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巨匠の傍らの手帳〜手帳の佇まい(8)

超多忙なエグゼクティブなるも
秘書を付けることなく
一冊の手帳を巧みに使い切り、
スケジュールやタスクを操る人。
生き切っている感あり。

僕が手帳遣いに最も影響を受けたのは、
建築界の世界的巨匠、安藤忠雄氏です。

勿論、拝顔に及ぶはずもありませんが
その仕事ぶりや手帳術は
雑誌やテレビなどで紹介され、
建築や手帳のファンの間では有名です。

安藤氏のその綴じ手帳は、
掌より少し大きめで、
見開きのウィークリーページに
ぎっしりと文字や記号が刻まれています。

世界中を飛び回る安藤氏。
その過ぎたページたちを見ると
圧倒的な仕事量とその筆圧でしなっており、
1日を生き切った感が満載。孤高な領域。

手帳とはこういうふうに使うのだと
聞こえてくるようです。
まるで手帳自身が喜んでいる。
手帳メーカーも狂喜乱舞でしょう。

僕が敬服しているのは
手帳術だけではありません。
壮絶な生き方、生きようです。

安藤氏はご承知のとおり、
建築の名だたる賞を総ナメにし、
今でも引っ張りだこ。

高校を卒業した後、
建築の勉強と努力を重ね
建築免許を取り、自身の事務所を開設、
様々な人脈を連ねながら
現在の地位を築き上き上げられました。
仕事に一心不乱、没頭し、
才能を開花させた人。
東大名誉教授にまでなったのです。

報道等によれば安藤氏はこの十数年、
複数の癌の手術を受け、
胆のう胆管十二指腸、膵臓と脾臓を摘出。

今年、80歳になられるこの御仁は、
現在もバリバリ、意欲的に
仕事に取り組んでおられます。
傍らに一冊の手帳を開いて。

脱帽しかない……。
僕は空白だらけの手帳を否定しません。
この感染拡大下で、
ペン皺のないページも多々あるはず。
また、ときに、緩さも大事だと思います。

一方で、誰かに必要とされ、
喜んで貰うために
懸命に仕事をこなす人でありたいと。

自分に出来る限りのこと、役割を懸命に果たしたい…。

成人の日を前に、回顧し、尚更に思います。

安藤氏のみなぎる躍動。
それを支えている手帳。

手帳には、持ち主の魂と志が宿ります。


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