[ 後編 ]デザインと編集。お互いの視点の交錯が、クリエイティブを広げていく|SLOW×Harmonics業務提携記念対談
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[ 後編 ]デザインと編集。お互いの視点の交錯が、クリエイティブを広げていく|SLOW×Harmonics業務提携記念対談

「じつはクリエイティブがつまらなくなっていた。」そんな時に原さんの声がけで、SLOWと一緒に九州の仕事に取り組むことになった栗山さん。SLOWとのお仕事を通して、クリエイティブのあり方を見つめ直したそうです。そんな原さんには、栗山さんを九州に誘った思惑があり…。前編につづき、後編では業務提携を結ぶきっかけとなった九州でのお仕事のお話からはじまり、クリエイティブをつくる上で大切なことや、編集者がデザイン会社に入ることで広がっていく可能性についてお伺いしました。引き続きSLOWスタッフの李が聞き手を務めます。


\お二人の出会いからたっぷり伺った前編はこちら/

クリエイティブと
ふたたび向き合った九州出張

李 業務提携を結ぶきっかけとなった九州でのお仕事についてお聞かせください。

栗山 2017年ごろから僕も地域系の仕事をはじめたりと、言い合わせたわけでもなく原さんと興味を持つところは同じだったから、お互いに情報交換もしていて。原さんと地域系の仕事で組めたらいいなと思っていたら声をかけてもらって、2020年の秋に九州の案件を一緒にすることになった。実はあの頃、僕の中でクリエイティブがつまらなくなってきていて。

原 ちょうど俺のパチンコ時代(前編参照)の歳じゃん(笑)。

栗山 いろんな業界の仕事をやっていくうちに、限界を覚えはじめていたんです。結局クライアントの意識までは変えられないなと
和泉多摩川の街で、初めて180mの商店街を歩行者天国にするイベントを企画して、初回にも関わらず2000人3000人の人が集まってくれたんです。そのイベントを3回やって、風は起こせたけど結局街の人たちの意識までは変えられなかった。その先の壁を、僕自身すごく感じました。イベントではいろんな人たちと繋がれたしやってよかったけど、クレームを言われたり他の仕事を断ることも多かった。確かにプラスもあったんだけど負の部分もすごく大きくて、やる気を失ったしモチベーションもすごく下がっていた。そんな時に原さんに声をかけられて、一緒に九州に行ったんですよね。

 原さんはなんで栗山さんに声をかけたんですか?

原 佐賀県のサイクリング観光の仕事だったから、栗ちゃんを呼んだの。自転車の専門性も持っていたし、クライアント仕事をきちんとしていたから、この仕事に欠かせないと思って。さらに福岡県の栄興技研という会社のWebリニューアルの仕事も、栗ちゃんが近しい案件をやっていたから入ってもらった。佐賀県と福岡県をまわった9日間の九州出張だったね。さらに俺の思惑としては、うちのスタッフを鍛えてほしかった。客との間合いや、現場でのふるまいを教えてほしかったわけ。俺はあんまりやってこなかったし、栗ちゃんは百戦錬磨だったから。

 現場では栗山さんに頼りっぱなしでした。

栗山 僕は編集者だから現場に出ている数が違うし、それはSLOWの誰よりも強いところかもしれません。佐賀県では連日撮影の現場だったから、僕がしっかりしなきゃいけないと思っていました。撮影初日おわりに、「今日の撮影を見て安心しました。ありがとうございます。」とクライアントに言われて。あれがSLOWの価値になるんですよね。不安な気持ちを与えてしまうと、それがどんどん広がって粗探しをはじめてしまう。そんな現場が楽しいわけがないし、僕がいる意味があったなと。栄興技研でも、いきなり企業の社長と対面で話すのはなかなか難しいことだから、しっかりサポートしようと臨みました。原さんに、SLOWには兄貴が足りないから一緒に九州をまわりながらいろいろ教えてやってよと頼まれていて。まあ教えることが楽しかったんですよね。その時の心境をFacebookに書いてますよ。

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 “教えてるつもりが逆に教わってた。” 

栗山 これは九州出張での自分なりの学びだったんですよ。

 しきりによかったと言ってた。

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栗山 教わった部分も大いにあったし、改めて自分の仕事の価値を知ることができました。九州の仕事が終わった時に、僕から原さんに業務提携の相談をしたんですよね。

