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わたしたちのウェルビーイング(第4回定例会の振り返り)

滋賀県内の自治体や企業らが集まり、スマートシティのあり方を一緒に考える研究会、第4回は「ウェルビーイング」をテーマに取り上げました。参考図書にしたのは、ビー・エヌ・エヌ新社から出版された「わたしたちのウェルビーイングをつくりあうために--その思想、実践、技術」という本です。

ウェルビーイング(Wellbeing)とは、心身と社会的な健康を意味する概念です。「予防医学だけでなく精神的・社会的な健康に対する促進も重要である」というこの考えは今に始まったものではなく、1946年のWHO設立時から憲章などを通じて訴えられてきた考えでした。

そしてここ最近、経営、SDGs、そしてデジタル化といったキーワードに対しても、ウェルビーイングとの関係性が問われるようになっており、政府が掲げるデジタル田園都市国家構想においても「地方公共団体における地域幸福度(Well-Being)指標の活用推進」が論点の一つになっています。

そこで今回の定例会では特に「他者・社会との関係」に着目し、ともに生きていくためのテクノロジーのあり方のヒントを探り、政府が掲げる指標にどう向き合えばよいのか、考え合いました。しかし、ただ議論するだけでは時間もなく大変なので、この本の著者の方がつくられた「わたしたちのウェルビーイングカード」というツールキットを用いたワークショップを行いました。

ウェルビーイングを一般論で語る前に、まずは各々の経験から生まれた「満たされていること」に対する価値観について、カードを用いて共有しあい、それぞれの価値観の違いを知ることで、ウェルビーイングの持つ多層性について話し合いました。

以下、参加者の振り返りです。

ウェルビーイングは誰かに規定されるものではなく、お互いに伝えたり表現しあうことによって確認しあえるもの

ウェルビーイングって改めてなんだろうと思う機会をもらいました。そもそもウェルビーイングすら感じないことがウェルビーイングだと思ってはいましたが、このようなワークショップにて自分の価値観を改めて感じたり、人に伝えて、表現するということでコミュニケーションをはかることで結果的にこれがウェルビーイングじゃないかな?という感覚にたどり着くのではないかという感じを感じ取れました。でもやっぱりウェルビーイングって難しいですね。

人それぞれ、見ている世界も範囲も違うので、ひとくくりに心地よい感覚を定義できないです。ましてや国が規定できるものでもないので、結局は個々人がそれぞれ心地よさを試行錯誤しながら、生きていくししかないかなと。一番大切なのは、相関性だと思います(関係性が心地よいかどうか)。

敢えて今回あまり学術的な話は取り上げず、各々の経験談を大事にウェルビーイングって何だろう?というディスカッションをしてみたのですが、その人やその地域にとって何が「よい状態」なのかは、各々語り合うことによって初めて見えてくるものなのでしょうね。

どこ起点からウェルビーイングを会話しあうのか

このように捉えると、どこ起点からウェルビーイングを会話しあうのかは、大事なことなんだろうと思います。デジタル田園都市国家構想のなかでもウェルビーイング指標というものが取り上げられていますが、それを自律的に捉えるか他律的に捉えるかで、全然意味合いが変わってくるものなのかもしれません。

ウェルビーイングを自治体単位から語ることの気持ち悪さのようなものを少し言語化しあえた90分だったかなと感じています。
何もすべて自治体単位でまとまる必要などないわけで、場合によってはフレームありきの「べき」論やビジョンが、自発的では無い近接を生んでいるのかなと。。
そう考えたときの自治体の役割って何だろうというのを考えてみると、かなり逆転的なアプローチになって面白いんじゃないかなと感じました。

みなさんのそれぞれのウェルビーイングを伺うことができたことで、自分の価値観とは異なるけれど、そのような幸福感を持つ人もいるという気付きや納得を得ることができました。あまり他の人のウェルビーイング(幸福感)の基準を伺う機会はあまりないので貴重な機会だったなと思います。
ただ、行政施策としてウェルビーイングをとらえる場合は、一定の基準と一定の定義を持たせなければ施策としてアプローチできなくなりますので、その範囲と対象についてどこに設定するかを考えていく必要があると感じました。

ウェルビーイングって最近よく聞くようになったなあと思っていたら、デジ田のKPIだったのですね!恥ずかしながら知らなかったです。。。ということで、指標という観点で、本日ウェルビーイングについて考えてみましたが、結論として、自治体レベルで指標化するのは無理ではないかと思っています。今地域で活動しているメンバーとウェルビーイングについて考えているところなので、まずはスモールで考えてみるところからスタートしたいと思います!

