2024/05 CTOオープン社内報vol.10 『smartroundにおいて技術が果たす役割』
皆さんこんにちは!スマートラウンド CTO の小山( @doyaaaaaken )です。
このオープン社内報は、CTOである自身が普段「なにを感じて、どんなことを考えているか」について、月に一回、社内へ共有する試みです。
“オープン社内報” という名称のとおり、この文章の内容は一部編集した上で会社ブログに公開する予定です。
今回のテーマ
今回のテーマは『smartroundにおいて技術が果たす役割』です。
「“CTO”オープン社内報」なのに、技術そのものにフォーカスした話は実はまだしたことが無かったので、今回テーマとして取り上げてみました。
(言い訳すると、オープン社内報は全社向けなので、専門的な話は書きづらかった背景があります…)
スマートラウンド全社に関する話にすると超大作になって誰も読まない量になってしまうので、”smartround”(プロダクト)に絞った話として書きます。
特にsmartroundというプロダクトは「SaaSであるだけでなくプラットフォームでもある」というユニークな特性を持っているので、その点と技術の関連についても最後のほうで触れます。
※ スタートアップ・投資家向けの業務プラットフォーム ”smartround”のサービスページです
スタートアップの成功に技術が欠かせない理由
ちょっと遠回りになりますが、そもそもなぜ技術がスタートアップにとって大事なのかを説明します。
技術の力を使わなくても事業を立ち上げることは当然可能です。
例えばコンサルティング支援が良い例で、付加価値の高い専門的なノウハウを顧客に提供すれば、高い収益を得ることはできるでしょう。
一方でスタートアップはその定義上、短期間で急成長を生む必要があります。
しかもそれを少人数で、達成しなければいけません。
そこで技術の力が必要になります。
技術の力でプロダクトを創り、プロダクトを通じることで、ソリューションを幅広い顧客に同時並行的にかつ人手をかけずに提供することが可能になります。
技術の力でユーザーのプロダクト活用状況をリアルタイムに把握し、プロダクト改善や顧客がサクセスするための提案へと即座に活かすことができます。これは技術の力なしではできません。
弊社のメンバーが業務をする中でも他社SaaSを活用して(なんと70個近くも使っています!)、40名規模の組織でスタートアップ5,000社以上が利用するサービスを提供できています。これはまさに技術の力と言えるでしょう!
このようにイノベーション(革新による新たな価値提供)とスケール(急速な規模拡大)が必須であるスタートアップ企業にとって、「技術」は切っても切り離せない要素なのです。
BtoB SaaSの宿命:「でもそれExcelでできるでしょ?」
ところでBtoB SaaSを創る人・売る人はよくご存知だと思いますが、世の中のほとんどのBtoB SaaSの競合はExcelです。
Excelほど直感的に使いやすく、柔軟性があり、かつその便利さ故に複雑すぎてメンテ困難なデータ(いわゆる神Excel)が生み出され問題になるツールは他にないでしょう。
これほど世の中の人々から強く愛され、同時に憎まれてもいる偉大なツールは他にはないのではないでしょうか?
最近だと、Notionやkintoneといったノーコードツールも、Excel同様BtoB SaaSの競合になってきます。
BtoB SaaSを創る上では「Why not Excel?(Excelじゃダメなの?)」という問いに答えられるよう、これらの汎用ツールには無いプラスαの付加価値を磨き上げ続ける必要があります。
Why smartround? : smartroundのBtoB SaaSとしての価値の例
それではsmartroundの場合は、例えばどのような点が汎用ツールにはないプラスαの付加価値になのでしょうか?
