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都市系専攻の新卒社員が語る、人口減少期の都市の課題と目指す都市の姿

はじめまして。スマートシティ本部、2024年度新入社員の熊谷です。
今年の5月にスマートシティ本部に配属され、現在は「新規事業企画部 企画チーム」「地域貢献推進部 福岡推進チーム」でお仕事をしています。

大学は工学部建築学科に進学しました。
その中で、都市系の分野に対し「都市計画の知見を踏まえて街を見ると、新しいものが見えてくる」という点で興味を持ち、都市系の研究室を選択。大学院に進学し、引き続き研究室で都市について学びました。
スマートシティ本部を志望した理由にも、この大学での学びが関わっています。

研究の過程で色々な都市に足を運びました


今回のnoteでは、大学での学びについてご紹介し、その学びを経てなぜスマートシティ本部を志望したのかお話しします。


大学での学び

ここでは、大学・大学院での研究を通じて学んだことについて、簡単にご紹介します。

都市設計とは

研究室では都市設計について学びました。

都市設計:都市を形作る環境を人間の目線で問い直し、都市空間を良い方向に変化させるため、構想を練ったり実現のための制度や方法を考えたりする学問のこと。

ざっくり言うと、「人々が心地よく暮らせる街を作っていこう」という学問です。学部は工学部なので理系の学問ではあるのですが、「人がどう感じるか」というのも重要な要素となっており、文系的な側面もあります。

研究テーマ

都市設計の領域は広く、多様な研究テーマがありますが、私は「人口減少に対応する都市設計」というテーマで研究していました。

過去、急激に人口が増加した高度経済成長期に、住宅需要を満たすために市街地が拡大しました。
しかし、現在は人口減少が進んでおり、地方においては顕著です。
広がった市街地に対して人口が減少すると、市街地の密度が低下し、インフラなどの維持が難しくなります。かといって、一度広がった市街地を縮小するのは、現在も居住している人がいるため、容易ではありません。

そのような背景を踏まえ、「人口が減っていく中で都市はどのような姿を目指すべきなのか?」というのが研究のテーマでした。

研究内容と気づき

研究内容と研究での気づきを、一部ご紹介します。

卒業論文:郊外住宅地の研究

■研究内容
1970年代に開発された福岡のとある郊外住宅地を対象とし、住民へのヒアリングとアンケートをもとにした生活実態や住民の意識についての調査や、自治体へのヒアリングや文献/資料をもとにした都市計画制度についての調査をおこないました。
研究を通じて、生活利便性の低い郊外住宅地について、将来的な目指すべき姿を検討しました。

■研究での気づき
①地域の実情に合わせた細かな都市計画制度設計が必要
現状の都市計画制度においても、地域の特徴を踏まえて、様々な規制によるコントロールがなされています。
この研究では、同一地区内でも異なる実情や時間の経過による変化に合わせた細かな都市計画制度設計が必要であることを示唆する、1つの実例が明らかになりました。

都市計画では、計画的な市街化を図るため、市街化区域と市街化調整区域が設定されます。

市街化区域:市街化を図るべき区域
市街化調整区域:市街化が抑制される区域

卒業論文で対象とした地区は市街化調整区域に位置します。
対象とした地区は、以下のような構成です。

・幹線道路沿いの集落
 └ 標高差もなく幹線道路はバスの本数が多い。
・周囲の丘陵地に開発された住宅地
 └ 標高差がありバスの本数も少ない。住宅地は4つあり、幹線道路との距離や標高差の違いにより、住宅地間でも利便性に差がある。

市街化調整区域では開発が制限されるため、基本的に住宅や商業施設などの新築はできません。しかし調査を進めると、過去の特例と時間の経過による状況の変化により、図内の住宅地Aの住宅地のみ新築ができる状態であることが分かりました。

しかし住宅地Aは先に説明した通り、標高が高く地区内では特に利便性が低いエリアです。
つまり、地区内で比較的利便性の高いエリアで新築が規制され利便性が低いエリアで新築が規制されないという歪な状況となっていました。

