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SDGs史#8 70年代 エネルギーの選択 日本とデンマーク 2/2

 なぜ、デンマーク世界SDGsランキング1位になったのか??
 なぜ、日本「化石賞」を受賞したのか??
 SDGs史#7にて、日本デンマークエネルギーの構成の違いを記事にしました。この記事では、70年代から今に至った歴史の種明かしを試みます。ザクっとですが、物語り的に書きます。
 日本とデンマークの違いは、現在を考えるうえで、すごくよい事例だと思います。少し長めですが、太字のキーワードだけでもご覧ください!

 エイモリ―・ロビンス氏の「ソフト・エネルギー・パス」が出版されて間もなく、第二次オイルショックが起きます。日本では、省エネブームを支える書籍の一つとなりました。
 でも、エイモリ―の書には、二つの誤算がありました。

 一つは、日本は、1972年!に田中角栄が「日本列島改造論」を発表し、工業化と都市化を文字通り、「コンピューター付きブルドーザー」として国土を開発していきました。エネルギー需要はどんどん増え続けます。

 もう一つは、日本が個別技術の改良による省エネに成功体験を感じ、それに固執するようになったように思います。そのため、ソフト・エネルギー・パスの本筋を見失ってしまいました。

 実は、日本は、1970年前後で、「ソフト・エネルギー・パス」につながりうる選択を、いくつかしていました。1969年には、エネルギー会社は、産業公害エネルギーセキュリティへの対策ため、LNGの導入という英断を世界に先駆けてしています。

 もちろん、天然ガスも脱炭素を目指すなら、脱却すべき資源です。ただ、石炭、石油に頼り切るよりはましでした。でも、化石燃料主体の体制維持は、石炭を利用する口実にもなりえたと思います。結果、「化石賞」につながったともいえます。

 また、「サンシャイン計画」を1974年より継続的に実施し、太陽光発電の技術開発を世界的にもリードしていました。他にも、太陽熱利用、風力発電、海洋エネルギ一利用、地熱エネルギー利用などの研究開発に資金を投じて先行投資をしていたんです。個別技術は、十分そろっていたはずです。

 さらに、省エネ技術公害防止技術も世界の先端を走ります。エイモリ―・ロビンス氏を訪問したい祭、「私は日本から学んだんだ。ここで学ぶものがあるのかい?」と微笑みました。大の親日家で、カタカナの名刺を持っていたくらいです。それくらい、その頃の日本の『技術』は、尊敬されていたんです。

 「ジャパン・アズ・ナンバーワン」を謳歌する要因のひとつでした。

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Photo by Erik Eastman on Unsplash

 しかし、日本が増加するエネルギー需要に対し、石油の代わりにエネルギー源として「原子力発電」に頼りにしました。「ハード・エネルギー・パス」の象徴です。1960年代後半には、商業利用が実現していましたが、エネルギーを支える始めたのは、実質、1970年代以降です。立地をめぐる国と自治体、住民の関係では、対話の機会が少なかったのはよく知られているところです。よく考えると、50年近い根深い課題がありそうです。

 しかし、ここでは、評価をしたいのではありません。近年の日本のエネルギーの構成は、ほぼこの時期に基礎がある、という事実の指摘です。

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 一方、デンマークは、どんな道を歩んだのでしょうか。

 第一次オイルショックの時は、日本と同じ状況でした。石油に依存した工業国、そして、1973年に政府は、原子力発電所の建設計画を発表します。

 これに対し、デンマーク工科大学の科学者と民間団体が「代替エネルギー計画」を発表し、議論が巻き起こります。当然、「非現実的」と考える人も多かったようです。でも、この国には、「対話と相互人格」を理念としたグルントヴィ(1783-1872年)がけん引した合意形成・コンセンサスを重んじる教育システムが普及していました。原子力の是非を国を挙げて実施し、1985年には原子力利用を棄却しました。チェルノブイリ原発事故の前にそれを実現しているんです。

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阿吽の呼吸の文化の日本と、対話の文化のデンマーク。類似と差異。
デンマークはじめ北欧では、「ヤンテの掟」が重んじられているようです。
よく言えば「調和を重んじる」、悪く出ると「出る杭は打たれる」
他者を尊重することを重んじる、そんな文化を再発掘したいですね。
「ヤンテの掟」
1:あなたが特別な存在だと思ってはならない
2:あなたが人と同様に有能だと思ってはならない
3:あなたが人より賢いと思ってはならない
4:あなたが人より優れているとうぬぼれてはならない
5:あなたが人より物知りだと思ってはならない
6:あなたが人より重要だと思ってはならない
7:あなたが人より何かに秀でていると思ってはならない
8:あなたは人を笑ってはならない
9:あなたが誰かに助けてもらえると思ってはならない
10:あなたが人に何かを教えられると思ってはならない

 その後、再生可能エネルギーを主としたエネルギー計画でも、国民的議論の中を通じて策定していきました。結果、今では、本当に電力の半分を風力発電を占め、その他でも地域熱供給の仕組みで効率よく暮らせるようになっています。あと、電気だけでなく、暖房や給湯は、焼却炉や工場の廃熱をとてもスマートに利用しています。
 ただ、一方で、今でも北海油田の天然ガス、石油には頼っている事実もあります。

 そして、この風力発電を選んだことで、デジタル産業の育成にもつながった面もあります。これは、風は自然のお天気次第なので、それをうまく使うには、情報技術が欠かせないんです。もちろん、その他のデジタル産業振興が功を奏した結果です。それらが合間り、スマートシティでも世界の先端を走っています。

 デンマークに関する記述は、中島建祐氏の書籍によるところが大きいので、ご参照ください。

 以上、1970年代以降の日本とデンマークのエネルギーをめぐる歴史を書いてみました。本当は、これだけで本になりそうな内容ですが、サクッとまとめてました。その分、飛躍が多くなった点は、ご容赦ください。

 伝えたい点は、エネルギー政策は、根幹に利用する人の「思考習慣」「対話」が大切という点です。『技術』だけの問題では、全くないんです。だから、SDGsもどんどん対話の機会になればよいな、と思っています。
 次回は、その対話の肝となる「教育」の話を書きます。今度は、スウェーデンのデザイナーさんがSDGsのロゴを創作したお話を紹介します。

 長文、お読みくださり、ありがとうございます!!!!

 これまでの文章は、『サステイナビリティ私観』をご覧ください。
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