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SNARK共同主宰のこれまでとこれから【インタビュー :山田 優】

SNARK Inc.は、小阿瀬直・山田優・大嶋励の3名の共同主宰による建築設計事務所です。小阿瀬が、前身となる個人事務所「小阿瀬直建築設計事務所[SNARK]」を2008年に創業し、2016年に山田・大嶋と共同でSNARK Inc.として法人化しました。

共同主宰の3名はこれまでどういう道を辿り、どのような思いでSNARKとして建築設計に取り組んでいるのか。それらを探るべく、3名それぞれにインタビューを行いました。今回は前回の小阿瀬へのインタビューに続き、山田へのインタビュー の様子をお伝えします。

子どもの頃打ち込んだもの

ーまず山田さんの生い立ちについて伺いたいと思います。ご出身と、幼少期や学生時代どのように過ごされていたか教えてもらえますか。

1988年、新潟県新潟市生まれです。小さい頃はレゴやプラモデルが好きでした。工作など何かを作るプロセスが好きで、朝早くからレゴで遊んだりしていましたね。自然の中で遊ぶのも好きで、小学校2年生のときには、家の前の田んぼでザリガニを捕るのにもはまっていました。自作の仕掛けをザリガニがいそうなポイントにたくさん設置して、夏休みに毎日様子を見に行っていましたね。初めのうちは釣ったザリガニを育てて観察をしてたのですが、あるとき近所の釣り好きのおじさんに「ザリガニは魚釣りの餌になるから持っておいで」と言われて、それ以来、釣ったザリガニをおじさんのところに持って行ってはお小遣いをもらっていました(笑)

少年時代

中学生の頃はプラモデルに本気で打ち込みました。ただ組み立てて終わりじゃなくて、ディテールをすごく作り込むような。例えばパーツ同士の接合部の合わせ目を消す処理をしたり、下地を塗ってから塗装をしたり、入手できるパーツを使って販売されていないモデルを作ったりしていました。

高校ではボート部に入りました。「珍しいし面白そう」と思ったのが入部の理由です。部活に限らず、やったことがあることや想像できてしまうことよりも、経験したことがないことや想像がつかないものに惹かれる性格だと思います。もともとアウトドアが好きなのですが、ボートできれいな水面の上をすーっと滑る感じが本当に気持ち良くて、体力的にかなりきつい部活でしたがのめり込みました。あと、ボートを自分の体格に合わせてチューニングするのも、工作やプラモデル好きだった私にとって楽しい時間でした。

建築設計の道へ

ーその後大学ではどのようなことを学ばれたのですか。

高校卒業後、前橋工科大学の建築学科に進学しました。物心ついたころから大工の仕事や建築の設計に興味があったので、進路に迷いはなかったです。大学時代はひたすら設計課題と向き合う日々でした。コンペにも積極的に応募していましたね。

卒業制作では、高崎の市街地にある群馬音楽センターの前の広場を敷地として、複合施設の提案をしました。大学時代の4年間を群馬で過ごしたので、群馬を敷地とした提案にしたいと思い、その敷地を選びました。音楽センターの近くには高崎シティギャラリー高崎市美術館などがあって、徒歩圏内に文化施設が集まっています。そこで、高崎を芸術・文化の都市としてさらに盛り上げていくための拠点として、若いアーティストが滞在しながら作品の制作できるような貸しアトリエや、小商いができるテナントなどの要素を盛り込んだ文化施設を設計しました。本物のコンクリートでつくったものなど、複数の模型を作って表現しました。

大学時代に取り組んだ設計課題のパース

ー確かに高崎市は「音楽のある街」として文化振興プロジェクトを行っていたりしますし、そういう施設があるとさらにその機運が盛り上がりそうですね。群馬で過ごした大学時代にSNARKと出会ったのでしょうか。

はい、大学3年生のときに校内に貼ってあったチラシを見て小阿瀬直建築設計事務所[SNARK]のことを知って、インターンを始めました。そのまま大学卒業後も2年間スタッフとして働きました。新築では集合住宅「ridge.」や戸建て住宅「House in Keyaki」、内装では「STYLE BAKERY」などに携わりましたね。2年間という期間を考えると、かなり幅広い経験ができたと思います。

