Beside|Ep.15 甘すぎる代償
Beside-あなたと私のためのベットサイドストーリー
シンガポール編 #5
ラスボスにとどめを刺す時が来た。
ついにシンガポール編完結
chap.1
知らない場所で目を覚ます。
布団が暖かい。
そうだ、わたしはまだ、シンガポールにいて、今日はたしか4日目の…あさ?
—っ?!
横で一緒に寝ている誰かが、誰なのかを思い出して、一気にプレイバックが始まった。超高速で記憶が巻き戻っていく。できれば忘れていたいシーンが、少しも欠落しないまま、まだ冷めぬ熱量を持って自動再生されてゆく。停止ボタンはどこ?お願いだ、誰か止めて…
:
『ユンギヤ…はぁっ、もうやめよ…、んっ… そんなに何度も…息が…もたない…んっ』
『まだ、ぜんぜん足りない』
『んんっ…はっ…もう、やめ…んっ』
『やめない』
もう何度目かわからないキスで
瞼の裏にフラッシュが見えた
きっと頭がショートしたんだろう
『はぁっハァっ…』
『今ならまだ、ここで、やめられる。この先は、止められる自信ない。俺が嫌なら、ちゃんと言って?』
『イヤ…じゃ、ない…』
『なら、もうやめない』
わたしはそこで考えるのをやめて
砂糖みたいに甘い声に溶けていった
:
—ってオーーーイ!
なんで、そこ、理性手放しちゃダメだよね?いやいや…え?なに流されてんの?これ仕事の出張、ここ上司の部屋、まだ今日も研修ある…。自分もういい大人なのに、何をやってるのか。あぁぁぁ... 信じられない…今日どんな顔して研修に行けと?!バカなのか?いや、確実にバカだ!
あの時ユンギに相談したかったのは、ソジュンの誘いをどうやって断るべきか、だった。対マネージャーに、角が立たずに断るには、どんな文面がいいのかとか、そういうどうでもいい事を相談したかった。少なくとも5年前のように変な噂を立てられるのも懲り懲りだったし、同期で同性のユンギなら、いい案を持ってると思っていたから。
—それなのに!
「うあぁぁあ〜!!お願いだから時間を戻してくれ!」
「うるせぇな。ぜんぶ聞こえてる」
横にいた部屋の主がこちらに寝返りを打つ。はだけた寝着から覗く白い肌は、カーテンの隙間から差し込む朝日で発光して見える。寝起きの柔らかい髪。間近で見ると案外彫りの深い綺麗な鼻筋と、ユンギのいい匂い。おはよと言って、はにかむように可愛く笑う、ちょっと腫れぼったい目。
—そんな幸せそうな顔、されたら…
まだ夢オチのワンチャンスがあるかもという期待は脆くも崩れ去った。あの後、私はそのまま寝てしまったのだろうか。やることだけやって?急に込み上げる恥ずかしさと一緒に布団を頭からかぶる。朝日よ照らさないでくれこの馬鹿な私を。いや寧ろ焼き尽くして灰にしてくれてもいい。
「ユンギよ…お前を今すぐここでctrl+dで消してやりたい。ついでに私の記憶ごと消してくれ。全部《《無かったこと》》にしてくれ。」
「ん?あー、昨日は悪かった」
「...平常運転かよ」
ベットから起き上がって、おそらくいつも通りに支度を始めただろうユンギは、ムカつくくらいいつも通りだった。投げ入れてもらったミネラルウォーターを飲む。落ち着け。とにかく一旦落ち着こう。息をするんだ、ゆっくり3回深呼吸だ。
「あー、あと、オレ来月異動だから」
「... はい?」
随分サラッと、今日の朝食メニューを言うかのように、予想だにしない事が告げられる。せっかく吸い込んだ息は、その目的を果たせず吐き出された。
「イマ、なんて言った?」
「異動する。新しい支社立ち上げに行くことになった。」
「どこに?」
「ソウル。日本戻ったら引継ぎが鬼のように待ってるからな、覚悟しとけよ。」
「マジで言ってんの?」
「あぁ。来週には発表されるだろ」
ーmemory exhausted
人がフリーズする音を聞いた事がある?
