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こちら世界制作委員会 #シェアードワールド

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#500文字小説

「コーヒーメーカー」

「コーヒーメーカー」

グビッ、グビッと喉を鳴らして飲み干したコーヒータンブラーを見つめる。
(もう一杯!)

席を立ちコーヒーメーカーまで移動する。
スイッチを入れるとガリガリと豆が削れる音と、
ほのかにフレグランスが鼻腔を刺激する。
この豆の香りが好き。
目を閉じて包まれる時間。

豆から削るコーヒーメーカーを手にしたのは、友人の勧めがあったからだ。
興味はあった。

それでも中々、買おうとは思わなかった。
旨いコー

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【超短編】奇跡

確かにその光景を目撃した。吉谷さんは目の前で、ペットボトルの水をコーヒー色に変えて見せた。種も仕掛けもわからない素敵な手品に拍手を送ると、吉谷さんはため息をついた。
「信じてないんでしょう」
「すごいよ、どうやってやったの?」
「この水、飲んでみて」
吉谷さんは先ほど店員が置いたグラスを示す。ペットボトルの色水の方を飲めと言われるかと内心穏やかではなかったので、話がわからないなりに安心した。

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【超短編】許されている

「それ、もしかして」
カウンターで隣に座った若い女は不躾に尋ねる。
「コーヒーだよ」
女は目を見開いた。
「まさか。初めて見た」
「飲んでみる?」

初めは煙草だった。次に酒が嗜好品禁止法の対象となり、数年後にはコーヒーと砂糖が禁じられた。元々国内での栽培は少なく、国内産の蒸気茶葉煙草やヘルスケア甘味料へと移行したため、医療費の削減による莫大な国益となった、と教科書には載っている。目先の税収より国

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