいかなかったという人は、ドル中心で為替相場を見ると、これまで見えなかったものが見えてくるかもしれません。

オアンダジャパン

世界を代表するFXブローカーであるオアンダ様は、口が裂けてもお客様に失礼な事は言えませんが、本音ではこう言いたいのです。

「お前ら日本人は合成通貨なんか取引しているから儲かってないんだよ」、と。

以上、何らか皆様の参考になれば幸いです。


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