問いを深めるための特別講義 「コミュニティ」×「ティール組織」 Social Mirai Design 2021(3期) 第4回
2021年8月15日(日)9時~12時
前回(8月1日)から2週間ぶりの講座開催です。
その間に、オリンピックも始まりましたが、どんな風に過ごされていたか気になるところ。Slackでのやり取りはあるものの、顔が見られるのはなんだか嬉しい気分になった事務局メンバー♪
「この2週間のできごと」、「(前回設定した)問いへのアクションの状況は?」
この2つについてチェックインしました。参加者からは、
「職場やプライベートで色んな人に話を聴いてみた!SNSで気づきを発信したよ!情報を整理しながら問いを深めました!」
など、みなさんの嬉しい近況がきけました。
<第1回>それぞれ仮の問いを立て
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<第2回>3人のゲストによるクロストークから視野を広げ
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<第3回>問いをブラッシュアップし、SMDで探求する問いを考えました。
そして、今回は「コミュニティ」×「ティール組織」をテーマにした特別講義。ティール組織の第一人者、嘉村賢州(かむら けんしゅう)さんにお越しいただきました!
嘉村賢州さんプロフィール
「ティール組織」(フレデリック・ラルー著、嘉村賢州解説、2018年、英治出版)
もともと、場づくりやコミュニティづくり、まちづくりに約15年関わってこられた賢州さん。
そんな中、約5年前にティール組織に出会ったことで徐々に組織論中心にかわってきたのだそう。
様々なプロジェクトを手がけてる賢州さんが、一貫している個人で大切にしている3つのこととして、
①生まれてきてよかったと思える人生を送りたい!
②出会えてよかった!と思える素敵な出会いを。
③次の世代が生まれてきてよかった!と思える世界を残す。
「すべての活動がこの3つにひっかかっていると思ってもらえたらなと。人との出会いは、かけがえのないものである一方、非常に難しいものでもあるなと思っているんですよね。どうしても人が集まると対立やしがらみになりやすいのが人間の難しさっていうのがあって・・・」
例えば、
・大好きな友達だけど本音が言えない・・・
・楽しいけど本音が言えず関係が作りきれていない・・・
こんな経験は誰にでもあるのでは??と問いかけます。
これらの難しさをどうにかしたい!!と思ったのが賢州さんの原点だったそうです。
そこから
【対立やしがらみをどうやって出会いの化学反応に変えるのか??】
このテーマに基づきムーブメントを起こすべく、
チームやプロジェクト、コミュニティ、組織などで研究&実践する中でだんだん自信がついてきたと話される笑顔が印象的でした♪
賢州さんが、なぜムーブメントやコミュニティに魅せられ、試行錯誤を繰り返し、自信をもてるようになったのか?、そしてティール組織にどう出会うまでに至ったかの原体験をたくさんお話いただきましたのでご紹介します!
