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デジタル化の「しくじり」あるあるを語り合おう(第2回定例会の振り返り)

このnoteでは、2023年4月から、滋賀県内自治体の情報政策・DX推進関連部署の職員有志が中心となって立ち上げた「滋賀県スマートシティのあり方研究会」の取組みについて、主に毎月実施する定例会で参加者が書いた振り返りメモを中心に、情報発信します。

これまでの失敗から「あるある」を見つけ出す

4月から始まったこの研究会、第2回まではアイスブレイキング期間として、自治体職員限定での意見交換を行っています。

今回はある参加市職員からの提案で、自身が取り組んだデジタル化に関する失敗談を共有しあおうという話になりました。

行政は間違いを犯してはならない、現行の制度や政策は間違っていない、そのような、いわゆる「無謬性神話」が存在するという指摘がありますが、厄介なのは、間違いを犯したときに、それが間違いであると認めにくくなることです。

行政の「無謬性神話」から脱却するためには、
・政策実施後に状況に応じて柔軟に見直しを行える仕掛けを立案段階で組み込むこと
・政策をより良くしていくために、目標と実態の乖離があり得る前提で、実施状 況や現場の実態をより的確に把握すること
・見直しは悪いことではなく、必要があれば躊躇なく改善することが善いことであるという意識を持つこと
が重要なポイントとなる。

行政改革推進会議「アジャイル型政策形成・評価の在り方に関するワーキンググループ提言」より
https://www.gyoukaku.go.jp/singi/gskaigi/agile.html

何より、失敗を失敗と言えないような人間関係では、心理的安全性の観点でもよくありませんし、むしろ「失敗は学びであり、発見である」という考え方を参加者どうしで大切にしあいながら、この研究会を取り組めたらと考えています。

そこで、今回は担当者として取り組んだデジタル化の様々な失敗談を語り合い、その中から「あるある」を見つけ出すというワークショップを行いました。以下の2点をルールとし、ブレイクアウトルームで会話をしあいました。

  • 決して誰かを責めることはせず、自らの気づきについて話すこと

  • 他の人の発言から、新たな「気づき」を見つけること

前回と同様に、参加者の振り返りコメントを共有します。

省力化のつもりが負担増になる

デジタル化して省力化したはずなのに、結果トラブル対応やメンテナンス対応で、余計に人手がかかってしまうといった事例について、うまく言えないですが何か考えさせられるところがありました。

解決したい何かがあって、それがデジタル化によって市民のニーズに応えられることがあったとしても、実際に導入すると、行政側や施設側のスペックが足りない、あるいは受託者含めて想定外の対応が起きることで、負担増になったり、あるいはトラブルになるケースもあるのだと、改めて考えました。

色んなしくじりをお聞きしていて、何をしたくてデジタル化するのかを、よく考えないといけないんだなと感じました。思考停止で「とにかくデジタル化する」「新しい考え方だから取り入れる」ではうまくいかないんだろうなと思いました。

「省力化するつもりが、却って負担増になってしまった」という話は、まさにあるあるですね。ここで取り上げられたのはあくまで運用側の負担増に関する話でしたが、たとえ利用者側の負担が下がったとしても、仕組みが持続しないと、どうしようもありません。

推進担当と現場が同じ方向を向くために

行政機関でのDXへの取組みがパフォーマンス化してしまっているのではないかと感じます。もちろん業務改善や住民の利便性向上に繋がっている事例があるのも事実です。DX担当としては、業務改善や利便性向上を目的に取り組んでいますが、なかなか他の職員に理解してもらえてもらえず苦しいところです。職員のDXへの意欲をどのように高められるか、市町と事例を共有しあいたいです。

「DX推進として現場の業務改善のために熱意をもってDX化をすすめているのに、現場でストップがかかって辛い思いをした」という話を聞いて、悲しい気持ちになったとともに、一方で、減点主義・失敗が許されない文化の中で、現場の責任者としては、今のやり方を変えたくないと思うのも当然ではないかとも思いました。
どうやれば両者が同じ方向を向けるのか。 自分の中で、まだ答えは見えていません。

やるべきこと・やろうとしていることが似通っている自治体が多い中で、思いもよらないところの失敗事例を共有しあえたのはとても有意義でした。
また、普段は市町情シス担当の横のつながりはありますが、事業課さんの話を聞けたのも貴重な機会でしたので、内部でも同じように事業課とざっくばらんに意見交換をする機会ができるといいかなと感じました。

情報部門だけでなく、他部署の方を含め意見交換できたことは大変有意義に感じました。業務担当課と管理部門は本来協力関係であるべきはずですが、同じ方向に(心から)向くことは難しく、いかに大変かと。デジタルを政策に取り込むということも大切ですが、政策にいかにデジタルを取り入れるかということも、今後一緒に考えていきたいと思います。

この研究会の課題でもあるのですが、この研究会の市町参加者は情報政策・DX推進の担当者が多いなか、本来このような研究会は、できるだけいろんな部署の人たちが集まれたらという思いがあります。

本来地域課題解決や官民連携に「担当」という概念はないはずなのですが、どうしてもそこが縦割り的な意識になってしまいます。この辺をなんとか突破できたらなぁと思っています。

今の振り返りは、当時の振り返りと変わることがある

当時失敗したと思っていたことが、後々振り返ってみると「こういう捉え方もできるのか」と思うことがあります。実は今回出てきたしくじり例のなかに、数年前に聞いた話題があったのですが、今回同じ話を聞いてまた違った視点が見えたのが、自分のなかで印象的でした。

その出来事の評価はその時々の価値観や状況で変わるものなのかもしれないと思うと、できるだけその時にあった事実を事実として残しておくことも、すごく大事なのでしょうね。

この研究会への参加について

いよいよ6月からは、本格的にスマートシティのあり方を見つめるワークを始めます。テーマに関する参考図書を事前に読み込み、さまざまな立場の人たちとのディスカッションを行う予定です。

次回は「パーパス」について考えます。

この研究会の参加について、6月以降は自治体職員以外の方も参加可能としていく予定です。ただし最初はこの研究会の構成員からの招待制としますので、ご了承ください。行動規範なども近々公開し、少しずつオープンにしていく予定です。