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【イベントレポート】プロダクトチームの責任者が語る「ここがまだまだ!SmartHR」公開雑談

2023年10月31日にSmartHRの開発サイドについて話すイベントを実施しました。
テーマは、「プロダクトチームの責任者が語る"ここがまだまだ!SmartHR”」。

SmartHRの社員数は900名を突破。社外の方から「もう完成されているのでは?」といった声をいただく場面も増えてきました。しかし組織が変化や成長を続ける中で、常に新しい課題が生まれ続けている状況です。

そこで今回は、開発組織の責任者3名がまだまだ未完成なSmartHRのプロダクトや組織について語り合いました。当日の様子の一部をレポートしていきます。SmartHRに興味を持っていただいている方、伸びしろについて知りたい方におすすめの内容です!


話者とトークテーマの紹介

メインスピーカー

安達 隆(VP of Product Management)
2009年にチームラボ株式会社へ入社し、受託開発等に従事。2012年に株式会社Socketを共同創業。Eコマース領域でSaaS事業を立ち上げ、KDDIグループに売却。株式会社メルカリにて社内業務システムの開発を担当したのち、2019年にSmartHRへ入社。2020年に執行役員・VP of Product Managementに就任。プロダクト戦略の策定と組織作りを推進。
X:@asanebo_

森住 卓矢(VP of Product Engineering)
2012年からウェブ業界で働きはじめ、受託開発や事業会社でのSaaS開発を経て2018年8月にSmartHR入社。バックエンドエンジニアとしてSmartHRの開発に携わりつつ、スクラムやアジャイルの普及活動を行う。その後、オプション機能を開発するチームのプレイングマネージャーを担当し、30名ほどのマネジメントを行うエンジニアマネージャーを経て、2022年1月より現職。
X:@t_morizumi

宮原 功治(VP of Product Design)
イベントオーガナイザー経験後、音楽スタートアップを共同創業しデザイン責任者を務める。2016年以降、プロダクトデザイナーとして複数社のプロダクトデザインを請け負い、その後freee株式会社でサービス開発とデザインシステムの立ち上げに従事。2019年6月にSmartHRへ入社。プロダクトデザイングループの立ち上げと、コンポーネントライブラリ『SmartHR UI』のリニューアルを主導。2021年1月現職に就任、現在はメンバーの活躍支援や環境整備も担う。
X:@OujiMiyahara

モデレーター

佐々木 昂太(Product Marketing Manager)
UCLA 数学科卒業後、コンサルティングファームに入社し、DXを基軸とした事業戦略~組織改革、アナリティクス、業務改革等のプロジェクトに従事。2018年よりSmartHR 経営企画として入社し、新規プロダクトの立ち上げから既存プロダクトのグロース、プリセールス組織の立ち上げを経て、現在はPMM組織の責任者を担う。
X:@kosasaki7

トークテーマ

  • Session1:プロダクトの“まだまだ”

  • Session2:組織の“まだまだ”

  • Session3:その他の“まだまだ”

ホワイトボードソフトウェアMiroを用いながら、トピックスを膨らませての公開雑談となりました!

miroの画面キャプチャ。パネルトークのテーマや質問のコーナーなどがある
当日のmiro。参加者からの質問が適宜投稿された

SmartHRの次の成長を作るためのキーワード「マルチプロダクト戦略」

トークセッションに入る前に、SmartHRで掲げるキーワード「マルチプロダクト戦略」について触れていきます。労務管理のプロダクトからサービスを開始したSmartHRですが、2019年より事業の第2の柱としてタレントマネジメント領域のプロダクトも展開。直近はスキル管理や配置シミュレーションなど、年に1、2個のプロダクトを継続して提供しています。
そんな中、次の成長を作るキーワードは「マルチプロダクト戦略」。共通のプロダクト基盤の整備や開発を行うことで、より効率的な開発やプロダクト間のシナジーを生むことを狙いとしています。

Session1:プロダクトの“まだまだ”


佐々木:プロダクトの“まだまだ”について、まずはマルチプロダクト戦略に関わるところから話していければと思います。森住さん、「マルチプロダクトReadyにすること」を挙げていますが、これはどういう状態でしょうか?
 