1度に処理できる情報には限度がある。
つまるところ、もう何がなんだかわからない。
妙にスッキリした雰囲気のユンギがそばに戻ってきて、硬直した私の顔を引っ張っている。
「その顔、どうにかしてポーカーフェイスに戻してこいよ。後輩たちの晴れ舞台だ」
「誰のせいだと思ってんの…」
「アー、返事はいつでもいいぞ?」
「順番が逆なんだよ…」
「それは、悪かった」
「タイムマシン買ってきて」
「生憎売ってないな」
「法廷で会おう」
「やめてw」
呆然と窓の向こうを眺める私の、耳元に散らばった髪を解いて、首筋に優しくキスをする。おそらく昨日何度もそうされただろうせいで、そこはまだ少しくすぐったい。
「頭がついていかないや」
「飛行機でたったの3時間だし」
「そうじゃなくて…」
「今日はあきらめて、オレで頭いっぱいにしとけば。」
「なっ…」
「俺の頭の中も、昨日の可愛いアミでパンクしそう」
(っ?!)
「これで引き分けだな」
少年みたいな笑顔で、ユンギが幸せそうに笑う。
ユンギよ、それを言うなら、
《《勝ち逃げ》》だ。
chap.2
ー研修最終日:プレゼンテーション・コンペティション
「続きましてジャパン支社お願いします」
テヒョンとジョングクが壇上に上がった。今日のドレスコードはビジネススーツ、そして、オフ・メガネだ。会場からわぁっとため息混じりの感嘆が漏れる。そうでしょうそうでしょう。プレゼン内容と併せて、うちの子達のビジュアルもしっかり堪能して欲しい。
「以上の課題を解決する最も効果的なアプローチが、こちらです」
「我々の事前リサーチによると、ターゲット層であるF2セグメントにおいて、最も多く回答されたのが”癒された”というキーワードでした。」
「癒されたい、ではなく、癒されたと言う点に注目してください」
オーディエンスの反応は上々だ。プレゼンテーションが終わると、会場から黄色い歓声が聞こえた。2人の達成感ある表情が眩しくて、涙腺が緩む。完璧じゃないか。中身も外見も、うちの子たち、なんてイケメンなの。隣にいるマネージャーも満足そうに頷いている。
「で、なんでお前が泣いてんだよ」
「若い子達が頑張ってるのって無性に泣けるじゃん」
それが歳をとるって事なのだろうか。
それともこれは、あの時の自分へのノスタルジーか。
あの壇上で発表していた、5年前の私たち。
自分たちの未来を信じて疑わなかった、青くさくて未完成で愛おしい時間たち。
人生は思ったよりも七転八倒で、予想外のことばかりが起きるよ。期待するほど平穏はやってこないし、幸せな時間は儚く、現れては消えていくし。それでも、人生は七転び八起きだ。何回転んだっていい。最後に立ち上がれるのなら。
全ての支社の発表が終わった。タヌキが締めの言葉を何やら話している。結果発表はこの後のアフターパーティーにて表彰式も兼ねて行われる段取りだ。
「今年の研修も終わりだな。あとはアフターパーティーだけ。」
「あー、めんどくさいのがまだ残ってた」
「わかってると思うけど、抜かりないようにな」
「リョーカイ」
「飲み過ぎるなよ」
(誰かさんのせいで、飲み明かしたい気持ちでいっぱいですが)
テヒョンがキラキラしながら駆け寄ってきてみんなで大げさにハグをする。ジョングクも少し恥ずかしそうだが、大きな目に嬉しそうな表情を浮かべている。
こんなふうに大きな舞台でプレゼンテーションをする機会は、通常業務では早々あるわけではない。この高揚感と達成感は今ここでしか味わえない特別なものかもしれないし、業務に戻れば忘れてしまうかもしれない。
