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自治体のパーパスとは?(第3回定例会の振り返り)

滋賀県内の自治体や企業らが集まり、スマートシティのあり方を一緒に考える研究会、いよいよ今回から企業の方々も加わり、本格的なテーマでの取組みが始まりました。一般参加についてはまだ告知は行っておらず招待制としていますが、少しずつこのnoteを通じてオープンにしていくつもりですので、ぜひフォローしていただけたらと思います。

今回は「パーパス」というテーマで、参加者の皆さんとディスカッションをしました。参考図書にしたのは、ニューズピックス社から出版された「パーパス 「意義化」する経済とその先」という本です。

この地域における企業や自治体の「存在意義」って何なのだろうか、これからの社会に対してどのような責任を果たしうるのか。スマートシティにおける官民データ連携とは、そういった各々の存在意義や責任を踏まえて提供しうるものではないか。
また、その存在意義も、新型コロナのような社会インパクトやChatGPTのような技術インパクトなどによって、大きく変容する(その逆も有り得る)ものであり、その変化によってビジネスも再定義されていくものではないか。
そのうえで、我々はきちんと自身の存在意義を言語化し、その存在意義にあった、ステークホルダーと持続可能に行えるビジネスを、一緒に考えていくことが必要ではないか−−。

前半は県内でパーパス経営に取り組まれた株式会社オプテックスの方から、どのようなきっかけで今のパーパスの策定に至ったのか、その一環で立ち上がった「OMNICITY」というプラットフォームビジネスを事例に、お話を伺いました。そして後半は「自治体の存在意義に影響を与えるインパクトについて、その例を考える」というお題で、自治体や企業の方が混じってディスカッションを行いました。

以下、参加者からの振り返りコメントのなかから、いくつかシェアします。

市民憲章・町民憲章のようなもの

パーパスという言葉を今回の研究会で始めて知り、自治体にとってパーパスはなにかを自分なりに考えた結果、市民憲章・町民憲章をより分かりやすく解釈したものと感じました。市や町を良くしたいという気持ちをより分かりやすく明確にするためのツールとして日常業務に反映できればと思います。

市民憲章・町民憲章のようなものという考えは、なるほどなぁと思いました。「自治」に対する原則と責任のようなものですよね。そう思って自身が暮らす市町の市民憲章・町民憲章を読んでみて、納得感を持ったり違和感を持ったりしてみると、面白いかもしれません。

信頼の再定義

場としての行政機関が、法律に基づく手続きだけの場だったものから変化しつつあるというのを、自治体職員も感じ始めているのだと思いました。
例えば市役所が今後「住民の憩いの場」になっていくというのも、あり方の一つではないかなと思いますが、どうしても民間企業がそのように人を集めようとするとビジネスの匂いが漂います。行政が関わることで、住民からの信頼による人の輪を生むような場所のあり方を模索できると思いますので、そのような優しい場ができる将来を、一緒に考えていきたいと思います。

後半の意見交換で「行政には信頼がある」というコメントがありましたが、行政が持っている信頼とは何だろうと思いました。それはもしかすると「行政だから絶対に正しいはず」「すべてを任せ切るべし」という意味の信頼なのではないかなと。
今起きている行政にとってのインパクト(役割の転換)を考えると、私たち行政は、そのような信頼とは異なる、新たな意味の信頼を求められているのではないかなと思います。そのような信頼に自分たちの役割を置き換えられるよう、行政の働き方をシフトしないといけないのかなと感じました。

住民と行政の接点になっている市役所や町役場の窓口は、現在の住民と行政の関係をまさに体現しているのでしょうね。

前回のレポートでも触れましたが、行政組織ではしばしば「無謬性神話」という、行政行為や政策は元来間違っていない(間違ってはいけない)ものだという考えが存在するといわれており、行政組織内でもそんな無謬性神話からの脱却が議論されています。そして住民側からもそのような考えの見直しを訴えていけるようになると、住民と行政の関係は大きく変わっていくのかもしれません。

これからの行政経営とパーパス

行政の皆さんの業務をお聞きして印象に残ったのは、コロナ収束以降も民間企業はリモートワークが継続しているケースが多い中で、行政の方たちはリモートワークがほとんどなくなっているというお話や、行政の仕事は社会インパクトの影響は大きく受けるものの、技術インパクトだけではなかなか変革が難しいのだなという点でした。
国に観光だ〜と言われれば全国自治体でPRを行い、スマートシティだ〜と言われればデータ基盤を整備し・・・とどうしてもなってしまいます。自治体も民間も、そこに予算が張り付くから仕方がないこととは思いますが、今日のテーマでもあった「どうなりたいのか・どうしたいのか」が重要で、それによって手法も規模も変わって当然だとも思っております。

後半の意見交換で「自治体の変化は技術的インパクトよりも社会的インパクトにより大きく左右されているように感じる」というコメントがあったのですが、DXを進める中で「こんな技術がある」ということをスタートにしても取組みが上手く進まないということにも、このコメントはつながるように感じました。
また、パーパスという点では多くのステークホルダーとの相互認識が必要になると思いますが、行政経営レベルの大きな指針になるところ、果たしてDX担当部署からスタートできるテーマなのだろうか?という疑問も感じるとともに、ではどこが旗を振るかということが明確になっていないのが、行政経営の現状であり課題なのかなと思いました。

自治体の方々から「この仕事って誰がこれを求めているのか不安になる」といったことや「上から『ChatGPTを使って何ができるか考えろ』と漠然とお題を言われることがあって困る」などリアルな話を聞けました。行政サービスを提供するだけの従来の自治体の役割が変わってきている中で、現場の方だけでなく首長や幹部クラスの方も含めた、意識変革や市民のかたとのコミュニケーションについて、考えていきたいです。

自治体の上層部のほうからは、生成AIや5G技術などといった最新技術を用いることで自治体の魅力を向上させようという動きを感じますが、グループトークでのお話にあったように、住民さんが幸せになる、生活が豊かになるということを念頭に取組を進める必要があるなと改めて感じました。

参考図書のなかでも触れられていましたが、パーパスとは決して担当部署だけで決めるものではなく、あらゆるステークホルダーとの対話を通じて作られる、いわば未来に向けた持続可能な「大きな船」であるはずです。

また、その船はトップなどの誰かが作ってくれさえすればよいものではなく、その乗組員自身の意思が船の推進力になるよう、「大きな船」を一緒に作っていく必要があるのだろうと思います。そう思って上記コメントを読むと、これからの行政経営のあり方について、いろいろ考えさせられます。

今回は自治体に特化した議論となりましたが、当然企業側にも同じことが求められるはずです。そのようなマインドを官民で共有しあったうえで、スマートシティのあり方の議論を進めていければいいなと思っています。