困難だからこそやりがいがある。エンタープライズ事業本部の進化と挑戦─シリーズE調達 SmartHR VPリレー連載#2
SmartHRは、2024年7月1日にシリーズEラウンドの実施と、新規領域への参入や、労務管理・タレントマネジメントの新プロダクトを発表しました。
シリーズEラウンドの実施や新領域への参入を受け、それぞれの管掌組織の挑戦や戦略について、SmartHRのVP陣がリレー形式でnoteを執筆します。
第2️回はエンタープライズ事業本部長(VP of Enterprise Business)の佐々木さんです。
SmartHR の佐々木(@kosasaki7)です。
久しぶりのnoteです。昨年までPMM組織の立ち上げから約5年間ほど、ビジネスとプロダクトのハブになる様々な経験をさせていただきました。
2024年からエンタープライズ事業本部を担当して半年が経ち、これまでの進化や自身の振り返り、今後の注力ポイントについて書いてみました。
スケールアップ企業の大きな挑戦
2024年7月現在のSmartHRは「スケールアップ企業」の真っ只中のフェーズであり、さらなる急成長に向けた大きな変革期を迎えています。
変革の大きさとしては、向こう2年におけるプロダクトリリースや事業・組織の成長が、私がこれまでSmartHRで経験した6年間をゆうに超えていくレベルの実感です。
「スケールアップ企業」の詳細については、こちらの記事で解説されています。
SmartHRは「well-working 労働にまつわる社会課題をなくし、誰もがその人らしく働ける社会をつくる。」というコーポレートミッションを掲げています。
しかし、日本の労働力人口から見れば、SmartHRのカバー率はまだ数%にすぎません。
日本全体に対する影響度を高めていき、世の中の働き方を変えるインパクトを起こすための挑戦はまだ始まったばかりです。
そのうえで、影響範囲が大きいエンタープライズ市場へサービスを広めることは必然です。
昨今、サービス業や製造業、医療・福祉業などで引き合いが非常に多くなっています。これらの業種は日本の労働力人口の5〜6割を占めており、大きな開拓余地があります。
SmartHRの利活用を通じて多くの先進事例を作り、そのノウハウをプロダクトに反映してアップデートし続ける。SaaSが各社の集合知となり、さらに利用いただく企業が増える循環ができることで “well-working”な社会の実現に一歩一歩近づいていくと考えています。
エンタープライズ事業本部の組織
エンタープライズ事業本部は501〜2,000名のミッドマーケット、そして従業員2,001名以上のエンタープライズの顧客を担当する組織です。
2024年から「マルチプロダクト戦略」を実行できる最適な組織体制にすべく、大きな組織再編を行いました。
具体的には、昨年までの機能別の職種(インサイドセールス、セールス、カスタマーサクセス…)組織から、市場別に組織を大きく2分割(エンタープライズ事業本部、グロースマーケット事業本部)し、その下に機能別のチームが紐づく形に変更しました。
これにより、「職種を超えた連携に時間がかかる」「横断的な意思決定が遅くなる」といった課題を解消し、よりスピーディーな連携と意思決定、価値提供を最大化できるような体制を目指して設計を行いました。
2024年の方針として、スピードと創意工夫でマルチプロダクトの実行力を確立することを掲げています。
この半年の短期成果として、エクスパンション(既存顧客からの追加契約)が売上比率が大きく飛躍し、組織力の進化がみられました。
カスタマーサクセスとセールスの役割を再整理し、アカウントマネジメントを担う職種を新設することで、既存顧客との接点の量と質が向上し、職種間の協業がより円滑になりました。
また、インサイドセールスとセールスの連携もより強化され、タレントマネジメント領域の売上比率も向上しました。
今後の新規プロダクトにも応用すべく、個人・組織単位でのコミュニケーション密度が高まったのは、事業本部制に移行したメリットだと考えます。
この半年は採用活動も積極的に行い、エンタープライズ事業本部だけでも50名ほどの規模で素晴らしい方々に入社いただいております。まっさらな視点から見た提案や新たなノウハウを取り入れ、組織の化学反応が生まれて、進化していくことが非常に楽しみです。
中長期(25年に向けて土台を確立する)の取り組みはまだ道半ばではありますが、マルチプロダクトだからこその ”チームで動く” 進化が急務です。
今後の注力として、新規プロダクト拡販・サクセス体制の垂直立ち上げに向けたプロダクトセールスやプロダクトCSとの協業体制の構築を始めています。
加えて、“人材育成への投資”も加速する予定であり、各職種に特化したイネーブルメントプログラムを始めたり、中長期のワークフォースプラン策定から戦略的異動やマネジメント育成を人事部門と協力して進めています。
事業本部長に求められること
エンタープライズ事業本部という200名を超える組織のマネジメントは、私自身にとっても新たな挑戦です。自身の未熟さを痛感するとともに、強烈なアンラーニングに適応すべく日々精進しております。おぼろげながら事業本部長としての役割も見えてきました。
1. 行き先を決める
組織の中で各自がバラバラな方向に動いてしまうと、組織の力が分散してしまいます。
目指す目標を定めて、方向を揃えることは当たり前のことではありますが、言うのは簡単で実践が難しいことでもあります。
大きな目標を掲げて、短期と中長期の両視点を切り替えながら、鳥の目、虫の目、魚の目で状況や変化を捉える。