 そうそう。いきなり話があるって。

栗山 付き合いも長いし、これからもお互いにいい作用をもたらせるような関係を築けたらいいなと思って。それに僕が抱えているクリエイティブがちょっとつまらない現状も、原さんといたら打破できるんじゃないかという期待もありました。
僕ひとつ言いたいことがあって。SLOWと仕事すると、打ち合わせがめっちゃ多いんですよ。

 (笑)。

栗山 でも、これが本来のクリエイティブの姿なんだと教わりました。すぐにゴールを目指さずに、もっと喧々囂々(けんけんごうごう)するべきなんですよ。僕もそういうタイプだったのに、いつの間にかなるべく少ない打ち合わせで、それなりのものを作るようになっていた。そんなやり方に慣れてしまっている自分がいて、だからこそのつまらなさもあったんだと思います。SLOWと一緒に行った九州出張では、朝も夜も関係なく、エンドレスでいろんな話をずっとしているし、東京に帰ってきたら、すぐに打ち合わせをしようとなった。これってすごく大事なことだと思い出しました。僕と原さんがパパっとやればすぐに決まるんだけど、そうじゃない。お互いが呼吸を揃えて、ひとつずつみんなが納得しながら進んでいくことが重要で。大きな仕事だと置いてけぼりの人がいっぱいいるんですよ。クリエイティブディレクターとコピーライターしか理解していなくて、残りのひとはただそこにいて作業してるだけってことがあるんだけど、SLOWの案件はみんなが肩を組んでやっている雰囲気があった。そこを自分は忘れていたなと気づきました。

原 うちも昔はそれが抜けていた時もあったの。作るのは簡単なんだよ。でも無駄になるかもしれないけど、話し合いを重ねて思考を積み上げていくことで、突然アイデアがパッと降りてくることがある。栄興技研のタグラインを考えている時も、災害時の発電機をつくっている会社だったから、まずは部屋を暗くしてみたりさ。災害が起きて日本が真っ暗になった時に、緊急用発電機が稼働することによって、ぽんぽんと少しずつ灯りがついていく。そんな風景を想像してみると、おのずとタグラインができたりするんだよね。

栄興技研のWebサイトリニューアル。
このお仕事がSLOWとHarmonicsの業務提携のきっかけとなった。

栗山 結局はコミュニケーションなんですよね。霧の中をさまよっているような、答えが見えない一番苦しい時期を乗り越えるとお互いに共通言語が生まれてくるし、それがクリエイティブをつくるうえでは大切なこと。メール、LINE、Zoomと便利なツールはたくさんあるけど、そこでのコミュニケーションでいいものできるのかには疑問を持っていますね。年を重ねると、波風立てずスムーズにお仕事を着地させようというマインドになってくるんだけど、そこで原さんは「それって意味あんの?」とぶっ込んでくるから(笑 )。


勝ちか学びか。
失敗を恐れずに突き進んでいく。

 俺も栗ちゃんもそうなんだけど、場とかモノじゃなくて人だけを見ているんだよね。人がどうあればいいのかを、ずっと考え続けている気がしていて。 紙メディアだろうがWebだろうが動画だろうがなんでもいいけど、人が軸にあるんじゃないかと俺は思うんだよね。

栗山 どう思ってほしいか、どう感じてほしいかが大事ですよね。自分がやったものに対して笑うでも泣くでもどんな反応でもいいんですけど、無視されるのが一番よくない。怒ってもらってもいいんです。自分がせっかく何かを作るんだったら、みる人の人生を変えるまでは難しいけど、その人の人生に何かいいきっかけを与えるものになればとは常に願っています。

でも少し前にちょっとモヤモヤしていた時期があって。朝起きると隣に妻がいたから、俺は何がしたいんだっけと聞いたんです。そしたら失笑されて。いまさら何を言ってるの。あなたは人生においてワクワクドキドキしたいだけでしょと。あ、そうだったと思い出して。

 いい話ですね。

栗山 俺はいろんなものやことに対して好奇心も強いし、ずっと死ぬまでドキドキワクワクしていたいわけ。原さんやSLOWといるとドキドキワクワクできるんじゃないかという予感がすごくする。クリエィティブは楽しいことのはずなんだけどさ、みんないつの間にか乾いていっちゃうんだよね。

 型があるのはすごくいいことなんだけど、型にはまりすぎると失敗するのが怖くなって、逸脱できなくなっちゃうんだよね。実験では「失敗は成功のモト」と言うじゃない。すべては実験だと思って、どんどん試してみればいいのにね。

