SDGs史 #4 「人間環境宣言」6ページから始まる世界の指南書
1972年ストックホルム人間環境会議の最大の成果物「人間環境宣言」を解説します。
会議では、11日間にわたるタフな対話を経て、「北」側と「南」側は、歩み寄りを見せました。妥協はあったものの合意宣言を出せたのです。
両者の「人間」と「環境」に関する危機感が可能にしたと思います。
会議開始の時の雰囲気は、先日、記事にしました。
会議では、次の6つの主要テーマに絞り、議論を重ねたようです。
①人間居住問題
②天然資源管理問題
③国際的な環境汚染問題
④環境教育、情報、文化問題
⑤環境と開発の問題
⑥国際的機構問題
この当時、今ほど国際的な人の移動がない時代でした。そして、インターネットもないわけです。
「北」側の高官が、途上国の置かれた現状を把握するのも、断片的だったでしょう。
「南」側の高官は、「北」の豊かな暮らしを知るエリートが多かったでしょうが、その負の側面に目を向けることは少なかったと思います。
お互いの状況を把握しないで、対話により落としどころを見つける必要がある状況でした。
かけがえのない地球(Only One Earth)の理念や人間環境が大事なのは、よく分かる。
でも、相手の言い分は腑に落ちない。そんなジレンマだったと思います。
結果的には、そんな同床異夢が、合意をもたらしたともいえます。異夢の部分を切り取って、過小評価できることもできますが、一緒にいられる同じ床を共に創りあげた経験が、「人間環境宣言」の最大の意義だったと私は理解しています。
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宣言の中身を見てみましょう。たった?6ページなんですよ。Amazonのジェフ・ベゾスの会議資料ルールと同じ分量です。なんとなく、興味深い点です。ちなみに、外務省によるSDGsの訳は、37ページです。
ただ、国連の文章は、いわゆる文系文章と言われているものです。曖昧で、数値的なファクトが書かれません。SDGsも本文自体は同じです。ですが、数値目標が別途あり、それが50年の進化です。ですが、曖昧さは、最初の合意にはメリットになりました。
ベゾスが当時の宣言を会議の場で読んだら激怒するでしょう。でも、家では、当然、超長期ビジョンを考える参考にしているかもしれません。もちろん、ずっと先の未来を観ているので、参考にすぎないかもしれません。
さて、中身の話です。まず、宣言の中で、「共通の見解」が述べられます。7項目が指摘されており、ざっくりと整理すると、次の項目です。
①人間と環境の関係の理解
②人間環境が、人々の福祉と経済発展の主要課題との認識
③生物圏への影響を考慮する必要性
④途上国と先進国の格差の是正の重要性
⑤産業、科学技術社会の進歩への期待
⑥世界が転回点との認識と将来世代のためも平和と発展
⑦政府・自治体の責任と国際間の共通の利益への着目
そのあとに原則として、26項目が各論として挙げられています。17ゴールでも多いのに!!覚えきれないですね。覚える必要ないですけど。
〔環境に関する権利と義務〕、〔天然資源の保護〕、〔再生可能な資源〕、〔野生生物の保護〕、〔非再生可能な資源〕、〔有害物質の排出規制〕、〔海洋汚染の防止〕、〔経済社会開発〕、〔開発の促進と援助〕、〔一次産品の価格安定〕、〔環境政策の影響〕、〔環境保護のための援助〕、〔総合的な開発計画〕、〔合理的計画〕、〔居住及び都市化の計画〕、〔人口政策〕、〔環境所轄庁〕、〔科学技術〕、〔教育〕、〔研究開発の促進、交流〕、〔環境に対する国の権利と責任〕、〔補償に関する国際法の発展〕、〔基準の設定要因〕、〔国際協力〕、〔国際機関の役割〕、〔核兵器その他の大量破壊兵器〕
どうでしょうか?人間環境宣言が、「SDGsの原型」というのもうなずけますよね。多くが重なっています。
一方、時代が変わり、重点分野も移り変わった部分があります。
この時点では、気候変動の影響は認識されていませんでした。マイノリティーへの配慮、地域の重要性などは盛り込まれていません。徐々に拡張と深化をしていきました。
宣言自体は、11日間の議論を6ページにまとめたものです。
その後、共創的に世界的な議論へと発展していった点が大切でした。
なお、この宣言は、会議の場でいちから、話し合って創りあげたわけではありません。この点は、強調しておきたいです。
たたき台がありました。会議の事務局長モリス・ストロングが、環境問題の専門家バーバラ・ウォード、ルネ・デュボスに委託し、専門家の知見をまとめ上げていました。それが、『かけがえのない地球―人類が生き残るための戦い(1972年)』という書籍・報告書です。作成の際には、世界58カ国152人の専門家との意見交換、修正を行っているんですよ。
*ちなみに、この手の本って、中古で高値で取引されたりしてます。
私は、元上司の手垢とメモのついたものをコピーしていました。
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国連と科学者との連携は、この時点から綿密なんですよね。ストロングさん、すごし!です。こうした科学者の知見が集まる潮流を創ったレイチェル・カーソンさんを次回、改めてご紹介します。
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