以下に一例を挙げてみました。
例1 属人性からの解放
属人性はまさにExcelの弱みです。
属人的な業務はブラックボックス化し他の人との連携を阻害しますし、担当者が休暇・退職時にその業務が安定継続できなくなります。
「SaaSとして入力すべき項目が予め定められており、それに沿って入力するとデータ管理や業務が適切にできるようになる」というのは、smartroundに限らないすべてのBtoB SaaSの持つ価値でしょう。
例2 法的書類や重要書類をミス無く生成
smartround上でデータを入力・管理すると、例えばスタートアップであれば株主名簿・新株予約権原簿・株主総会招集通知などの法的書類がミス無く簡単に作成できます。
smartroundがなければ、法的ミスを犯さないか不安に駆られながら、それらの書類を手で作成することになるでしょう。
こういった「ミスが許されない重要書類を入力データから生成する機能」というのは、汎用ツールにはない価値で、まさにsmartroundを使う理由になるでしょう。
例3 業務プロセスを自動化し、圧倒的に効率化
smartroundだと株主総会における招集通知メール送付・投票回収および集計などが例ですが、「汎用ツールでは実現できない自動化」を行うことで業務の効率化ができます。
実際「株主総会が100倍くらい効率的になった」という声をX(旧Twitter)上でいただいたこともあります。
ここまでで、BtoB SaaSとしてのsmartroundが生み出す価値については理解いただけたのではないかと思います。
一方で今やSaaS開発が一般的になりすぎてしまったがゆえに、「確かにどれも技術の力がないと実現できないことだけれど、それって難しいことなの?」と正直感じている方もいたりするのではないでしょうか?
その難しさについて説明したいと思います。
BtoB SaaS開発の難しさ
その難しさについて説明するため、まずはBtoB SaaS全般の開発の難しさについて説明します。
技術者の目から見てBtoB SaaSという業務システムがどう映っているのかを図にしました。
SaaSを普通に見たとき「システム=機能」と捉えるのが自然な見方です。
一方で技術者がSaaSを開発するときには、「データモデル」というもう一段メタな概念を捉え、それを参照・更新するものとして「機能」があるという捉え方をしています。(注:「データモデル」ではなく「ドメインモデル」やその他の概念として捉えている方もいると思いますが、本筋ではないのでそこの深堀りはご容赦ください。)
実世界のユーザ業務から業務ロジックとデータモデルを抽象化して捉える力が「設計力」であり、いかに上手に抽象化するかが技術者としての腕の見せどころです。
特にデータモデルは土台なので、適切でない設計をしてしまうと土台が整っていないシステムになり、機能追加を進めていく中である時期から急速に開発速度が低下し何倍もの時間がかかるようになったり、最悪機能の追加や変更すらできなくなります。
(これは「技術的負債」と呼ばれており、スタートアップだと数ヶ月機能開発をストップしてこの負債の解消に務めることが非常によくあります。弊社はリファクタリング文化ということもあり、幸いこういった事態はまだ発生していません。)
またデータモデルは一度決めて終わりではなく、機能追加に伴い継続的にアップデートされていきます。
一方それにも関わらず、データモデルは土台であるがゆえに、一度決めると大きく変えることは難しいという特徴があります。(積み木ゲームのジェンガをイメージしていただけるとわかりやすいと思います。)
そのため、将来どんな機能追加がなされ得るのかを常にしっかり想像し決める必要があります。
普通はプロダクトを線で捉え「今何の機能があり、何の機能追加がロードマップに載っているのか」を見ていると思いますが、技術者は「その機能の裏側にはどのようなデータモデルがあるのか」と面で捉え、さらには「どのような設計にすれば、将来においても修正の可能性に幅広く対応できるのか」というように立体的にも捉えているのです。
smartroundのプロダクトエンジニアのチャレンジ
このようにユーザ業務から適切なシステム設計を抽出することは、未来においても進化し続けられる土台をしっかりしたシステムにする上で非常に重要です。
弊社ではプロダクトエンジニアが開発系のメイン職種として、こういった難題に対処しています。
弊社のプロダクトエンジニアはフロントエンド・バックエンド問わず、開発するだけでなく、仕様提案・議論にも積極的に関与することが求められます。