この結果から、同じ地区内でも異なる実情や時間の経過による変化を細かにキャッチアップして、都市計画制度に反映させる必要性を実感しました。

修士論文:全国の立地適正化計画の研究

■研究内容
コンパクトな街づくりを進めるために、自治体が定める「立地適正化計画」
この計画で設定されている「居住誘導区域」の割合が都市によって大きく異なっていることに着目しました。

立地適正化計画
┗コンパクトな街づくりを促進するために自治体が定める計画。2023年時点で全国504の自治体が策定・公表をしている。
居住誘導区域
┗立地適正化計画において定める区域の一つ。人口密度を維持するために、住民の居住を誘導すべきとされている区域。

国土交通省HP「都市再生特別措置法に基づく立地適正化計画」より引用

研究では、262都市を対象とし、人口密度などの様々な指標と居住誘導区域の割合の関連について分析しました。また、居住誘導区域の割合を低く設定している都市にアンケートをおこない、その理由について調査しました。

■研究での気づき
①自治体によって設定の方針が多様である

居住誘導区域の割合が、人口密度や人口変化率などの様々な指標とどの程度関係しているか分析しました。その結果、ある程度の関連は見られましたが、それらの指標だけでは十分に説明できませんでした。
自治体へのアンケートやヒアリングで調査を進めると、客観的な指標からは説明できない自治体それぞれの方針によって、居住誘導区域の割合が多様になっていることが分かりました。

立地適正化計画は特に各自治体の裁量が大きいものではあるのですが、立地適正化計画に限らず、日本では地方分権が進んだことで、各自治体が裁量を持って都市計画をおこなっています。このことは、地域の実情にあった施策ができるメリットがある一方で、自治体の手腕に依ってしまうところが大きいという側面もあります。

②合意形成の難しさ
立地適正化計画において、居住誘導区域を過大に設定している都市が見られました。居住誘導区域を設定するということは、居住誘導区域に含まれる住民と含まれない住民を生むことを意味します。居住誘導区域を広く設定している都市は、この居住誘導区域外となってしまう住民に配慮したのではないかと考えられます。
しかし、国土交通省の指針では「居住誘導区域は、将来の人口等の見通しを踏まえた適切な範囲に設定されるべき」とされており、過大な設定で計画の趣旨にそぐわない都市があると指摘されています。

市街地の人口密度を維持するという計画の目的と、計画の実現のための合意形成。この二点を両立することの難しさを改めて感じました。

スマートシティ本部を志望した理由

就活時は、

  • 愛着ある福岡で仕事ができる

  • 裁量をもって様々なことにチャレンジできる

  • 大学での都市に関する学びを活かせる

という点に魅力を感じてスマートシティ本部を志望しました。

加えて、都市系の研究を進める中で、以下のような都市の課題を感じていました。

  • 人口減少が進む都市において、割ける人的リソースは減少していくため、人の力だけで細やかなサービスを実現することができなくなる。

  • 人口減少が進む都市において、導入に多大なコストがかかり一定以上の利用者が見込めないと採算が取れないようなハード面での整備は難しい。

  • 都市データや市民のニーズなど、街の中にある情報を取得し活用する余地が大きい。

進化し続けるテクノロジーを活用することや、気軽に市民がデータや意見を提供しその情報をもとに計画をおこなうことで(全てを取り入れるということや多数決で決めるということではなく、判断材料を十分に確保するということです)、より良い街づくりができると考えます。

私が現在勤めているスマートシティ本部では、「粗大ごみのLINE収集予約」「おねがいチャリチャリ!“あったらいいなポート”大募集」のような取り組みもおこなってきました。

└ LINEで粗大ごみ収集の申込から支払いまで完結するサービス。電話や処理券購入の必要が無くなり、市民・行政ともに時間や手間を削減できた。

└ ユーザーがポート設置希望場所の位置情報を送信することで簡単にリクエストできるようにし、市民による街づくりを促した。

私が地方都市や住宅地の研究をしていたのは、「人々の日常生活を大事にしたい」という思いがあったからです。その思いは、スマートシティ本部の取り組みに興味を持った理由でもあります。
LINEという生活に溶け込んだサービスだからこそ、人々の生活をより良くする「スマートシティ」が実現できると考えています。

市民が気軽に街をより良くする行動ができる、その結果として市民の生活がより良くなる。そんな施策を、このスマートシティ本部で実現していきたいと思います。





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