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パパにもおっぱいがあればいいのにな。|福澤 由佳

6歳の息子は2歳半までおっぱいを吸っていて、保育園に通い始めて3ヶ月ほど経ったら自然に卒乳しました。1歳9ヶ月の娘はまだまだおっぱいが大好きで、休日は「ぱいぱいぱいぱい」と頻繁に吸い付いてきます。添い乳をして寝かしつける習慣から抜け出せず、夜中に起きてはおっぱい、を何度も繰り返すので、娘もしっかり寝られていないだろうし、私も寝不足が解消されない。そのせいでイライラすることもしょっちゅう。

「そろそろおっぱいは止めたら?」

見かねた夫がそういいます。私も「そろそろ断乳しようかな…」と思うこともあります。
でも止められません。

フルタイムに近い時間で働く私にとって、おっぱいは免罪符のようなものです。
息子も娘も、平日はほぼ毎日保育園で過ごしています。私はその間、自分のやりたい仕事をしています。帰宅してもすぐに夕飯の準備。一緒に遊ぶ時間はあまり取れません。
正直、子育てをほっぽって自分の人生を生きているような気もして、申し訳なさを感じることもあります。
「まだ小さいのに…」
「長時間預けて、かわいそう」
誰とも言えない言葉が頭の中に浮かんできます。

長時間にわたる保育園で疲れるのか、寂しいのか、帰宅するとすぐにおっぱいを欲しがる娘。満面の笑みで吸い付く様子を見ると、断乳することに罪悪感を抱いてしまいます。
「もし今断乳したら、この子は愛情不足を感じてしまうかな?」
「心に大きなしこりが残らないかな?」
「一緒にいれる時間が少ないから、せめておっぱいは本人が満足するまで吸わせてあげたい」
「断乳するとなると、数日間は徹夜覚悟になるはず。働きながらできるだろうか」
「上の子は自然に卒乳したんだから、あと1年くらいの辛抱…」

娘の喜ぶ顔と、心の発達への影響、断乳するまでの準備、母としての変なプライド。
これらが足かせになり、なかなか覚悟が決まりません。
別に断乳したって心の成長には何の影響もないことは頭ではわかっています。


ある日曜日。夫が娘に言いました。
「今日はパパと寝ようか?あ、でもダメだな。パパはおっぱいが出ないから、夜起きたら寝かせられないな」

普段から寝かしつけは私がやっているので、これはチャンス!と、思わず反応しました。
「断乳するにはパパと寝るのがいいらしいよ。ママだとおっぱいの匂いがするからやめられないんだって。」
夫「夜起きて寝かしつけなきゃいけないなら、俺が寝不足になるだろう」

確かに寝不足になる。
でも私だって毎日毎日寝不足だ。
仕事が終わったら休む暇なく夕飯作って、洗い物してお風呂に入れて、寝かしつけて、また寝不足で仕事に行くのに。
二人で寝かしつけられれば断乳できるかもしれないのに。

でも一方で思います。
「二人とも寝不足になると共倒れだ。どっちかが万全でいないと1週間が乗り切れない」
「私は好きなことをやらせてもらっているんだから、負担を抱えるのはしょうがない」
「収入が夫の方が高いのだから、育児・家事の負担は私が背負うのはしょうがない。」

夫は保育園の迎えもしてくれるし、私が夕飯の準備で忙しいときは子どもと遊んでくれたり、忙しい中でも協力はしてくれています。

でも、“私が育児・家事を一手に引き受けているから、あなたが思いっきり働けるんじゃない”という気持ちもあり、“養ってもらっている“というありがたい気持ちと交差します。


私の仕事は女性のキャリア支援や働き方支援だけれど、
私自身に同様の悩みがないわけじゃありません。
まだ夫の扶養に入っていて、収入の上で自立ができていません。
私自身が女性のキャリア構築に悩む当事者でもありますし、どっぷりつかってきた家父長制という考え方もなかなか抜けません。


それでも、
頂いているお仕事をやり切りたい。
育児も手は抜きたくない。
専門スキルを高めたい。
新しいサービスを形にしたい。
そして、収入の上で自立したい。

叶えたい夢ややりたいことはたくさんあります。

自分の人生を生きることへの罪悪感みたいなものは、きっとずっとなくならないのかもしれません。
今はおっぱいだけれど、もしかしたら、娘が成長するにつれて(そして息子にも)、また別の免罪符が必要になるのかもしれません。

あ~あ。パパにもおっぱいがあればいいのに。

福澤 由佳 (ワーク・ライフバランスコンサルタント)

<プロフィール>
大学卒業後、求人広告営業職などを経て結婚・出産。育休明け復帰後に家庭・仕事との両立に苦戦し、3ヶ月で退職。以後、自身の経験をもとに、女性が自分らしく働く、自分らしくキャリアがつくれる社会を目指し、ワーク・ライフバランスコンサルタントとして働きやすい環境整備や女性のキャリア支援、保活支援などを行っている。6歳男児と1歳女児の子育てにも奮闘中。


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