「フロントエンドかバックエンドいずれかのみ開発する」「仕様提案はあまり行わない」という現場が世の中には多い中、あえてこのような難しい方式を選んでいるのは理由があります。
それはユーザ業務・デザイン・技術のすべてを一気通貫で理解し、最適な設計を模索しなければ、優れた顧客体験をもったプロダクトを将来に渡り提供し続けられないためです。
※ 余談ですが、こういった体制を実現するためにオンボーディングにも力を入れており、入社者が業界知識を学ぶことができる会があるのは、以前のオープン社内報でも紹介しました。
また、より難しいことに、先発の類似サービスがない領域でスタートしたこともあり、smartroundの機能開発では参考にできる類似サービスがないことも今まで多くありました。
その中では、ユーザ業務を理解した上で想像力を働かせ、PdM・デザイナーと議論しユーザにとって最適な仕様を考える必要があります。
そこではドメイン・デザイン・技術を越境・俯瞰し最適なシステムの形を考案できる、高いレベルの設計力が求められます。
弊社のプロダクトエンジニアはそういった技術的難題にチャレンジしているのです。
「SaaSでもありプラットフォームでもある」: smartroundのユニークな特徴
またsmartroundにはユニークなポイントがあります。
それは「SaaSでもありプラットフォームでもある」という点です。
その点と技術の関連についても話しましょう。
smartroundはSaaSとして自社のデータを管理・活用するだけでなく、プラットフォーム上で他社にデータを共有するサービスです。
その仕組みゆえにネットワーク効果が働き、「皆が使えば使うほど、どんどん皆が便利になっていく」特性があります。
先ほどBtoB SaaSの説明の中で「属人性の排除」というメリットについて説明しましたが、smartroundというプラットフォームを皆が使うようになれば、このメリットが個社に閉じた話ではなく業界全体に広がります。
業界全体でデータや業務の標準化ができると、BtoB SaaSの「社内データの管理・利活用」よりはるかに大きな価値を生み出します。
例えば以下のような世界観が実現できるようになるでしょう。
皆がsmartroundを使っていることで、データの共有をカンタンに行うことができ、スタートアップエコシステムのステークホルダー(スタートアップ・投資家・士業など)同士が効率的に連携できるようになります
データのフォーマットも業界全体で標準化されているため、社内外におけるコミュニケーションの前提条件が揃っており、円滑に会話や業務が行えるようになります
標準化された仕様を中心として業界全体で様々な知見が育まれていくため、ハマる必要のない法的な落とし穴にハマりにくくなります
起業したらとりあえずsmartroundを使っておけば、上場までデータの整備や各種ステークホルダーとの連携をsmartround上でできるので、起業のハードルが下がります
ベンチャーキャピタルなどのビジネスを新しく立ち上げる際にもsmartroundを使えば、少ない人数で効率的に業務を回せるようになります
スタートアップを支援する士業の方々も、皆がsmartround上で各種データ・書類を整備していることで、楽に質の高い支援を行えるようになります
smartroundを使って得たスキルは、転職後もそのまま活かせます
逆にsmartroundを使う担当者が離職した場合でも、新しい人材を探すのは容易で、離職リスクに悩まされなくなります
業界全体の標準化に貢献することで、行動変容につなげられる。
まさにスタートアップエコシステム全体の生産性を底上げするインフラとでも呼べる存在になります。
仕組みを変えることで社会を変えていける。
この仕組みはまさに技術の力があってこそ実現できることです。
この未来を実現するために、やらなければいけないこと・超えなければならない壁はまだまだ山積みです。
すでにAIを活用し壁を越えようとするプロジェクトが進んでいるのも皆さんご存知のとおりです。
行動変容という点ではデザインも重要ですし、スタートアップエコシステムのインフラとなるためにはサービスの信頼性も必須です。
引き続き全社一丸で乗り越えていければと思います!
以上です。
この記事を通じて、smartroundにおいて技術の果たす重要性が伝わっていれば幸いです!
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