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【small design】皮膚や肌の少し先にある存在

小学3年生のときからサッカーをしてきた
ちょうどJリーグが始まったり、アメリカワールドカップのアジア予選でロスタイムで失点して惜しくも出場を逃したドーハの悲劇の時期でサッカーがすごく盛り上がっていたときだった

本当に毎日毎日サッカーをしていた
明確な目標があったわけではないがただひたすら熱中していた
大人になると目標やノルマに向かっていくことが求められるが、あの頃の僕はただひたすら目の前のボールをどうコントロールするかだけを考えていた


あまり物にこだわり過ぎるタイプではないが、サッカーにおいては『スパイク』だけはこだわりが強かった

僕が愛用していたのはPUMAの『パラメヒコ』というスパイクだ

三浦知良選手や中山雅史選手など小学生の頃、僕が憧れていた選手が履いていたPUMAの傑作と言って良い商品だ

今でも愛用している選手は少なくないのではないだろうか

カンガルーの皮で、厚みがありながらも柔らかさがあり、自分の足にあった幅広のデザインだ
非常に軽く素足のような感覚に近い

決して安くはないスパイクだったが、これだけは親にお願いをして買わせてもらっていた

買ってからは、靴墨で毎日練習後に皮を磨いて、より足に馴染むようにするだけでなく長持ちさせようと大切に使った

また毎日手入れすることでスパイクに愛着が湧いてくる


プロスポーツ選手ともなると、自分の愛用する道具に対するこだわりはより強いはずである

サッカー選手ならスパイク
野球選手ならグローブやバット
テニス選手ならラケット

イチロー選手は毎日グローブを磨いていたことでも有名で、とても物を大切にしていた

卓球選手はラケットの木の部分をヤスリで削って自分の手に馴染むように調整している


道具を自分の体の一部の如く操るには、皮膚や肌の少し先の存在を丁寧に微調整して、それぞれの体に寄り添うようにしてあげることが心地よさを生むのではないだろうか

それには素材や形状、色味、伸縮性、柔らかさなど細かな調整が求められる


僕が建築に求めたいのはこの
『皮膚や肌の少し先にある存在』をデザインすることである

肌感覚に近いような心地よさを、建築で生み出すことが出来れば、より豊かな暮らしが生まれるのではないだろうか

現代の建築は、モジュール化された寸法によって出来上がっているものが多い
通常の在来工法の木造建築の場合、910ミリという単位が基本になっている

ほとんどの家がこの寸法を元につくられることによって工場での大量生産や商品としての規格化が可能になり、価格も安定するメリットがある

しかし、このモジュールはジャストフィットではなく『大は小を兼ねる』で標準よりも余裕をもった数値で設定されているように思う

スポーツ選手が足のサイズを様々な角度から測定しスパイクを特注するように、
使う人にあったサイズの建築を特注することができたらもっと豊かな空間になるのではないだろうか

今の住宅は昔の家に比べて大き過ぎる
建具も昔の家は手が届く高さだったが今は高ければ高いほど良いといった暗示をかけられているのかスケールがおかしくなってしまった

自分に愛着の持てる建築をつくることが、長持ちする建築をつくることに繋がると信じている

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