高崎市の集合住宅「rigde.」

ーその後、一度SNARKを退職されるのですよね。

そうですね、もともと一度東京に出ようとは決めていたんです。なので、2年でSNARKを卒業したあと、友人と3人で都内の一軒家をシェアして暮らし始めました。先ほど言ったように、経験したことがない領域に関心があるので、規模の大きい建物の設計にも携わってみたいと思い、大成建設で働き始めました。建物の規模が大きいと設計業務は非常に分業化されていて、現場でクライアントや職人と対話しながら、ときにはその場で設計の内容を変更していくような前職でのプロジェクトの進め方とは大きく違いましたね。大成建設では、ザハ案の新国立競技場やホテルオークラなどのプロジェクトに携わりました。一級建築士の資格もこの時期に取得しました。

ーさらにその後、SNARKの共同主宰として小阿瀬さん、大嶋さんと一緒にSNARKを法人化されたのはどのような流れだったのですか。

私がSNARKを卒業したあとに大嶋がSNARKに入ってきて、大嶋と知り合いになりました。その後大嶋もSNARKを卒業して東京に来たので、よく一緒に飲みに行くようになったんです。それぞれ勤めていましたが、しばらくして、互いに独立をして事務所をシェアする可能性について話をするようになりました。そんな話が小阿瀬に伝わり、設計事務所のあり方やキャリアの積み方を色々と議論していくうちに、3人共同で法人を立ち上げるという結論に至りました。それぞれが個人事務所でやっていくよりも、3人の方が仕事の幅や対応できる案件の規模が違いますし、いろいろなことに挑戦できるのではないかと思いました。実際に今はその通りになってきていると思います。

趣味と建築設計

ー設計とは少しずれますが、山田さんが好きなことやこれまでに影響を受けてきたものなどありますか。

散歩が好きで、街の"?(はてな)"を収集することが好きですね。ありふれた街の風景でも、よく見てみると実は微妙に差異があったりします。思いがけない場所で面白いデザインに遭遇したり、使われる色の組み合わせが素敵だったり。そういう目に止まった"?"を写真に撮って収集しています。あとは、食べることとお酒が好きでよく一人でも飲みに行くのですが、そのときに周りの席の別々のグループが何を話しているかを同時に聞いて理解する「聖徳太子ごっこ」をするのも好きです(笑)何か一つのことから影響を受けたというより、そういった街や周りの人など日々のさまざまな事象から影響を受けているんだと思います。

散歩中に見つけたさまざまな街の"?(はてな)"

ーなるほど、そうやってありふれた日常も意識してみることで新たな視点が得られるのは面白いですね。では、設計をする上では、なにか共通して考えていることはありますか。

クライアントにより良い価値を提供するのは当然ですが、自分でもそのプロセスを楽しんだ方が良い仕事に繋がると思うので、いつも自分なりに面白いと思える設計のポイントを作るようにしています。あと、やはり新しいことを試すのが好きなので、使ったことのない素材を試してみるなど毎回なにかしら新しい試みにチャレンジしていると思います。

ーこれまで建築設計に携わってこられて、建築とは人々にとってどのような存在だと思いますか。

建築は人々の生活に必要とされるものであると思います。なので、建物として必要な機能を満たすことは当然重要なのですが、単なる機能以上の価値も提供できるのが建築だと思います。良い空間に行くと、深く感動を覚えることがありますよね。そのように「生活に必要とされるものでありながらも、人々を感動させることのできるものである」ということは建築の素晴らしい部分だと思います。そういう意味では、料理やファッションなどとも似ていますね。

これからのSNARK

ー最後に今後SNARKをどのような組織にしていきたいですか。

現状、小阿瀬・大嶋・私の3人が共同主宰として組織のトップにいますが、メンバー全員がそれぞれの方向でトップに立てるとすごく面白いと思います。独立したプロが集まってそれぞれが自分がすべき仕事をした結果として、最高のチームプレーが生まれるのがすごくかっこいいと思います。そうなることで互いにいい刺激を与え合ったり、新しいアイデアや仕事が生まれるような組織にしていきたいと思います。

■ プロフィール
株式会社SNARK 取締役/共同主宰/一級建築士
山田 優(やまだ ゆう)
1988   新潟県生まれ
2011 前橋工科大学 建築学科 石田敏明研究室 卒業
   小阿瀬直建築設計事務所[SNARK] 勤務
2013 大成建設株式会社 勤務
2016 株式会社SNARK / SNARK Inc. 共同主宰

SNARK Inc.
Website: https://snark.cc
Instagram: https://instagram.com/snark_inc/
プレス情報: https://instagram.com/snark_press/

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