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読書習慣がないスマホ世代の子ども

親として子どもを持ち、「子どもが本を読まない」という事態に直面して初めて、自分が子どもの頃に「本を読みなさい」と言われた理由に気がつくという大人も多いものです。

読書は、子どもにとって豊かな発想や感受性、そして知識や教養を授けてくれるものです。しかし、スマホ世代の子どもには読書に対して、「積極的に平均以上の冊数の本を読む」子どもとそうでない子どもがいます。

この差にはどのような理由があるのでしょうか

1.スマホ世代の子どもと読書習慣

現代の子どもは、生まれながらにしてインターネットや、それにアクセスするパソコン、スマートフォンが周りにあるという「スマホ世代」です。

かつての子どもは、百科事典やテレビに齧り付いて知識を得ていたものです。
しかし現代の子どもは、ウェブサイトやアプリ、場合によっては動画で学びを深めています。このような時代にあって、なかなか「読書をする」という習慣を付けるのは大変なことのように感じるでしょう。

しかし、親や教職員の立場としては、インターネットだけではなく読書によって得る知識や体験を子どもにも味わってほしい、という願いがあることも事実です。

2.スマホ世代の子どもは読書習慣がない?

2022年、全国学校図書館協議会が行った調査では、小学生の1ヶ月間の平均読書冊数は13.2冊でした。
コロナ禍前と比較するために、少し前の時代に遡りますと、すでに世間に広くスマートフォンが行き渡っていた2020年の調査では11.3冊と、むしろここ数年で平均の読書数は上昇していることがわかります。

しかしながら、この調査は、あくまで平均で上昇しているというところがポイントです。このような傾向は、「たくさん本を読む子どもはよりたくさんの本を読んでいる」一方で、「まったく本を読まない子どもも少なくない」ということを表しています。
多くの親が警戒するように、スマホがあることでゲームや動画などばかりを巡回し、読書をするという習慣づけができていない子どもも確かに存在するのです。

このような意味で、読書習慣の有無は「教育格差」の一種であるという理解もできます。
つまり、読書習慣のある子どもはどんどん知識や教養を身に着けていく一方で、幼少期に読書習慣が備わらなかった子どもは、そうした知識・教養に触れる機会すら乏しいのです。

3.親や大人ができる読書習慣の育て方とは?

読書が子どもの成長や学びにとって重要であることは、多くの大人が理解しています。だからこそ、子どもに「ゲームばかりではなくて、たまには読書をしなさい」という伝え方をしている親は多いことでしょう。

しかし多くの場合、大人からそのように言われただけで、子どもに読書習慣が身につくことはありません。
現代の子どもにとっては、「なぜ(スマホがあるのに)本を読まなければならないのか」という理由付けや動機づけが必要なのです。

これには、たとえば本を読むことでしか得られない体験や、文章を理解する力、映像や音声がなくても、本の登場人物に感情を寄り添わせることができる「共感力」などの力が育まれるということを、子どもはまだ体験していないために、完全に「未知」の領域であるという理由があります。

親は、ただ子どもに向かって「本を読みなさい」と伝えるだけではなく、本を読むことで自分にどのような体験があったのか、それはどれほど素晴らしい体験だったのかという魅力的なエピソードを添えて、子どもたちに展開していく伝え方が必要となるのです。

4.親子での読書の楽しみ方とは?

子どもは、親が子を見ている以上に親の振る舞いを見ています。
たとえば、子どもには「スマホばかりでなく、本を読みなさい」と日頃言っている親が、まったく読書をしている様子を子どもに見せなかったとしたらどうでしょうか。

子どもは、「親は立場上、あるいは必要があるから本を読めと言っているだけだ」と解釈し、まるで宿題のように本を読むことになります。
そのような義務的な読書では、決して読書をすることで得られる生きた教育の恩恵を得ることは叶わないでしょう。

では、親が日頃から、忙しい一日の時間のほんの少しの間でも本を開いて、その本を熱心に読んでいる姿を子どもが見ていたとしたらどうでしょうか。子どもは、「親がこんなに熱中するのだから、読書というものはおもしろいものなのかもしれない」「自分も読んでみたい」と、自発的に読書に取り組むことができるかもしれません。

また、子どもが読んだ本と同じ本を親が読んでいたら、子どもと親で読んだ本の感想を言い合ったり、お互いにまだ読んだことのない本を交換して読み合ったりすることもできます。
このように、親が読書習慣を持ち、それを心から楽しむことこそが、子どもに読書習慣を付けさせる最短の近道なのです。

まとめ

子どもに読書習慣をつけさせようと思っても、子どもは親や教職員の思う通りに本を開いてはくれません。
子どもは興味のあることを優先するためです。それならば、読書というものを子どもにとって興味・関心の対象にしてあげることこそが、親や教職員、周りの大人たちの役割だといえます。

忙しい毎日を送る大人が、それでも自分の「趣味」として、読書を楽しんでいる姿を子どもに見せてあげることです。
そして読書がいかに素晴らしいものであるか、体験を交えて語ることができれば、読書量の差による子どもの教育格差は、格段に小さくなることでしょう。