でも、今日ここに至るまでの道のりは、誰かと働くということ、そのものだ。
どれだけゴールが遠くに見えても、1つずつ1歩ずつなら進んでいける。どれだけ苦しく、うまくいかない時間が続いたとしても、1人じゃなくみんなでなら乗り越えられる。そして終わってしまえば、代え難い達成感と共に、いい思い出になるんだ。
これまでずっとそうやって仕事をしてきた。
きっとこれが、私が見つけた働くと言うこと答えのひとつで
私は、それが、好きなんだ。
ーいいチームだったな
後輩達の、そして自分の、これからも続くワークライフの何かしら糧になることをそっと願った。
chap.3
打ち上げ会場は活気に満ちていた。壇上でカンファレンス実行委員長の初めの言葉が進行する。全てのコンテンツを無事に完了できたことに感謝を述べながら、うっすらと浮かぶ疲労が準備の過酷さを物語っている。研修参加レイヤーの若人たちが早く乾杯したくてソワソワしている中、マネージャーたちがこっそりと気合いを入れる。このアフターパーティーはただの打ち上げではない。実際に繰り広げられるのは、各支社のヘッドハンティング合戦である。乾杯の掛け声を合図にして、フロアは一気に熱気に包まれた。
「ジャパンのこたちマジでイケメンだった」
「ほんと!うちの支社に来ないかなー!」
テヒョンとジョングクの周りにはちょっとした人だかりができている。あとでマネージャーに紹介させてとか、連絡先を交換したいとか。困惑顔の2人にウィンクをして、ネットワーク作りのチャンスだぞと発破をかける。
それなりの規模の企業に所属していれば、《《ナレッジ》》というのは当たり前に享受できるように思うかもしれないが、実のところ、待っていてもやってこないのがナレッジというものだ。受け取るものではなく、自分で探しに行かければならない。見知った人が他支社にいるということは、「ちょっと知ってる人に聞いてみる」ができるということだ。これができる時とできない時では、仕事の速さがまるで違う。
その一方で、ネットワーク作りは推奨するものの、他の支社にホイホイと引き抜かれてしまっては困る。あの子は欲しいがこの子はやらない。支社間のフレキシブルな人材交流というのはこういった矛盾を抱えているものだ。花一匁パラドックスとかっていう名前はどうでしょうね?マネージャーに抜かりないように念を押されたのは、さりげなくめぼしい子をヘッドハンティングしつつ、テヒョンとジョングクを見守る、という裏ミッションがあるからだ。
「アミ。ちょっといいか。」
監督責任を果たしつつも打ち上げを《《嗜んでいる》》と、知ってる声に名前を呼ばれた。昨日のあれこれですっかり誘いをすっぽかした相手がそこに立っていた。しまった、メールしてなかった。断りの連絡を入れようとしたところまでは良かったが、その後できなかった理由は…今は思い出してはいけない。
「うちの支社長が話したいって」
「…わたしと?」
ここにきて、タヌキに呼び出されるとは思わなかった。が、偉い人に呼ばれたら行くしかない。そういえばもう令和だから、令和タヌキ合戦になるんだな、とかどうでもいいことを考えながら仕方なくソジュンの後についていく。
アミとソジュンが連れ立って移動していくことにいち早く気づいたテヒョンが慌てている。
ヌナの隣にいるのは、間違いない、ラスボスだ。
これは…?
胸騒ぎ第2部のスタートじゃないのか?
