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石橋叩いて渡らなかった私の、新卒での一人暮らし

昔からチャレンジすることが苦手な子どもだった。友達の家に遊びに行って、マンション入り口で工事をしていて入れず、家に帰って親に泣きついたこともある。
とにかく未知のもの、どうなるかわからないものが苦手だったし、できるだけ避けていた。

そんな私が新卒で、住み慣れた町ではない知らない場所で、初めての一人暮らしをすることにした。
あの選択をしたから、未知のことに立ち向かう胆力が付いたと思う。

未知へ飛び込む

大学を卒業する年の3月、私は少しばかり焦っていた。求人募集が遅い仕事を志したとはいえ、あまりにも求人がない。少しばかりあったものに応募して受からなかった。

これは、来年度から引き続き勉強させてもらうのもありか、そうして公務員試験を受けたり、車の免許を取ったらいいのかもしれない。
そんな風にこの3月の就職がダメならダメで、と言い聞かせて過ごした。
でも今思い返すと、私なんてどこにも必要とされないんだ、と思うのをどうにかなだめていた。

そこからたまたま3月上旬に求人が出ていた職場に応募、面接で頭真っ白になり、これはまたダメだと思った──が、採用が決まったと連絡が来た。まじかあれで? とすごく驚いた。
もはや泊まりでなく面接に行ける場所ならいいと思って受けていたので、地元ではない。働くとなればそこの町に住むことは折りこみ済み。

はじめての社会人で、しかも一人暮らし、知らない町。
めちゃくちゃ未知のてんこもり。それまでの私だったら、先に予想して面接すら受けなかっただろう。
ただ、私なんて社会では必要ないのかもしれない、と思っていて。それでも面接を受けてみようとしたときに、決めていた。

こんな私でももし採用されるなら、知らない町だろうと来よう、と。

運を天に任せる気持ちでそう決めていたので、採用の連絡をもらってすぐ覚悟ができた。新卒で一人暮らし、してみようじゃないか!!!
既に3月下旬で時間がなく、慌しく家を決め、家電・家具を買い、必要な手配をして…とくよくよ悩む時間もない。
あっという間に、未知の世界、社会人一人暮らしに飛び込むことになった。

できることを増やす

それから十数年。いまだに未知のことは怖い。
石橋叩いて渡らないで済めば、どんなに楽かと思う。
本当は家にいたいし、好きなことだけしていたい。
いまだに地元に愛着があって、戻って楽しく過ごしたい。

でも、社会人になりたての数年間、未知に飛び込んで右も左もわからず、上司の言葉に振り回されて苦しんだ日々を、私はどうにか越えてきた。
家のことでは、自分が家事をするしかないという感覚が身につかず、ふとやらずに済ませて後悔する…なんてことを繰り返し、今では当然のように自分がやるものだと捉える家事が増えてきた。

未知にどうにか取り組んで、できることを増やす。
そのやり方を前よりは知っている。

未知なものにびっくりしても、そのまま立ち去らず、踏みとどまるやり方を知っている。
そうしなければ、できることが増えないことも知っている。

できることが増える。今までより自由になる。
その手ごたえを感じられたときの、喜び。

未知へ飛び込むことは怖いけど、できることが増える喜びのほうがちょっとだけ上回るから、きっと私はまた未知へ飛び込むんだろう。

#あの選択をしたから

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