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ソメイヨシノ発祥の聖地に寄り道〜東京都豊島区駒込

全国でいちばん早く、東京に桜の開花宣言が出て間もない連休の谷間。天気も良かったし、都内での用事も早く片付いたので、山手線に乗って駒込まで行ってみました。なぜ駒込かというと、これから全国で咲き誇るソメイヨシノ発祥の地だから。発祥の地で桜前線を見送るなんて、気持ちいいじゃありませんか。

この界隈はかつて染井村と呼ばれており、広い庭園を構えるエラいお侍さんの別荘が多く、腕の良い植木職人が大勢住んでいたとのこと。この染井村で江戸時代末期、代々伊藤伊兵衛を名乗る植木職人が、エドヒガンとオオシマザクラを交配させて作り上げた桜が、染井で生まれたソメイヨシノ(染井吉野)というわけです。

染井はともかく、なぜ吉野なのか? 古くから桜と言えば吉野の山桜がブランドだったからでしょうか。伊藤伊兵衛は「吉野桜」という名前で売り出したものの、本場の吉野との混同を避けるために、明治33年、発祥の地である染井の名を冠してソメイヨシノと改められたとのこと。意外に歴史は浅いのです。

染井という地名は残っていない。

駒込へ行く前に、およそどこに行けばいいのか検索してみました。が、豊島区染井で検索しても何も出てこない。どこも皆、豊島区駒込なんですね。
世界に冠たるソメイヨシノの「染井」を地元の地名から消してしまうなんて、行政って何ともったいないことをするんだろう?

だからかどうか、駒込駅周辺には染井の名を冠した施設が多い。商店街とか橋とか温泉施設とか。駐在所までも染井駐在所でした。

せっかくなので「染井橋」の上から、どうってことのない撮り鉄。

午後の遅い時間だったので、暗くなる前に駅から近そうな「染井霊園」へ。お墓に行くのもどうかと思いましたが、お墓には大きな桜の木がありそうでしょう。

この街には、ソメイヨシノの巨樹が多い。

とは言え霊園にたどり着くまでもなく、街のあちこちで桜を見ることができました。しかもいずれの樹も大きく、さすが発祥の地の風格です。
ソメイヨシノの寿命は短く、およそ60年くらいとのこと。また、駒込一帯は太平洋戦争時に激しい空襲に遭い、桜もほぼ全滅したとのこと。ここで見ることができる巨樹たちは、いずれも戦後間もない頃に植樹されたものかもしれない。

このような巨樹が街のあちこちに。
ソメイヨシノは、わずかな傷からも病気になるほどデリケートなので、このように保護されている。

そして間もなく染井霊園へ。この日はお彼岸に入っていたので、お墓参りの人が多い。それにしてもこの時期に桜が咲いているなんて、心配になるくらい早いな。お墓参りの人にはラッキーだろうけど。

霊園の入り口では、いきなり桜の巨樹に出迎えられる。
桜って、地面に近い方から咲いて行くんですね。下の方の枝は満開で、上の方はつぼみの状態。全体を平均すると、三分咲き、というところでした。
こんなに大きなソメイヨシノが満開になったら、どれほどオミゴトなんだろう?

普段は街路樹などの剪定された桜しか見ていないので(桜って、あまり切っちゃいけないんですよね)、これほど自由にのびのび大きくなった樹を見ているだけで気持ちよいものです。

ソメイヨシノはもともと一本の木だから、一斉に咲いて一斉に散る?

詳しい理由は不勉強なので省略させていただくとして、ソメイヨシノどうしは受粉できないそうです。オオシマザクラを台木として、”接ぎ木”という手法で増やされるとのこと。つまりすべてのソメイヨシノはクローンなのです。言い換えれば、全国のソメイヨシノは、もともと同じ樹から増やされている。だから毎年、気候の近い地域で一斉に咲くし、一斉に散る。あれほどはっきりとした桜前線ができるというわけです。なるほどな。

なお、日本列島に自生する野生の桜は11種類あるとのこと。平安の昔から愛されている桜は山桜で、歌にも出てくる吉野の桜も山桜。徳川吉宗が、隅田川の堤を踏み固めるために植えた桜も山桜、とのこと。
一方で、地方に行くとたまに目にする巨樹や一本桜にはエドヒガンが多いらしい。樹齢数百年と言われる長寿の桜は、たいていエドヒガンなのだそうです。
以下、子ども向けのサイトのようだけど、とてもわかりやすく説明されているので、興味のある方はじっくりご覧ください。

日が暮れる前に六義園へ。

駒込にはまだまだソメイヨシノの名所がありそうだけど、日が暮れてきたので今日はここまで。その代わり、駒込の駅からすぐ、しだれ桜で知られる六義園にも行ってみようかと。着いてみると入り口にはかなりの行列。とは言えスムーズに流れていたので並んでみたら10分ほどで入園できました。

徳川家五代将軍徳川綱吉の側用人であった、柳沢吉保の下屋敷と伝わる。この広大な庭園が六義園で、その屋敷は六義館と呼ぶ、とのこと。
などという能書きはともかく、まずは有名なしだれ桜を。

こちらはソメイヨシノよりも一足先に満開でした。桜を見上げる人々のようすに、映画『未知との遭遇』のポスターを思い出します。
低い位置から見上げると、さながら吹雪のようでもあり。
寄りで撮ると、このような花です。
人混みから離れると、東京とは思えないほどの眺めと静けさに包まれる六義園。お勧めです。

私的、お花見の作法。

ということで、めでたく桜のシーズンを迎えることができました。
僕は25年もの間、隅田川畔に住んでいたので、毎年この季節が楽しみでもありました。そしてお花見も。
ただし、花見客が帰った翌朝には、隅田川畔のどのゴミ箱もプラスチック容器の山となっており、かなり興醒めな思いをしたものです。せっかくのお花見、ハレのイベントなのだから、そんなときくらいはコンビニ弁当で済ませずに、特別にお弁当を作って来るくらいの心意気が欲しいものです。ゴミは持ち帰ってください、などと繰り返し言われるよりも気持ちがいいはずだし。

あるいは、どこかに人知れず咲いているような、お気に入りの桜を見つけておくことをお勧めします。そこにベンチがあって、缶ビールの一缶でもあれば言うことなし。少人数だったら、こんなお花見が心地よいはず。
あるいは、夕方に桜の名所近くの居酒屋に入り、ホロ酔い加減で桜を見に行く。歩きながら眺める夜桜は、ずっと座って見ているよりも変化があって楽しいことに気づくでしょう。僕はもっぱらこの方式でした。これだとゴミの心配もなく、気持ち良く家に帰れるというものです。

ということで皆さん、今年も桜の季節を楽しみましょう。






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