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Designship2019 イベントレポート | ユーザーに「からっぽの器」を用意する

スマートキャンプ デザインブログ デザイナーの髙松です。
先週末に開催されたDesignship2019にスマートキャンプのデザインチームで参加してきました!

メインステージでは20を超えるセッションが行われ、内容とボリュームに富んだ素晴らしい2日間でした!!
セッションの他にも、企業ブースやセッション内容をグラレコしたボードエリアが設けられていたりと、イベント自体にたくさんの工夫が感じられました。当日の様子や充実のノベルティなどの情報はDesginshipのTwitterから確認できます。

素晴らしいセッションがひしめく中で、2日目の初回に登壇された原研哉さんの「日本について」というセッションでは普段の自分のデザインに翻って考えさせられるものが多くありました。

この記事では原研哉さんのセッションレポートと、セッションの内容から自身のデザイン業務を振り返っての所感をまとめてみたいと思います。

 01. からっぽという考え方

以下は原研哉さんのセッションから一部を抜粋・要約したものです。

世界には「信仰」という文化があります。
日本の感受性では、神は山、風、土、食といったあらゆるものの中を移ろうものとして受け止められてきました。
神は居場所を定めることがないため、日本の人々は「代(しろ)」を建て、そこに神が入るかもしれないという考えをもって信仰を行う空間を作りました。

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原研哉さんのスライドから

神が入るかもしれない空間は人々のイマジネーションを喚起させるからっぽの器として機能します。
このからっぽの器にはなにも入っていません。それは「無」ではなく「からっぽがある」状態であり、人の想像力が入り込める「余地」です。

からっぽの器を人の想像力をもって補完することで、新たなコミュニケーションや価値が生まれます。原研哉さんはこの器をCreative Receptorと表現されていました。

02. シンプリシティとの違い

以下は原研哉さんのセッションから一部を抜粋・要約したものです。

からっぽの器をつくるということは、目に見えるなにかを創造することではありません。なにもない「余地」を作るとはどういうことでしょうか。「なにもないこと」と聞くと、つい引き算することを想像してしまいます。しかし、「からっぽの状態」というのは要素を削ぎ落とすシンプリシティとは違うものでした。

セッションで使われていた包丁の写真を載せます。

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上:親指の位置が自然に決まる = シンプルの結晶
下:切り方に合わせてどのようにも持てる = Emptiness(からっぽ)の形状

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上の包丁は握りやすさを追求し、それ以外のものは排除したシンプルな形です。下の包丁はあらゆる用途で使われることを想定し、包丁を握る人物の目的を受け止めるための柔軟性のある形をしています。

形だけを見ればどちらもシンプルだと形容できそうですが、握る行為に最適化したのか、目的をフレキシブルに受け止めることを求めたのか、2本の包丁にはシンプルとEmptiness(=からっぽ)の違いがあるということでした。

セッションの内容は原研哉さんがディレクションされているMUJIの話へと移り、そこでもやはりEmptinessをテーマにしているということでした。

自分のデザインに「からっぽの器」を

セッションの内容を受け、「自分のデザインにユーザーの気持ちを受け止める余地はあったのか」という問いが浮かびました。

私たちデザイナーはユーザーの課題と解決を突き詰めて考える役割であるため、最適解を模索する行動を取ります。本質を追求する姿勢は先の包丁の例でいう「シンプル」を追う姿勢に近いかもしれません。

一方で、拾いきれなかったユーザーの痛みやユーザーの自由を受容する器を自分のデザインに取り込む視点が私にはなかったように思えました。ユーザー課題を1つずつ解決し、そのサイクルをスピーディに回すことができればプロダクトはあるべき形にはまっていくと思っていたのかもしれません。

プロダクトが人と接する以上、使いやすさや楽しさを追求する他に、ユーザーの思いを汲み取ってくれる接しやすさのようなものが必要なのでは、と考えさせられました。

「ユーザー視点に立つこと」を、「ユーザーの痛みや課題を高い解像度で理解すること」だけと捉えず、自分では捉えきれなかった「ユーザーの思いを受け止める器(デザイン)をプロダクトに用意すること」がしたいと考えさせてもらいました。

ありがとう!Designship2019!

冒頭にも記したとおり、Designship2019では他にも素晴らしいセッションが20件ほど行われ、どれもが学びにつながる素晴らしいイベントでした。

優秀なデザイナーの思考や、業種が違うデザイナーの話を聞けることは、本当に多くの発見を与えてもらえる機会になります。

まだ第2回の開催とは思えないくらい充実したイベントでした。次回も参加したいと思います!Designship運営の皆様に感謝しています!
当日レポートも続々と出ているようなので、気になる方はチェックしてみてください!

WRITER&EDITOR :
Yume Takamatsu ( SMARTCAMP / Designer / @dream_yt95 )

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