森住:まず“マルチプロダクトReadyじゃない”部分の話からできればと思います。SmartHRの歴史としては2015年に、1つのアプリケーション「SmartHR基本機能」の提供から始まって、その後、年末調整や雇用契約などのオプション機能がたくさん生まれて進化していったという流れなんです。だから例えば、権限設定については、年末調整や雇用契約などのアプリごとに存在していて、各所で権限を設定しなきゃいけない状態になっています。また、人事評価の入力依頼や従業員サーベイの入力依頼など、従業員側にタスクが発生することもあるのですが、そこもまたアプリごとにバラバラになっていたりします。管理者にとっては統一管理ができないという点が、従業員にとっては、タスクが各所に散らばっているといった点が課題かなと。
全体的に共通基盤がなくて、マルチプロダクトReadyではない状態なんですよね。今まで「とにかくプロダクトをどんどん作るぞ!」と意気込んでサービスを大きくすることに注力していたので、基盤整備がおろそかになっていた部分もあって。今こそ、権限基盤やタスク基盤を整備して、マルチプロダクトとしてシナジーを持った状態でお客さまに提供することを目指したいですね。

森住さん(VP of Product Engineering)の写真
森住さん(VP of Product Engineering)

 安達:森住さんの言う基盤整備の課題感は一番大きいところですよね。それとは別に「データ基盤」という観点でもまだまだ課題があるんです。プロダクトの効果を測定するためにデータを見ているんですが、そのデータ基盤の整備が充分ではありません。プロダクト単位での分析は現在もある程度はできているのですが、プロダクトを横断しての分析や仮説検証があまりできていないのが課題です。
マルチプロダクトでは、既存顧客へのアップセルが重要です。そのためにはプロダクトのデータに加えて、契約や商談時のビジネスデータも活用していく必要があるのですが、まだ整備が追いついていない状況です。

安達さん(VP of Product Management)の写真
安達さん(VP of Product Management)

宮原:デザインの面でも、ここにきてアプリ間の細かなUIの差が生まれてしまっているという課題を感じています。これまでオプションの機能・業務単位ごとに都度最適なUIを開発してきたんです。でも、マルチプロダクトとしてお客さまがSmartHRの複数機能を同時に利用するシーンも増えてきた中で、「あれ、この画面とこの画面で使い心地が違うぞ?」といった場面も出て、お客さまの業務を阻害してしまうことも増えてきているかな……と。デザインシステムやコンポーネントライブラリの開発などは既に注力して整備できているんですけど、それぞれの業務ドメインを深堀りする中で発生したわずかな差の統一や、横軸でプロダクト全体を見ることはこれから取り組んでいきたいです。

宮原さん(VP of Product Design)の写真
宮原さん(VP of Product Design)

 佐々木:プロダクト基盤に投資することについては、難しい意思決定だと思うんですが、いつ頃この考えに至ったんですか?
 
安達:2022年の10月に来期の組織編成の相談をVP、CxOくらいのレイヤーで話をしていて、その際にプロダクト基盤の概念も入った組織構造のアイディアを提案しました。そこから「いいじゃん!やろうよ!」と一気に話が進み、プロダクト基盤のチームができた感じです。既存の事業も伸ばしながら、長期的な投資としてどれくらい基盤に割くかは悩ましいところでしたね。
 
森住:2022年と比べて「基盤整備をやらないと、ここから先伸びないんじゃない?」という気運が社内にあったこともあり、今回の組織変更が進んだ感じはありますね。マルチプロダクト化を進めていく中で「ここからビジネスを伸ばすなら絶対やらなきゃダメでしょ!」といった必要性が見えてきて、一気に決めた感覚です。かっこよくいえばジャスト・イン・タイムというか(笑)
 
安達:どっちかといえばギリギリ間に合ったという感覚ですよね(笑)

Session1:Q&A 

Q:基盤のスコープはどう決めていますか?複数プロダクトで必要な機能になったらというボトムアップな形と、これは絶対に必要というトップダウンな形とさまざまありそうですが、定義している範囲を知りたいです。

Session1の質問のmiro画面キャプチャ。

安達:いろんなパターンがありますね。複数プロダクトで必要になって作っていくボトムアップの形もあったり、中長期のプロダクトの姿を描いたうえで先回りで作っていくというトップダウンの形もあったり。これに限らずですが、かっちり決めなくても進められる、というのはSmartHRの特徴だと思います。 

佐々木:決めないということに対して、プロダクトデザインの視点からはどうですか?
 
