#9 人は、たった140文字では分からない。『何者』(著:朝井リョウ)を読んだ感想
僕が朝井リョウさんの本を読みたいと思ったきっかけ。
それは、若林正恭さんのエッセイ『ナナメの夕暮れ』文庫版の解説でした。
数ページなのに、的確な解説が強く印象に残っていたんです。
今回読んだのは、直木賞受賞作でもある『何者』
あらすじ
感想
心に刺さりました、いや刺されました。
特にラストは、静かな部屋がさらにシーンと静かになった気がしました。
ホラーではないのに怖さを感じています。
『何者』は、大学生の就職活動(就活)をテーマとした作品です。
5人の登場人物を中心にした、就職活動を通じての人間模様が描かれています。
僕は、「いわゆる就活あるあるなのかな」と構えずに手ぶらで読んでいました。
しかし、それだといとも簡単に心を刺されます。
そんな甘いものではない、と言われているかのようでした。
現実の話?と思うほど就活における人間の表と裏の部分が描かれています。
その描き方が的確というか、これに言い返すことはできないくらいの強烈さがあります。
僕も就活をしていた経験があるので、登場人物たちの様子はリアルにイメージできました。
・それ意味ある?というものを色々やっている
・やたらと実績をアピールしている
・内定というカードを持っているだけでその人の評価が変わる
・内定者とそうでない者の人間関係がちょっとぎこちなくなる
・そして、どこか周りの状況を客観視して冷めた目で見ている
など
そして、就活と合わせて出てくるのがSNS(Twitter)による発信。
6人の主要人物のTwitterのプロフィールとツイートが個性を表していて面白かったです。
・自己顕示欲が溢れている理香、隆良、ギンジ
・思わず笑ってしまう投稿の光太郎
・表の姿がそのまま表れているかのような瑞月
・一見すると普通な拓人
自己顕示欲が前面に出ている発信は、就活だけでなく色んなところで見かけます。
ただ何かの過程をアピールしたい気持ち、それをどこか客観視して冷めた目で見る気持ちは分からなくはないんですよね。
SNSをやっていると魔が差したかのようにそうしたがる気持ちになったのは僕だけではないはず。
また、現代は短い文字数で手軽に色んなことを発信できます。
その便利さゆえに、文字だけを見て誰かのことが分かった気になってしまいます。
でも人は、たった140文字では分からない。
本当に大切なことはTwitterには書かないし、選ばれなかった言葉のほうがその人を表している。
相手との向き合い方、そして自分との向き合い方は今どうなっているのか。
観察者としてナナメに見ていないか。
短い言葉を見るだけで片付けていないか。
他人に想像力を求めさせていないか。
それを改めて考えないとなと、本書を読んで強く心に刻まれました。
終盤で分かる、5人のある真相。
不意に出てきて予想外でした。
真相が分かった後、登場人物の見え方が変わるのではないかと思います。
印象的なフレーズ
最後に
読了後に感想を書いていて思いました。
ここまで刺さることを書いている
朝井リョウさんって「何者」!?
他の作品も読んでみたい気持ちが強くなってきたぞ!
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