見出し画像

【architecture】建築ができるまで(設計編)

私が修行時代の設計事務所で最初に担当したのは鉄筋コンクリート造(RC造)5階建てのテナント付き共同住宅である。

建築の設計のイロハもよくわからない中、基本設計から携わらせてもらった

はじめは模型をいくつもつくりボスと打ち合わせを繰り返す日々

住宅であればある程度短時間で模型はつくれるが1000㎡を超えてくるとなかなか時間がかかる作業であった 

しかし建築をつくることに飢えていた若かりし頃の私は徹夜も厭わず作業に没頭していた

図面も徐々に精度を上げていきながら、同時に構造や設備、法規などをひとつひとつチェックしていく作業は、全てが一から知るもので、本やインターネットで調べたり、構造設計の方に夜遅くに連絡をして教えてもらいながら何とか書き上げた

当時の設計事務所には、スタッフは私ひとりしかおらず、わからない事があるとボスに聞くしかない状況であった。同僚がいれば相談したり教えを乞うことも出来たかもしれないが、それが出来なかった。良くも悪くも自分で何とかしなければと、強いプレッシャーの中で設計をしていた。

実施図面を進めていたとき、法規をチェックしていると、高さの規制に関する計算方法を間違えていたことが判明した

計画が、面積、高さなどほとんど法規ギリギリの設定だったので、計画自体を大きく見直さなければならないかもしれないミスであった

どんな業界でも、『これは本気でヤバイ』となる瞬間があるだろう

この時は本当にヤバイと思って青ざめたのを今でも覚えている


建築設計の経験者の方にとっては、”あるある”的な状況ではないだろうか

これから建築設計の道に進む方には知っておいて欲しい
この仕事をしていると、『あれやばいかな?』という不安の一つや二つは誰もが常に抱えているものだ
時には大きな地雷になりかねないものもあるから、早めに上司なりに投げておく事が大事である
最悪なのは、言い出せずに先に地雷が爆発してしまうことである
地雷処理は早いに越したことはない
溜め込む事が一番良くないのである

なんとかボスに助けてもらい、大きな変更もなく乗り切る事ができた

小さな設計事務所にとって、これだけの規模の設計を一からやり直すのは業務的に死活問題である
このとき、ボスの何とかしなければとあらゆる手を尽くして対応する姿は今も忘れられない
設計事務所に勤めて一番の学びはボスの仕事に対する姿勢であった
建築に対するこだわりはもちろんであるが、自分が何とかしなければいけないという責任感の強さである
大企業であれば、業務過失でも書いて多少の減給で済むことでも、個人の設計事務所にはそんな余裕はない
文字通り命がけな仕事であることを学んだ
誰かが何とかしてくれるという、ある種サラリーマン的な考え(サラリーマンの中にも命がけで仕事をされている方はたくさんいることは承知している)は通用しない世界を知った瞬間であった


なんとか実施図面を書き終えて、建築確認申請という役所のチェックや消防署の審査などなど様々な申請をクリアしてようやく着工の目処が立ったのは計画が始まってから2年以上が経っていた

ここまで来るのに何度心が折れかけたか分からないが、実はここからが新たな難所の始まりなのであった

工事がはじまると、図面では分からなかった問題が次々に出てくるのだ
施工図とのにらめっこと現場へ通っては現場監督や職人さんとの打ち合わせの日々がはじまった

現場経験のない自分でも、現場では指示を出して判断しなくてはならない立場である
ここからが本当の山場であることをまだ知る由もなかった

(施工編につづく)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?