皆さんの感じる達成感や幸福感は、様々な体験や考え方によるもの(異なるもの)であると思いました。すなわちウェルビーイングを指標として捉えるならば、大きな枠組みで考えてしまうと、人々は異なる価値観を持つものであるから非常に難しいものである、小さい枠組み(単位)で考えることもよいのではないかとの考え方に共感することができました。
自分の中でウェルビーイングとは何かという答えは出ていないですが、今後考えていくうえで、非常に参考になる話を伺うことができてよかったです。ありがとうございました。

価値観が違うのは当たり前なので

今まで実生活の中で、ウェルビーイングとデジタルを結び付けて考えることがなかったので(デジタルが生活様式の中で当たり前になっていて、あえて関連させていなかった?)、視点・話題として新鮮でした。
皆さんとウェルビーイングの経験を共有し、皆さんの前向きな体験を聞くことで、私自身もプラスの感覚を得ることができました。
幸せの感覚というのは個々人で違うと思うので、客観的な指標は作りにくいと思うのですが、生活において常に幸せの実感を得ると決めた人が増えれば増えるほど、社会の幸福にもつながるのではないかと思っています。
自治体としては、市民の皆さんに幸せを感じてもらえる(感じてもらえそうな)機会を提供することが大切なのかなと感じます。

価値観の共有の難しさというか、できるのかできないかということに関心が芽生えた。
正直、個人的には必ずしも共有できなくてもいいんではないかと思います。多様性とか、そんな偉そうな話ではなくて、そりゃ合うとこも合わないとこもあるだろうという、すごく単純な思考で。
うまく言えないけど、合わない部分を何とかしなきゃいけないという発想が、話をややこしくしているような気もします。職業柄仕方ないとこもあるんだけども。。。

価値観について、価値観が違うのは当たり前なので、価値観が違う人の意見も自分のものにして、思考に深さを持っていきたいと思いました。
「誰1人取り残さない」は、めちゃくちゃ難しい概念だと思います。消極的賛成である可能性もあるし、声なき声が本当にあるのかも分かりませんし。難しいですね。

多様性は分かり合うものではなく認め合うもの

ウェルビーイングについて深く考えたのは今日が初めてでした。ワークを通して自分の価値観や相手とのつながりの大切さに改めて気づくことができました。自分自身について考えるのは比較的簡単ですが、会社や地域に様々な考え方を持つ人がいるなかで、全体としてのウェルビーイングを考えるのは、やはり簡単ではないと実感しました。一方で、分かりあうではなく、認め合うという意見はとても刺さりました。

多様化は分かり合うものではなくて認め合うものだ、というお話を聞けてすごく納得しました。例えば、LGBTの方々、考えの違う上司・部下、分かり合えなくてもいい、こういう方々がいるんだと認めればいいんだと、安心した気持ちになりました。
この「認め合う」という言葉は、すべてに通ずるところがあるのかとも思いますので、日ごろ気にかけながら仕事していきたいと思います。

各自のカードのテーマは、多様性、祝福、関係づくり、挑戦で、バラバラな印象の入口からの意見交換でしたが、組織の人間関係などで認め合うことの大事さが結論になっていたので、行きつく先がウェルビーイングなんだと実感しました。

世代で変わる価値観

一番心に残ったのは、「座席レイアウトが選択できるあたりまえ」という話でした。
この価値観の共有は既存職員ではなく社外や子供とのほうが共有できるものがあるのだということ。上座や下座と呼ばれる文化が大事かなと思ったいた社会人のころの感覚が片隅にはのこっていましたが、「偉い人は偉い人なりの場所に鎮座する」そんな価値観は変わってきているのだと改めて皆様との会話と通じで気付いた部分です。
自社もドレスコードフリーなど始まっている切欠はそんなところにあるのだなと気付かさせていただきました。

職場のフリーアドレス制に対して、小学生のお子さんが躊躇せずに受け入れていたという話に驚きました。多様性を自然に受け入れられる若い世代の方に時代遅れと言われないよう、多様性を受け入れ、自分だけでなく相手の価値観も尊重して認め合っていく社会が大切だと改めて気が付きました。
また、実施した結果については共有するけれど、「価値観」を共有する機会はあまりないので、価値観からウェルビーイングに落とし込むことも大切だと感じました。ただ、多様性を受け入れ、誰一人取り残されない社会を作ることは難しく、今後も課題になると感じました。

本日参加したグループディスカッションの中で、働き方改革前・改革後の世代間による働き方に対する考えの違い、行政と民間企業による仕事(部署異動など)に対する感覚の違いなどについて話し合うことがあったのですが、話すテーマによってディスカッションした4人のグループ化されるメンバーが入れ替わる状況が世の中にはテーマによってあるのだろうなと改めて実感できました。これって、ウェルビーイングも含めてそうなんだろうと。

今回は90分という限られたワークショップのなかで、あくまでウェルビーイングに関する導入部分のみを触れましたが、ここで共有された考えをもとに、参考図書を読み直したり、ウェルビーイング指標を活用した地方自治に取り組んでいる事例など調べてみると、さらに深みをもったスマートシティのあり方について考えられるのだろうと思います。

今後滋賀県スマートシティのあり方研究会では、県外の地域に出向いたフィールドワークを行い、自分ごとになるイシューを見つけ、具体的な連携モデルなどを参加者どうし一緒に考えていく予定です。その際には都度前回の「パーパス」であったり「ウェルビーイング」という考えにも思いを巡らせながら、活動をしていきます。