宮原:プロダクトデザイナーこそ、「決めないカルチャー」を作っているかもしれないんですが(笑)。SmartHRではよく言われるUIデザインとUXデザインという領域を一切分けずに考えていて、アウトプットの出し方もFigmaやドキュメントなど、手法を限定しないことにしているんです。プロダクトデザイナーは開発チームの中で品質や生産性を高めるフェーズで活躍する職種なので、他の開発メンバーとも会話を重ねながらプロダクトの価値の打ち出し方を臨機応変に決めていく動きをしていますね。僕らはまさに決まっていないままでも進む、というSmartHRらしい働き方をしている職域だと思っています。

Session2:組織の“まだまだ”

佐々木:皆さんが共通であげている、採用に関する“まだまだポイント”について聞きたいと思います。

Session2 組織についてのmiro画面キャプチャ

安達:特にシニア層の採用がまだまだですかね。マルチプロダクトでは経営層がすべてのプロダクトをがっつり見ることはできないので、プロダクトごとに強い人を置く必要があります。社内での育成も大事なんですが、外の知見やプロダクトを伸ばした経験をもった人にどんどん入ってきてもらうことで、プロダクトの作り方やカルチャーをアップデートできればと。SmartHRはシニア層の採用が弱いことが課題です。マルチプロダクトのおもしろさや社会に与えるインパクトなど、事業自体の魅力をもっと発信していきたいですね。(参考:「SmartHRは自分たちの成功体験を一回捨てるフェーズだと思う」SmartHR PM座談会
 
森住:シニアも必要な一方で、新卒採用はさらに“まだまだポイント”かと。今までやってこなかった新卒採用を来年から始めます。選考プロセスも作ったところなので、これから知見を貯めていきたいですね。また、エンジニア領域でも採用強化は行っていきたいです。多種多様なプロダクトを作っていく必要がある中で、圧倒的に人的ボリュームが足りていません。今後の事業拡大やプロダクトの成長に必須だと感じています。
 
宮原:プロダクトデザイナーの採用については、“まだまだポイント”としては女性比率が低いことですね。まだまだどころか切腹物という感じですけど(笑)。プロダクトデザイナー13名中1名しかいないんですよ。
僕らは設立当初から価値観などのカルチャー作りを強化しようと動いていたので、強い組織ができた一方で、ここに来て同質化が進んでいる側面もあるんです。この先は世の中のベンチマークになるような組織にしていきたいと思っています。でも、そうなったときに当たり前のことができてないという現状は、早く変えたいなと。
ジェンダーに限った話ではないのですが、組織の受容性を高めることで多様な働き方ができ、だからそこに多様な人が集まってくる、という仕組みを担保していきたいです。併せて中途人材の育成も図っていきたいと考えています。これまでは新しく入って来てくれる方が知見をもたらしてくれることに甘んじていて、入社後の育成文化がなかったんですよ。SmartHRが入社者の方にとっても豊かなキャリアになれるような人材開発の体制づくりをしていきたいですね。
 
佐々木:おっしゃるとおり、新卒採用・中途採用を含めた人材開発を強化していかなければというところは“まだまだポイント”ですね。安達さんが「失敗を許容するカルチャー作り」を“まだまだポイント”に挙げていますがこれはどういう背景ですか?
 