行き先に旗を立て、実行しながら素早く軌道修正をし、正しい戦略にたどり着く舵取りが必要です。
よりシンプルかつ明確なメッセージを打ち出すこと、より中長期の3〜5年先の解像度を上げて、大きな成果に繋がる先んじた取り組みを仕掛けていけるようレベルアップしていきたいと考えています。
2. スピードにこだわる「Speed is king」
事業における競争優位性の要素は様々ですが、マルチプロダクト戦略においては実行力、そしてそのスピードこそが最も重要です。
実行のスピードが早ければ、小さく早く失敗して、早く正解にたどり着くことができます。
スピードを上げるためには、極力無駄を省くことがポイントであり、内向きの業務や調整ごとを減らし、顧客価値に向かった業務の時間を増やしていくことが必要です。
各自がアイデアを出し合い、違和感があれば意見を述べ、対話・議論しながら最適な方法を模索していきます。その際には、新しいことを始めるのも大事ですが、古くからある慣習や形骸化したルールなど、やめることはもっと大事です。
実行のスピードを高めるうえで、事業本部のプランニング部が大活躍しています。
社の歴史の中でも誇れる少数精鋭のチームが組成されており、事業貢献に対するマインド、アイデアを具現化するスピードと正確さ、各部との調整や施策を推進するプロフェッショナルとして非常に頼もしい存在です。
3. 仲間を集める・経営チームを作る
事業本部の運営は幅広い領域にまたがり、過去の経験や専門性を超えた領域の意思決定にも多く関わります。パッカードの法則にもあるように、事業成長の機会以上に、組織を成長させることが求められ、自身の限界が組織の限界になっては本末転倒です。
そうならないためには、背中を預けられるリーダーをいかに増やせられるか、その人たちがチームとして掛け算で成果を生み出すことができるか、自分の期待を超えて実行できる組織を作ることが求められます。
つまり、(自身が関わる)直接マネジメントから、 間接マネジメントの比重が高まるということです。
このマネジメントについて、SmartHR 創業者の宮田さんから教えてもらった例えを紹介します。
直接マネジメントはボーリング:自らボールを投げて直接ピンを倒して点を取る= 自身が直接的に課題解決する。
間接マネジメントはビリヤード:起点となる手玉から間接的にボールを連動させて点を取る= 有機的な組織を設計し、各組織が課題解決していく。
私自身も間接マネジメントの難しさを感じながら、期待を超える成果が生み出される醍醐味を日々感じています。
私も採用活動にも積極的に関わり、一番多くの時間を使っています。
幸運なことに発足時に各組織から集まった人たちに組織を支えていただいていますが、より再現性を持って次世代のSmartHRを担う人材の採用・育成していきたいと考えています。
4. ビジョンを啓蒙する
商談や顧客の決裁層との席に呼んでいただく機会を多くいただきます。
私自身も、週に1回から数回、顧客と直接お話しする機会があります。
世の中のトレンドを日々インプットはもちろんのこと、「御社にとって〜」、「自社としては〜 」といった提言・ビジョンを伝える実践をしていきながら、共感を増やしていくことが必要です。これからもより見識を広げて、知識や人のネットワークを繋げる機会を能動的に作っていきたいと考えています。
5. 挑戦を応援する
マルチプロダクト戦略の実現の道のりは長く、挑戦は長きに渡り続くため、様々な取り組みは最初から上手くいかないことが当たり前だと思った方がいいくらいです。
銀の弾丸や特効薬で組織が変わって、すぐに大きな成果が出るということはなく、マラソン選手が、あの電柱まで、あの角まで頑張ろう…と走り続けるように、小さな一歩一歩を刻むことを心がけます。
挑戦する人たちはときに困難に心が折れそうになるときもありますが、ともに対話し、助け合い、応援することが組織全体を前に進めることに繋がります。
何度も読み返しているファーストリテイリングの柳井正さんの著書「経営者になるためのノート」にもあるように、やると決めたことは徹底してやりきり、最後まで諦めずに挑戦していくことが大事です。
困難だからこそやりがいがある
SmartHRでは、マルチプロダクト戦略を実行していくうえで、プロダクトカットではなく市場カットで組織を作っています。
顧客に対して多様なプロダクトで価値を提供することを狙っており、そのためにいろんな人たちとチームで協働することが求められます。
SmartHRでは、各自が主体的に行動し、チームの一員として価値を発揮することが期待されています。共通の目標に向かって協力し合うカルチャーが根付いており、チーム全体での成功を喜び合う風土が形成されています。
また急成長するスケールアップ企業で働くことは、多くの機会に恵まれます。事業と組織が急成長する環境では、新たな挑戦が次々と現れ、その機会を自ら掴むこと、それを乗り越えることで得られる達成感は計り知れません。企業の成長と自身の成長がリンクする環境は非常にやりがいに満ちています。
これからも個々の成長を支援する体制を強化し、継続的にサポートしていきたいと考えています。
私たちは労働にまつわる社会課題という非常に巨大で複雑な課題に向き合っています。
急成長・急拡大するスケールアップ企業ならではのカオスを楽しみながら、私たちと一緒に答えのない社会課題に挑みませんか?
We’re hiring!
次回は、VP of Engineering 森住さんの記事をお届け予定です!(記事はSmartHR TechBlogにて公開予定です)
前回のVP連載記事はこちら