天才兄が鍵をにぎる!? 小学生時代
賢州さんのコミュニティの原体験は、小学校にさかのぼります。
3つ上の兄「豪州(ごうしゅう)」さんがすべての始まりだったと話します。
「豪州ってね、大天才なんですよ。どれくらい大天才かというと…小2の時に百人一首を3日で覚えちゃったんですよ!公文に通ってた時も、僕は学年相当のことをやってたんですけど兄は小6で微分積分やってたんですよ 笑。
その一方で僕は、いわゆる発達障害ですね。靴は左右さかさまに履いたり、シャツは常に出てるし、という感じの凸凹傾向な僕だったんですね 笑」
コミュニケーションも苦手だし人間関係をつくるのも時間がかかるので、クラス替えの時はパニックになっちゃう…そんな少年だったそうです。
そんな賢州少年の唯一の救いが、当時通っていた小学校で、総合学習の実験校(今のアクティブラーニング)だったこと。
「探求学習やWSを使うことをやっていた学校のおかげで、好奇心を刺激されてパニックになりながらも友達がたくさんできて居心地もよく豊かな学校生活だったんです」
暗黒時代の中高生活
大天才の兄に憧れ、大尊敬していた賢州少年。(兄は灘高 → 東京大学へ)
兄の背中を追うように進学校へすすむことを選んだ賢州少年ですが、ある悲しい事実を知ることになったと言います。
「コミュニケーションが苦手なのに、紡がれた大切な仲間たちと離れるという決断をしないといけなかったんです」
当時通っていた小学校は、中学校とつながっていたため大半の子どもたちは同じ中学校へ上がっていくがそのことを知らず、自分だけが抜けて進学校へいくのはとても苦痛だったと。
当時、辛い勉強をがんばる動機づけは…
「より賢い世界へいき…いつの日か小学時代の仲間に還元できる日がくるかも!」という想いだけ。
しかし、この想いは届かず関係性は希薄になった結果、
「人生初のコミュニティの喪失体験を味わい、なんのために勉強を頑張るのか、苦しいことを頑張る理由が見つからない状況だったんです。」と当時を振り返ります。
再び光を灯してくれた大学時代
京都大学に入ったものの、周りの天才に圧倒されて、瞬時に落ちこぼれになったという賢州さん。
相変わらずコミュニケーションも苦手で居心地悪かった経験が、のちに場づくりのかなめになることに!(なるとは当時の本人しらず…笑)
「僕は30~40人くらいの中にぱっと入れられても何も喋れない、名前も覚えられないと声すらかけれない原体験があるので、そんな人は他にもいるだろうと 笑。それなら名札があったほうが過ごしやすいよね。とか、ある程度テーマがあった方がいいよね。という自分のコンプレックスがバネになって場づくりが上手になっていったなと思うんです」
大学生活にもつまづきかけていたときに、運命の光が差し込んだと言います。
たまたま誘われてついて行った「国際交流ボランティア説明会」が運命の始まりだったと振り返ります。
日本に馴染めないまま帰国してしまう多くの留学生がいる問題を解決できないか??という問題を解決するために、イベントを企画していた団体。
国際交流団体の代表だったウスビ・サコさん(現在、京都精華大学学長)
https://www.kyoto-seika.ac.jp/about/greeting.html
このイベントで広報を担当した賢州さんは、すごいことを発見することになったと言います。
「役割があると人と話せるっていうことなんです。コンパに突然入れられるとアタフタする自分が、なにか役目があると必要な人とコンタクトとりながら、ちゃんとコミュニケーションできるんですよね」
半年以上もかけて作り上げたイベント後には、無二の親友のような関係性や達成感、深い信頼の絆が生まれていたと。
「こんなにもコミュニケーションが苦手だった僕が、繋がってる人を獲得できたという原体験なんです」
この原体験が、賢州さんにとってプロジェクトがかけがえのないものになっていったそう。凸凹な性格ゆえ、いちど火がつくと早い!!!
水を得た魚に大変身
「プロジェクトだー!!!!」
と意気込んだ賢州さんは、大学時代に100ものプロジェクトに参画したのだとか。それと同時にコミュニケーションのコンプレックスも消えていくことに♪
そんな中、新たな問いが2つ生まれてきたと言います。
1つめは「一過性のせつなさ」
いつかはプロジェクトは終わっちゃうし、人もやりたいことが変化するので離れていってしまって会えないせつなさ…。
2つめは「損得勘定の空気感」
就活のときの学生行動に違和感…。名刺の肩書きがスゴイ人に学生が集まるみたいな…。
損得勘定ぬきで人が出会える貴重な学生時代のはずなのに…なんか侵されているような…。
この違和感はなにが原因か…??
模索した賢州さんが出した結論=「時間が足りない」
時間が足りないことで、こんな負のスパイラルにハマってしまうのではないかと続けます。
交流会に参加しても時間が足りない → 相手に良く思われたい → 武器をもった状態で自分を飾る → 素を出せない → 弱音が見せられない
(武器でつながると、ずっとイイ顔しとかなきゃ…というプレッシャー)
同じような心境を経験しているかたも多いのではないでしょうか。
そこで賢州さんは、
どうやったら着飾らずに、ありのままで紡げるだろうか…?