「ヤー!ジョングガ!大変だ!アミヌナがラスボスに連れて行かれた!」
「えっ、あ!あれはシンガポールのタヌキですよ?!」
「タヌキ?!令和タヌキ合戦?!」
「ヒョン、よくそんな生前のネタ知ってますよね」
「ユンギヒョンは?!ヒョンに知らせないと」
「はい、手分けして探しましょう」
chap.4
「支社長、お連れしました」
ーまた出たぞ、シンガポール支社長。
「eh, Ami! how then lah?」(たぶん、how are you的な)
「Sibei Shiok!」(めっちゃいい感じです的な)
昨日より腹が膨らんでないか?という疑問をさっと消して、ホーカーズの人々に教わったいくつかの挨拶を使ってみる。ビジネスフォーマルではないかもしれないが、よく知ってるねと喜んでもらえるからだ。Singlishと呼ばれるシンガポールで話されている英語は、英文法を崩したものに、マレー語や中国語の単語が入っていて、アジア独特のアクセントで発音される。日本語に外来語としてカタカナで発音される英語が入っている構成に近い気がするが、シンガポールの場合、共通語は英語で、国語はマレー語だというから、どちらを外来語と呼ぶのだろうか。ここはビジネスの場所なので、きっと現地の純Singlishよりも相当聞こえやすいはずなのだが、たったの4,5日じゃほとんど聞き取れない。独特のアクセントに慣れてきた頃には帰国となるだろう。本当に興味深い国である。
「アミ、君とのディスカッションも、チームのプレゼンも本当に素晴らしい時間だったよ。」
「ありがとうございます。頑張って準備したので、嬉しいです。」
「シンガポールはどうだったかな?アジア最先端のICT都市は、アミのお気に召した?」
「はい、とっても」
ーとっても…色々なことがあって、正直、なにがなんだかよくわからないんですよ、老板。
この4,5日が走馬灯のように浮かんでは消えていく。
あぁ、疲れた。早く家に帰りたい。
「ということで、単刀直入にいうと、アミ、君をヘッドハントしたいわけだけど」
「…ハィ?!私ですか?」
途中の重要だったらしいところは、集中力が切れて理解できなかったが、タヌキはそういう話をしたいらしい。
「そう、ちょうどソジュンのパートーナーになれるような、次期マネージャー候補を探していてね。うちの支社で新しく管理職のキャリアパスを進むのはどうかな。」
「あみ、僕はまた、一緒に働きたいと思っているし、何より君のキャリアにとってこれ以上ないチャンスだ。僕の下ではジャパンにいる以上の経験ができると約束する。」
なるほど。昨日ソジュンが話したいことっていうのはこれだったのか。
個人的にどうこう言ってた割にはボスへのプレゼンスを上げるために私を利用しようとしただけのようだ。おかげでこちらはユンギのカウントダウンスイッチを踏んで大変なことになったわけだけど。
急に感情の塊が押し寄せてきた。この5年分と、そして、この4日間のために払ってきた私の心労と、昨日までの出来事、全部こいつが元凶のような気がして腹立たしい。
アミの瞳に青い炎が再び灯ろうとしている頃、テヒョンたちがバンケットルームの端っこに、他支社のマネージャーと話しているユンギを見つけて駆け寄った。
「ユンギヒョン!大変です!」
「ヒョン早くきてください。ヌナがピンチです!」
「オー?どうしたって?」
「タヌキ合戦に巻き込まれて攫われました!」
「ん?タヌキ?」
アミがシンガポール支社長のところに連れて行かれた旨急ぎ共有する。
「あー、そうきたか。まぁそんなに心配しなくても大丈夫だと思う。
でもせっかくだから、お手並み拝見しに行こうか?」
ユンギが笑いながら言った。
そのいつもの数倍は糖度が上がっているだろう余裕の笑顔にしばしフリーズする2人。
(これはちょっと…甘すぎない?)