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栗山 勝ち負けじゃないんですよね。勝つか学びか。失敗しても、学べばいいだけだから。僕は自分が失敗したときに、なんであんな気の利かないこと言ったんだ、なんで人を傷つけるようなことを言ったんだとすごく自分を問い詰める。立ち直るのに1週間くらいかかるんだけど、問い続けることで自分の身になっていく。

 失敗の糧を自分の中に取り入れて行動に移していくしかないんだよ。そういうちっちゃな積み重ねが自信にもつながるから、やればいいだけなんだよね。


編集の力が掛け合わさることで、
広がっていくもの

李 では最後に。デザイン会社であるSLOWに編集者の栗山さんが入ることで、仕事がどう広がっていくと思いますか?

栗山 僕が入ることによって、SLOWにいい効果が生まれたらいいな。原さんが望んでいるSLOWのパズルピースのひとつになれるかもしれないし。僕自身も助けてもらったり、学びがあるかもしれないし。それに原さんにカバーできないところで、僕がその受け皿になれるかもしれないから、SLOWのスタッフにはいつでも相談してほしいと思ってる。

 俺はさ、昔からずっといろんな編集者と仕事をしてきたから、やっぱりSLOWにも編集機能を取り込みたかったんだよね。

栗山 原さんは昔からSLOWに編集者を作りたい、企画制作からちゃんと携わりたいって言っていましたよね。でもスタッフにもいろんな人たちがいて、デザインだけをしたい人もいるからなかなかそういう形にはならなくて。請負仕事だけをやっていくことが、原さんはすごく嫌だったんだと思います。

 やっぱり上流から仕事を作らないと、いつまでたっても請負仕事からは抜けられないという想いはずっと持っていて。それに請負仕事をしていると、50歳60歳になっても頭を下げなきゃいけない時があるから、そんな人生が嫌だという気持ちはあったな。 

栗山 僕も会社を立ち上げる時に、請負仕事をするんじゃなくて、仕事を作りたいと思いました。原さんと僕にひとつ共通項があるとしたら、「職業:原大輔」「職業:栗山晃靖」になることを目指しているんですよね。AさんBさんCさんがいて、今回はSLOWさんにお願いするという、誰でもいいような仕事は、もういいんじゃないかな。

 相手が求めてないところまで入り込みながら、内発させていくような仕事をもっとしていきたいし、栗ちゃんはそれができる人だから一緒に仕事をしていきたいなと思った。業務提携を結べるのは俺自身も嬉しいしさ。違う視点をSLOWにどんどん取り入れて、今度はうちの社内が自発的にいろんな仕事を生んでいけるようになればいいな。それはSLOWが目指す形だから。いつでも俺が引退できるようにね(笑)。


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\ 業務提携後、初お仕事 /

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狛江市議会だよりリニューアルデザイン。栗山さん編集、SLOWがデザインを担当。こちらから全ページPDFをご覧いただけます。


原 大輔・はら  だいすけ
1970年 長崎県生まれ。1992 年明治大学卒業 1997年 フリーのグラフィックデザイナーとして活動。2006年 株式会社スロウとして法人化。2016年 九州・有田にカフェ「Fountain Mountain」オープン。2020年 東京・下北沢にコワーキングスペース「ロバート下北沢」を設立。エディトリアル、広告、webなどをデザインのみならず、企画から携わっている。
栗山晃靖・くりやま  てるやす
1978年、鳥取生まれ岡山育ち。東洋大学社会学部卒業後、いくつかの出版社勤務を経てフリーエディターに。広告、雑誌、ウェブ、PR業務など様々な案件に携わったのち「もっと楽しく色んなことをやりたい!」とHarmonics inc.を立ち上げる。趣味はギター、モーターサイクル、自転車、漫画、家庭菜園など。座右の銘は「できる・できないではなく、やるか・やらないか」、「遊ぶときは本気で、仕事するときは遊び心をもって」。好物はうなぎパイ。パクチーと人の名前を覚えるのがニガテ。ひとりは好きだけど、ひとりぼっちはイヤ。

(文:李生美)

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下北沢にあるデザイン会社、株式会社スロウです。 スタッフのこと、デザインのこと、日常のことなど…、様々なことを発信していきます。URL→https://www.s-low.com/ 現在、スタッフ募集中です。