安達:マルチプロダクトの文脈で、新しいプロダクトを作っていくには失敗を恐れずにチャレンジすること、失敗を学びに変えるサイクルを早く回すことが必要になると思っているんですよね。未知のマーケットで新しい価値を生み出すためには必要なカルチャーだと思っていて、そこがまだ我々の組織力に欠けているポイントだと思うんです。
SmartHRは今まで大きな失敗を経験せずにうまく進んできたが故に、失敗するかもしれないけど試してみるというアクションが得意ではないと思っています。単にスローガンとして「失敗を恐れるな」と言うだけではなく、例えば失敗してもチャレンジをした人が評価される仕組みを作るとか、攻めの人材も活躍できる場を作っていきたいですね。

モデレーターの佐々木さん、安達さん、森住さん、宮原さんが座って話している写真
左から、モデレーターの佐々木さん、安達さん、森住さん、宮原さん

Session2:Q&A

Q:チーム数の多い中、リモートが増えるとサイロ化が進みそうだと思うのですが、何か対策はありますか?

森住:マルチプロダクト化に伴い横連携が必要とされるため、開発スピードは遅くなりがちです。だからチーム内で完結するのは良いことだとは思うんですが、そのうえでSmartHRでは横のチームの仕事にも触れる機会を一定設けています。毎週のテック定例では障害情報や開発における取り組みの事例共有もなされ、担当外プロダクトでも必要な情報は取れます。また領域ごとのコミュニティも存在し、共通化すべき知識とチーム内で完結する情報は棲み分けされていますね。
一方でリモートワークの最適化は課題と感じています。もともと「顔を合わせずに開発できるか!」というオフライン開発文化があった中、コロナ禍でリモートにならざるを得なくなった経緯もありました。働く場所が多様化していることを前提に、働き方を模索していきたいですね。

Session3:その他の“まだまだ”

佐々木:最後に、ちょっとおもしろそうなキーワードがあるので触れてみたいと思います。宮原さん「密造酒作りのバランス」とはどういうことでしょうか?

談笑する安達さん、森住さん、宮原さんの写真

宮原:“密造酒”についてやっぱり話すんですね(笑)。
“密造酒”とは僕や佐々木さんの間で流行った言葉だったんですけど、ロードマップやミッションには含まれないボトムアップで生まれる成果のことです。
僕が知っている中で最たるものはデザインシステムですかね。会社全体のコンセンサスをとったわけではなく必要と思った人がボトムアップで作った結果、会社としても重要なものになっていったんです。
現状、会社として現場で生まれたものを活かすこと自体はウエルカムですが、成果を出した人を適切に称賛したりインセンティブを与える仕組みがない。それが整備されると新しいアイデアや価値を生み出す人が増えると感じています。リリースしてからのバックアップはありつつも、ある程度アングラで進むおもしろさもあると思うので、個々での“密造酒”の動きを認める懐の深さが必要ですよね。
 
森住:僕が入社する前はやっていたらしい、プロダクトエンジニアが小さめのプロダクトを作ってみる、といったハッカソンはまた復活させてもおもしろいかもしれませんね。
 
安達:2人の話を踏まえて、これからも組織として余白は持っていたいと感じましたね。前段の「決まってないままでも進む」というSmartHRの特徴にも通じるのですが、短期的なビジネスに直結することだけではなく、余力で何かに取り組む、アイデアを生む、といった意識も大事にしていきたいです。

最後に

森住:採用活動をしていると「もう100%できあがってる会社なんでしょ?」と絶対言われるんですけど……。
 
宮原:本当にそれ、よく言われます(笑)。
 
森住:ゆくゆくは今出してるARRの10倍、100倍規模への成長を目指しているので、まだまだこれから課題も山盛りだと思っています。
 
安達:新しく入社してきた人にも「思ったより整ってなくてびっくりしました!」とほぼ言われる状態なんで、外から見るとそこまで整って見えるんだという驚きがありますよね。
 
佐々木:非常にスピード感を持ってプロダクトを開発し、事業を成長させる中で、状況も目まぐるしく変わるからこそ、組織や会社を作っていくおもしろさがまだまだたくさんあるってことだと思います!

miroの画面を見ながら話している、佐々木さん、安達さん、森住さん、宮原さんの写真

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