1%のひらめきを導き出すデザインプロセス
BEENOS株式会社デザイナーの伊東です。
いつの間にか10月になり、早くも半月が過ぎようとしています。BEENOS株式会社は10月に新しい期を迎えるため、期末から期初にかけてのこの時期は色んな意味で忙しいです。
さて、冒頭の自己紹介を今までは「BeeCruise株式会社デザイナーの伊東です」としていたのですが、このたび所属部署が変わり、BEENOS株式会社テクノロジー推進室デザインチームへ異動となりました。担当業務としては基本的には変わらず、今までと同様に新規事業開発に携わっていきます。
今期は、今まで以上に様々なかたちでの越境ECサポートを積極的に行っていくため、新規事業開発だけでなく、新たな市場の開拓、世界の新たな地域に向けての挑戦も増えそうで、とてもワクワクしています!
新規事業を成功させるということ
去年の10月を思い返すと、早いもので私が新規事業開発に携わってから一年が経ちました。特にこの一年はコロナ禍の影響が大きく、企画段階で頓挫してしまった案件や、ローンチはしたものの閉じてしまったサービスもあります。逆に、こんな状況だからこそ世間の関心を引いて伸びているサービスもあります。この一年は言うまでもなく、様々な業界に大きな打撃と、転換を与えることになった年でした。次なるニューノーマルの到来に向けて大なり小なり転換は必須であり、またそれは大きなチャンスにもなり得るでしょう。
ただ、どんな時代であっても新しい事業をローンチさせ、流れに乗せ、成功させることはとても難しいものです。そう考えると、tenso株式会社が2018年に10周年を迎え、BEENOS株式会社が2019年に20周年を迎えたことは、本当に素晴らしいですね。
余談ですが、「国税庁が示す企業の生存率で、創業から5年後は15.0%、10年後は6.3%。20年後はなんと0.3%です」という記事をよく見ます。「明確なソースがあるんだろうか?」と思って調べたことがあるのですが、どこにある何年のデータなのかよくわからず、一見派手な数字なので引用がひとり歩きして都市伝説化してる可能性が高いようです…。
そんな話はどうでもいいとしてw
新しい事業、新しい会社を10年20年続けるのは間違いなく難しいことで、もちろんtenso株式会社もBEENOS株式会社も数々の転換や新しいことを生み出しながら歩んできた道があります。
天才とは、1%のひらめきと99%の努力である
“ 天才とは、1%のひらめきと99%の努力である
(Genius is one percent inspiration and ninety-nine percent perspiration.) ”
トーマス・エジソン
これは、天才発明家トーマス・エジソンの名言として世に広く知れ渡っています。
この言葉は、伝聞として「99%の努力あってこその天才」という努力が大切、という部分が取り沙汰されていますが、エジソンの真意は99%の努力が大切なのではなく、「1%のひらめきがなければ、99%の努力は無駄になる」と話したと言われています。彼は勤勉で好奇心の塊のような人だったので、四六時中研究に没頭しており、もちろんそれは努力と言えるでしょう。努力なんてものは彼にとっては当たり前の日常だったのかも知れません。
そんな彼だからこそ言える「努力は日々当たり前に続けていくことで、そこにひらめきがあってこそ」なのでしょう。
この「ひらめき」というもの。
これは本当に難しく、色んな手法で色んな人がフレームワーク化しようとしていますが、それを使いこなせる人は実際はかなり限られています。必要な前提と段階があり、更にひらめきを起こすための思考法、スキルというものもあると思っています。故に、誰にでもできるものじゃないというのが事実ではないでしょうか。
アイデアのつくり方
本を読み慣れていない人や、社会に出て間もない新社会人に昔からオススメされている書籍です。
この本は本当に薄い書籍になっており、帯にも「60分で読める」とあります。私の長く回りくどい文章を読める人であれば、何の苦もなく一気に読み終えることができるでしょう。
「アイデアのつくり方」という何とも魅力的なタイトルで、これを読めば破壊的なイノベーションがバンバン生み出せるような雰囲気が漂っていますが、この本にはアイデアを作り出す五段階のプロセスの第一段階としてこう明記されています。
“ 五つの中の第一の段階は資料を収集することである ”
出典:『アイデアのつくりかた』ジェームス W.ヤング 著
この資料収集は生易しいものではなく、対象となるものに関する資料をひたすら収集し、数あるパターンを作り出すことです。第二段階では、その膨大な資料を整理し、様々な角度から意味を探し求めます。心の中がごちゃごちゃになり、絶望状態になるまでパズルを組み合わせるのです…。
これらはまさにエジソンの言う「99%の努力」であり、これを日々当たり前のようにひたすら積み重ねた上で、さらに「1%のひらめき」を導き出さなければなりません。第一段階、第二段階で病的なまでに没頭しなければアイデアは生まれません。
この本は「アイデアのつくり方」という本であり、
「超かんたん!5分で誰でもできる アイデアのつくり方」ではないのです。
その「デザイン思考」ではイノベーションは起こらない
これは、上で書いたことがまさに言いたいことなのですが、UX MILKでも以前にUXPinからの転載として、同じようなタイトルの記事が紹介されていました。
“ まず認めなければいけないのが、私たちデザイナーのほとんどが、デザイン思考とは何かを正確に理解していないということです。 ”
Jonathan Courtney
冒頭で書かれている言葉通り、デザイナーに限らず「デザイン思考」や「UXデザインプロセス」、「人間中心デザイン」などのプロセスは知っていても、過程の中で「あぁ、なるほど!」と思えるまで理解、会得して、更に結果まで繋げていける人はまだまだ少ないのではないでしょうか。
特に「デザイン思考」は明快な5ステップがよく紹介され、見え方としてとてもキャッチーな存在になりました。まさに人々には「超かんたん!5分で誰でもできる イノベーションの起こし方」と見えてきます。
2017年、Adobe主催のカンファレンス「99U」でも、デザイナーのナターシャ・ジェンが「デザインシンキングなんて糞食らえ」というビックリするようなタイトルで講演をしています。
デザイン思考の文脈ではありませんでしたが、以前、発想法のワークショップで「KJ法」に初めて触れた機会がありました。ユーザーインタビューで得た膨大なデータを付箋やペンを使いながらグルーピング、図解してまとめていく方法なのですが、
正直、サッパリわかりませんでした。
ただ壁に大量の付箋を貼って、あーだこーだとブレストしながら付箋を右へ左へ、上へ下へ動かし、時間と体力を消耗して、完成した付箋ペタペタの作品を見て、徒労感に浸ることしかできませんでした。周りの参加者の「なるほどねぇ〜」と理解してる風のコメントを聞きながら、「サッパリわかんなかったなんて言えない」と心の中で思いながら、涼しい顔をしていたのは内緒です。
ただ、確かに明確な結論へ繋ぐことはできなかったのですが、
本当に小さな気付きや「あ、なるほど」というポイントがあったんです。
これはもう繰り返し何度も色んな案件で体験をしてみて、資料の収集にも情報の整理にも膨大な時間を使わなければなりません。常に考えて考えて考え抜いた「99%の努力」が大切なのではなく、「1%のひらめき」を導き出すためには必要な、当たり前のプロセスなのです。
何事にも近道はない。
そうだ、筋トレしよう。
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