なにか良い仕組みはないだろうか…?と悩んだと言います。
その結果、とんでもない暴挙に出ます。
「賢州の部屋、解放!」
自分のマンションの一部を24時間365日開けっ放しにしました。
「始めは自分に会いに来ていたのが、いつの間にか自分がいない時にも初めましての人同士が出会うんですよね。僕というパイプがあれば人が繋がっていって、ちょっとずつ場になっていく感じが素敵だな~と思いました」
自分の部屋を解放することで素敵な場がつくられた反面、人の家を自由に使うことへの気まずさも伝わるようになったと言います。
そこで、
”みんなで一軒家を借りる!”
というあらたに進化したコミュニティへと発展していきました。
1階部分は24時間365日解放。
ただし、使用できるのは信頼する人からの紹介制かつ口コミのみというルールで運用した結果、5年で1000人が集まるほどのコミュニティになったそうです。
このコミュニティの原体験が、賢州さんの中で強い哲学になっているんだと続けます。
「誰かの信頼する人というだけで、こんなにも心が開けるのかという驚きがありました。初対面の出会いが多い中、すぐに打ち解けるんですね。そして夢を語り合ったり、悩み・弱さも吐き出したり…。夜になるとそんな深い対話が生まれてくるんです。僕たちはその時間を『魔法の時間』とよんでいたんです」
人間関係が深まると、人の喜びや痛み・悲しみは自分のものとなり、お互いの夢を応援し合いたくなるし、絆も深まっていくことに気づきました。
OSTと出会う社会人時代
「時間にゆとりのある学生だけがあじわう以外にも、あらゆる世代や地域、国でも同じような感覚が分かち合えたらもっと素敵な世界になるだろうな~」という新しい問いが生まれたと言います。
そこで、自分を変えるきっかけになった”場づくり”をビジネスにしたが、挫折することになります…
「コミュニティを一番利用してほしいのって仲間たちなんですよね。みんなで面白いことをやろうとすると、お金が必要になるんです。それをするには会費を上げるしかないんです…。なんか金づるにしているみたいで違和感があった」
その結果、コミュニティ作りとビジネスモデルは切り離そう!と決めたと言います。
・コミュニティは、ボランタリーベース
・場づくりやファシリテーションは仕事
1000人規模のファシリテーションを担当する機会が訪れた賢州さん。
さすがに大規模すぎて悩んでいたときに1冊の本に出会います。
「オープン・スペース・テクノロジー
~5人から1000人が輪になって話し合うファシリテーション~」
参加者が本当に語り合いたいものを場に提案し、それに心惹かれる人のみが集まって話すもの。
場全体に広がっているため、いつでも誰でも参加可能な状態で話し合う手法。
OSTの手法に感動した賢州さんたちは、大好きな京都をベースに開催することを決めます。
⇩
”京都きずなサミット”
ここでの活動が当時の京都市長の目に留まり、あらたなプロジェクトを担当することになります。
⇩
”京都市未来まちづくり100人委員会”
https://www.city.kyoto.lg.jp/menu5/category/66-6-0-0-0-0-0-0-0-0.html
この委員会の合言葉は「私やります!!」
自分たちのまちの未来は自分たちでつくっていこう!という想いがつまったもの。
集まった100名以上のメンバーがざっくばらんに語り合って、さまざまなプロジェクトを生み出していき、7~8年経った今でも続いているものがあると言います。
まちづくりから企業の組織変革へ
OSTの手法に魅せられた賢州さんは、本格的にファシリテーションんを学び始めることを決意します。しかし、しがらみの多い京都で実践することは難しく、どうやって対話の場をつくるのか悩んだと言います。
そんな中、場づくりの現場だけでなく、企業も同じように紛争状態だということを知ります。
「シナジーをうむために合併したはずの企業が、恨み妬みにあふれているということを聞いたんです。人って企業組織に人生の大半の時間を注いでるんですよね。その時間がより豊かになることって大切なんじゃないかと思ったんです」
そうして、徐々に企業の組織変革に移っていったのだと賢州さんは続けます。
過去の100人会議で使ってきた大規模ダイアログを実践することで、想像以上に結果が出たと言います。ネガティブ発言ばかりだった人が、率先して会社変革していこうとする姿や役員に直談判する若い人の姿に遭遇します。それによって、賢州さん自身とても勇気をもらったと振り返ります。
それと同時に変革者たちが、ピラミッド構造の組織中でつぶれていくという現実も同時に目の当たりにすることになります。
「頑張った分、不利になることも多かったり…。一生懸命作り上げたものが役員会議で一瞬にして覆されてしまったり…。メンタル鬱になる寸前ということもあったりして、ヒエラルキー文化の固さは非常に大きいものだと感じたんです」
大規模ダイアログと賢州さん自身の限界も感じ始めて、1年のお休み取得することに。
そして、世界放浪の旅へ・・・
ついに、そこでティール組織に出会います!!