(…ですね)
テヒョンとジョングクは何かを確信しながら、アミの元に向かうユンギの背中を追いかけた。
chap.5
「えーと、あのさ。前から気になってたんだけど」
アミが息を吸い込んだ。
今からとどめを刺す。
ソジュンと、この5年間に。
「ソジュンよ、お前、人のことナチュラルに見下す悪い癖がぜんぜん治ってないみたいだな。だいたいこの5年間一度も話してないのに、なんで私がまだお前と一緒に働きたい前提なんだ?それにジャパンにはシンガポールよりいい仕事がないと決めつけてる理由は?隠してるつもりなら残念だが言葉の端々に出てるぞ。
それとも、昔自分が捨てた可哀想な女を救うヒーローにでもなったつもりか?」
「そっ、なっ、そんなつもりは!」
「申し訳ないけど、私は救われるの待ちの、無職のヒロインじゃない。
自分の足で、この会社で、このチームで、汗水流して仕事しているプロフェッショナルだ。
バカにするもいい加減にしてくれるか。」
「バっ、バカになんて…」
「5年ぶりにお前と話した私の所感はな、
元彼に誘われてもなーんも感じないもんだな、だ。
ユンギやナムジュンみたいに、お前ももっといいマネージャーになってるかと思ってたけど。」
「《《がっかりした》》」
アミの一撃で、ソジュンが灰になったのが見えた。
「支社長、大変ありがたいお話ありがとうございます。でも私、自分より優秀な人の隣でしか働かないことにしてるので、せっかくですがお断りします。残り少ないシンガポール滞在、楽しませていただきますね。
老板, see you lah♡」
これは見事にフラれたなと、灰になったソジュンの横でAiyo-!とタヌキが笑っている。
アミの5年間が強く美しく昇華した瞬間だった。
やっとこれで終われた気がする。
私の5年間よ、成仏したまえ。
会場に戻ろうとすると、ユンギたちがすぐ近くにいることに気づいた。
「わ!なんだ、みんなそこにいたの」
「ヌナ、ついにやりましたね!」
「やっぱりヌナがいちばんかっこいいです!」
「テヒョンはなんでそんなうるうるしてるのか?ユンギヤなんかいじめたの?」
「何もしてねーよ。ほんと気持ちいいくらいに、ボッコボコにしたな」
ボコボコとは人聞きが悪い。
プレゼン大会の表彰式にうつるアナウンスが流れる。2人を壇上に送り出して、スパークリングワインを一気に飲み干した。あぁ、なんて、気分がいい。
ここ数年で一番の達成感に包まれているアミを、ユンギがそっと見遣る。
これ以上ないほど甘い笑顔で。
chap.6
チームは最優秀賞は獲れなかったものの、ベストパフォーマンス賞を受賞した。シンガポール支社との勝ち負けは、個人的な完全勝利を達成した手前、正直どうでも良くなっていたのだが、何より満足そうなメンバーを見て、涙腺がまた緩んだ。このままこの勢いでひたすらアルコールを飲めば、昨日の夜のことを記憶から消せるんじゃないかと、もう何杯目か数えられなくなったグラスで試そうとしたところで、ユンギに怒られる。翌日の午前便に備えて、パーティーはお開きとなった。
こうして長い長いシンガポール滞在が終幕した
だから気づかなかったんだよ
このズキズキは二日酔いじゃないこと
体が寒いのは効きすぎた冷房のせいじゃないこと
chap.8
「アミちゃーん!おっかえりー!」
空港から直接ホソクの店にお土産を届けに行くと、いつもの元気な姿に出迎えられた。ここのところ出番がなさすぎたせいで存在の危機を感じたと訴えるホソクを宥めながら、私も早く帰ってきたかったんだと、少しホッとする。ユンギに持たされた分も合わせて、たくさん買ってきたお土産を披露する。きっと気に入ってくれるだろう。
「これがお気に入りだったジャスミン茶で、えっとこの人形がホバの…」
(…痛っ)
「…ん?アミちゃん?どうした?」
(うそでしょ、なにこれ、痛すぎて息が…)
「う…あ…お腹…いった…い…」
「アミちゃん?!どうしたの!?痛いの?お腹?!」
(ヒトって痛すぎると気失うんだっけ…あぁだったら早く)
「ちょっ、大丈夫?!だめだ、待ってて、すぐ救急車呼ぶよ!」
ホソクが119コールしてくれているのが遠くで聞こえる。
「アミちゃん?!ねぇ、しっかり!アミちゃんてば!!!」
あぁ、家に、帰れないのかな、と最後に思ったところで
私は、意識をようやく手放せた。
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