見出し画像

#8 今に感謝して生きていこうと思った『i』(著:西加奈子)を読んだ感想

2023年は、まだ読んだことがないけど気になる作家さんの作品も積極的に読みたいと思っています。
その中の1人が、西加奈子さん。

今回読んだのは『i』

たった一文字のタイトルが気になったのがきっかけでしたが、存在意義について考えることがある僕にとって響きました。

まさに今読んで良かったです。

あらすじ

シリアで生まれた少女は、アメリカでダニエルと綾子夫婦の養子となり、アイと名づけられる。両親の深い愛に包まれながらも、その環境をただ恵まれたものとして受け入れることができず、アイは孤立感を深めていく。その後、日本へ移住したアイは、高校の入学式の翌日、数学教師の「この世界にアイは存在しません。」という言葉に、強い衝撃を受ける--。

ポプラ社

感想

読了後にまず思ったのは、

今ここにいることに感謝して生きていこう。

『i』は、存在意義アイデンティティについて問われています。

アメリカ人の父ダニエルと日本人の母綾子から迎えられた主人公のアイは、シリアで生まれた養子。
高校の数学教師の「この世界にアイは存在しません。」という言葉に囚われ、幼少期からのことを含めて自らの存在意義を問い続けます。

大切な友人やパートナーとの出会いにより、次第に「ここにいてもいい」ということを実感します。
しかし、その後も様々な困難があり、気持ちが揺れ動きます。

その度に出てくる

「この世界にアイは存在しません。」

この言葉を見ているうちに、自分の存在意義についても問われているような気がしました。

実は僕も程度の差こそありますが、アイのように存在意義について考えることがよくあります。

東日本大震災の時もでしたが、災害や事件で誰かが亡くなるニュースを見ると、自分が生きていることが不思議な感覚になったり、何も悪いことしてないのにどうして?と思ったり。

また、誰かと比較して「なんで自分だけこうなんだろう」「何のために生きているのか」と悲観したり。

でも、本書で出てくるアイが生まれてから起こった数々の戦争や災害。読んでいてはっとさせられました。
世界では毎日のように何千人単位で亡くなっている。日々の生活もままならない方もいる。

僕は普段なんて些細なことで悩んでいたんだろう。

そんな風に思い、自分の視野が狭まっていることを痛感しました。

今こうして安心して暮らせていることは当たり前じゃない。

今ここにいてもいいんだと勇気をもらい、ここにいることに感謝しようと思いました。

そして、誰かの喜びは一緒に喜べる、誰かの悲しみは一緒に悲しめる人になりたいと思いました。たとえ想像の域であっても。
想像するだけでも何かを変える力がある。それを本書で学びました。

読む前と読んだ後で、人や物事の見え方が変わったような気がします。


文庫版の巻末にある、西加奈子さんと又吉直樹さんの対談も良かったです!

西さんが『i』にこめた想いの強さや登場人物の名前の由来を知り、さらに素敵な作品と感じました。

印象的なフレーズ

「感謝とか幸せって、努力して思うことではないんだよ。自然にそう思うことなんだから。アイがそう思えないのなら、無理に思うことない」

『i』

「誰かのことを思って苦しいのなら、どれだけ自分が非力でも苦しむべきだと、私は思う。その苦しみを、大切にすべきだって」

『i』

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?