ティール組織との出会い
「大組織のなかでファシリテーションをしていて、人類は組織の作り方を間違えたんじゃないか…?
そもそも根本的に違う人と人の関わりかたというものがあるのはないか…?ということをずっとモヤモヤしていたんですよね」
”組織を再発明しよう”
この1冊の本との出会いによって、賢州さんはファシリテーターという職業を引退へ。
そして、ティール組織の普及する道へすすむことを決断することとなります。
ティール組織とは
「ティール組織」(フレデリック・ラルー著、嘉村賢州解説、2018年、英治出版)
ティール組織を生み出したフレデリックには、こんなきっかけがあったと言います。
彼がファシリテーションをする中で、経営者は全然幸せそうじゃないし、働く人もまったくやりがいを感じていない状態を目の当たりに。
「トップも現場も幸せじゃないビジネス社会はどうなってるんだ!?」と疑問が沸き上がり、根本的に違うやりかたはないものか…と思ったことが始まりだったといいます。
それを探求していく中で、今までの組織運営とは根本的に違うやりかたしているところが世界中のあらゆる場所に少しずつ現れていることを発見します。
それらの組織で働く人が、活き活きして、お客さんからの支持も厚く経済も回っていることが分かってきたといいます。
「そんな組織が世界同時で起っているならば、それこそが新しい方向性なのでは!?」そんなふうに思ったフレデリックがまとめたものがティール組織になります。
大きくは、下記の2つの切り口でまとめられているんだと賢州さんは話します。
1.組織の形態は段階を経て進化している
2.ティール組織には3つの特徴がある
1.組織の形態の進化
いちばん古い形態から順に
「RED」: 言うことを聞かなかったら殴る殺すの世界観。人を脅して率いていくやりかた
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「AMBER」:お前は身分が低いからやれ!の世界観。上下関係をつくって組織を作るやりかた
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「ORANGE」:生産性UPの世界観。実力・能力主義。頑張れば出世できる!人への思いやりより売り上げ重視
↓
「GREEN」:働く人は仲間、家族だよ!ざっくばらんな関係性。上層部と現場間のまとまらないミゾ
↓
「TEAL」:1人1人が自由に意思決定。信頼で結ばれた生命体。
2.ティール組織の3つの特徴
(1)自主経営(Self management)
組織構造が上下関係ではない。全員自由に決められる。
(2)全体性(Wholeness)
その人がもっている全てを活用しよう!
感情は抑えず、耳を傾けよう。ありのままを出そう!
(3)存在目的(Evolutionary purpose)
計画やゴールはたてない。失敗なんてない!
学びによって対話し探求しつづける。
SMD2021も、後半戦。参加者ひとり一人が自分の問いを探求するため、今日の賢州さんの話から実践していけるように、参加者同士の対話の機会などサポートしていきます!
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