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話すこと。

今日という日を、とくべつな気持ちで過ごすひとは、きっとたくさんいる。
東北地方だけじゃなく、全国に。
たくさん
たくさん

わたしもそのひとりで
ことしもめぐってきたこのいちにちを
あの日の記憶といっしょにおもってる

わたしは
この間まで、あの日のことを話しちゃいけないんだとおもってた。
だって あの場所はおもうだけでくるしくなるほどすきな場所だけど
わたしのおもいと わたしのまわりのおもい方がちがっていて
おなじきもちで はなせるひとがいなかった
ひとりでおもって
ひとりでくるしくなって
ひとりでだいすきになっていた

きっかけは ひとりの写真家さん
あの日のすぐあとからずっと写真を撮り続けているひと
その人の写真を目にしたときに
「わたしとおなじきもちのひとが こんなにたくさんいる」って気づいた
どんなにくるしくても
どんなにかなしくても
あの日から前へすすんでいる時間をつたえてくれるたくさんの写真が
おくびょうだったわたしを変えてくれた
ほんのすこし
ささいなことだけど
はなす勇気、つたえる勇気をもらえた
だから
わたしはわたしのかたちで
あの場所へのおもいをつづろうとおもいます。

10年以上も前から
ずっと恋い焦がれてきたあの場所への
つたえてもつたえきれないほどのおもいを
わたしのかたちで
わたしのことばで
つたえていこうと思います。

今日という日をたいせつにするひとたちが
それぞれの過ごしたいかたちで過ごせますように。
かなしいはなしをつくりたがる
マスコミというものにおびやかされることなく
過ごしたいように、過ごせますように。
今日といういちにちだけでなく
あの場所に住むひとたちは
まいにちをあの場所で過ごしているのです
かなしいままも
くるしいままも、きっとあるけれど
えがおだって、しあわせだって、あるのです
今日だけとくべつにかなしんでほしいなんて
こっちの勝手だけおしつけて
じぶんたちの撮りたい絵だけきりとる
そんなことなんてしないで
今、あの場所に生きるひとたちを見て欲しい

あの場所にいきるひとたちに
わたしができることは
かわらずおもいつづけること
かわらずおぼえていること
でも、ときにわすれてしまうこともひつよう
くるしくなり過ぎないために
そんなことも どうか許してね

また 会いにいきます
かわらずいとしいきもちと一緒に
ただいまっていいます

わたしに、つたえることのたいせつさと
勇気をくれた写真家石井麻木さんに、
こころから感謝しています。

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